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プロ入り半年を振り返って(競技麻雀の特徴とは)

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梅雨が明ける直前の8月2日、半年に渡る協会のリーグ戦が終了した。私は今年から日本プロ麻雀協会に19期前期で入会していて、最初のリーグであるEリーグを幸運にも首位で勝ち抜くことができた。今回はこの半年の振り返りをしながら、プロになって気づいたことや、天鳳ルールやフリー雀荘との違いを紹介し、競技麻雀(での戦い方)の特徴を10項目にまとめることで今後の競技プロ生活に役立てていきたい。これからプロになりたい人や、麻雀プロ業界に興味がある人は読めば役に立つこともあると思うので、ぜひ読んでいただければ嬉しく思う。

競技麻雀の特徴①時間制限がない

まず私が感じた最も大きい違いは、当たり前なことではあるのだが、時間制限がないことだ。天鳳では何もせずに一定時間が過ぎると勝手に打牌されてしまうため、その時間内に打牌選択をしなければならないが、競技麻雀は持ち時間がなく、一応ルール上は好きなだけ考えることができる。「捨て牌をよく見ていれば振らなかったのにー」「時間がなくなってきて焦って放銃してしまったー」といった経験は天鳳プレーヤーのほとんどが経験していることだと思うが、これがほとんど起こらなかったのは私にとってとてもありがたかった(ただし大会などでは時間打ち切り制が多いので、これはリーグ戦に限る)。

またほとんどのプレーヤーがじっくり時間をかけて考えるので、1半荘あたり平均1時間から1時間半くらいかかる。フリー雀荘でも時間制限はないが、基本的に競技麻雀よりもみんな速く打牌するため、無言のプレッシャーによって焦ってしまうこともある(私が雀荘メンバーだった頃、雀荘全体の半荘平均スピードは約40分だった。トビ/ドボンやアガリやめがあるため打牌スピードと完全には関連しないが、競技よりも圧倒的に打牌スピードは速い)。なので打牌選択にもっと時間をかけたい人や、時間制限があると集中できない人はぜひ競技麻雀を試してもらいたい。

競技麻雀の特徴②赤ドラがない

Mリーグの開始によってその風潮は変化するかもしれないが、現時点でMリーグを除きほとんどの競技麻雀で赤牌は使われておらず、それによって戦い方が随分変わることがある。例えばドラが19牌で相手が(一色手ではない)タンヤオ系の仕掛けをしている場合、競技麻雀においては全く怖くない。フリールールや天鳳ルールでは赤牌が入っているため、よもやの「タンヤオドラ3」や「タンヤオ三色ドラドラ」などで満貫放銃となってしまうこともあるが、競技麻雀においてドラがないタンヤオ手はせいぜい2000点が関の山。自分がメンゼン高打点なら全く恐れる必要はないのだ。

つまり(特に仕掛けた場合は)相手の打点が圧倒的に読みやすいのだ。これは点棒操作をする上で非常に重要で、例えば自分がオーラストップ目の場合に相手が明らかなタンヤオのみの手を張っているようであれば気軽に差し込むことだってできる。フリーに比べると天鳳でも差し込むことは多いが、赤牌がある程度見えていないと「満貫放銃」の可能性は完全に消えないため、そういったアシスト・差し込みは赤牌のない競技麻雀だからこそと言える。

競技麻雀の特徴③ウマ・オカ・素点

これはプロ麻雀団体によって異なる部分であるが、今回は私個人の所属する日本プロ麻雀協会のケースを紹介したい。日本プロ麻雀協会の順位点はウマとオカを合わせて、トップ+50p、2着+10p、3着△10p、4着△30p (25000点持ち30000点返し)。つまりトップを取るだけで5万点をボーナスとして受け取ることができるので、皆が基本的にトップを積極的に狙う展開となる。逆に天鳳ルールでは4着がマイナスの全てを請け負うことになっていて、天鳳での戦い方に慣れているプレイヤーはその戦法を変える必要がある。今回のEリーグで私はトータルで+448.5pだったが、それは1位を9回(2位7回、3位2回、4位2回)取れたことが非常に大きかったと言える。他の団体についてはいずれ言及したいが、協会ルールが最も一般的なフリー雀荘などのウマ・オカ設定に近いので、比較的スムーズに競技麻雀になれるのではないかと思う。

次に素点に関してだが、これも天鳳とは異なっている。天鳳では完全順位制を採用しており、3万点のトップも9万点も同価値であるが、協会ルールでは素点も自身のポイントにそのまま反映されるため、時にはラス確など順位の変わらないアガリも有効となる。実を言うと、この点についてリーグ戦で少しミスをしてしまった(正しい選択がわからなかった)のでそれを紹介したい。

すべて覚えているわけではないため申し訳ないが、それはトップ目で迎えたオーラスの話。私は比較的点棒に余裕がある北家で(50000点くらい)、2着目が親で25000点くらい、その差が約25000点、跳満をツモられても大丈夫な点棒状況だった。そこに10000点持ちのラス目の南家からリーチが入り、僕は少しオリ気味に打ちながらそのまま南家がアガってくれたら嬉しいなどと考えていた…のだが、そこに2着目の親が満を持して追っかけリーチをかけてきた。僕の手牌といえば、共通安牌はある程度あって流局までベタオリもできそうな様相で、親には通っていて南家には通っていない牌も少しあった。となると選択は二つ、南家に差し込みに行くか、それともベタオリをするか。

結果から言うと私はベタオリを選択し、そのまま流局。差し込もうと思っていた牌は実際に当たりで、確か満貫だったと思う。この点棒状況では微妙な差かもしれないが、後から思ってみれば差し込んだ方がよかったと思う。何と言ってもトップのボーナスの5万点が大きすぎること、あとはアガリやめはないため即終了とはならないものの、親に跳満でもツモられれば一気に並ばれてしまうことが理由だ。確かに対面の捨て牌は一色手風で満貫跳満クラスが見えていたのだが、万一の倍満放銃でもギリギリトップ目で終了できることから差し込んだ方がよかったように思う。その半荘はトップを維持することができ事なきをえたのだが、親との差が何万点以下から差し込みが有利に働くのかについてはこれからじっくり考えていきたい。

競技麻雀の特徴④その他ルールの違い

ルールによる違いは他にもいくつか存在する。比較的影響の大きい点としてはアガリやめがないことがある。これはフリー麻雀や天鳳ルールと比べると、オーラスの東家が損であることは明白である。大きく点差が離れているのなら特に影響はないと思われるが、僅差であれば他のプレイヤーにアガリ点を調節され逆転されてしまうことは頻繁に起こる。特に他のプレイヤーはプロだけあって順位の変わらないアガリをすることはほとんどない。その一方で自分がアガっても局を続行しなければならないのだから、僅差の状況で安手でのアガリはあまり意味がなく、高打点を狙いつつノーテン罰符で着順が入れ替わらない点差ならノーテン流局を狙う技術も必要となる。

また細かい部分で言うと、協会では「数え役満なし」、「ダブロンは頭ハネ」、「同点は順位点折半」、「多牌・少牌・空ポン・空チー・錯ポン・錯チー・食い換えなどはアガリ放棄」、「アガリ放棄者が仕掛けをするとチョンボ」ルールなどがフリーや天鳳と異なる点だろうか。これらはそこまで影響を与えない部分であるとは思うが、知っていないと損する場面もあるかもしれないので注意したい。


競技麻雀の特徴⑤挙動読みができる

リアル麻雀では何でもそうだが、ネット麻雀と比較すると競技麻雀では実際に目の前に相手がいて麻雀を打っているので、数字の組み合わせ以外の情報が嫌でも目に入ってくる。そしてそれを自分の判断に反映させることも可能である。『1秒で見抜くヤバい麻雀心理術(鈴木優)』ほどではないが、例えば(まあ状況にもよるけれど)悩んで打牌をしていれば少なくともタンピンのようなシンプルな手で聴牌していないと考えることができるし、「何となく張っていそうな雰囲気」も(その精度ははっきりわからないが)感じることもできる。

個人的にはこういった情報を活用するのは得意な方だと思う。特に相手が使う時間に関しては注意を払っていて、どのくらい打牌に時間をかけているかでわかることは非常に多く、それに捨て牌や点棒状況などを加味して総合的に考慮すると打点や狙っている展開などを予想することだって可能である。そのため私自身は打牌動作のスピードをある程度一定にするように心がけていて、なるべく情報は出さないように心がけている(「挙動による三味線」も可能かもしれないが、マナー的に問題がある)。「挙動読み」に関しては賛否両論あり、そもそもAリーガーなどの上級者には通用しないかもしれないが、麻雀が数字だけを扱うパズルのようなゲームだけではなく、そういった対人的な心理要素を含むゲームである以上は活用したいし、個人的にはそれを楽しもうと考えている

競技麻雀の特徴⑥人読みができる

今回は最初のリーグ戦ということで、初対戦の相手ばかりだったけれど、数年に渡ってリーグ戦に参加し続けていると同じ相手との対戦が否が応でも増えてくる。そうなった場合には相手の打ち筋などはすでに自分の頭の中に入っていることになるし、逆もまた然り。つまりそれを前提とした手作りや押し引きが非常に有効になる。比較的バラバラな形から仕掛けるタイプもいればある程度打点がないと鳴かない打ち手もいる。もし相手のタイプがわかっていれば押すか引くかの目安となるだろうし、逆に自分が門前派なのであれば、ブラフの仕掛けが非常に有効になることだってあるのだ

競技麻雀の特徴⑦短期決戦である

フリーでも天鳳でも、100半荘だけで成績は決まることはないが、競技麻雀(協会システム)ではCリーグ以下は4半荘×5日=20半荘でリーグの昇降級が決まり、Bリーグ以上でも4半荘×10日=40半荘でそのリーグでの成績は一旦リセットされる。この半荘数はよく考えてみれば非常に少なく、実力差がある程度ある場合には実力と成績が比例すると思うが、実力が拮抗している場合にはいわばその日の運に左右される部分が比較的大きくなる。実際(私の場合は実力がうまく出せれたと思いたいが)、対戦したり後ろから観戦したりして「強いな」と思った選手でも昇級できなかったり、少し手順や押し引きに問題のある選手が昇級したりしていたので、実力を十分に結果に反映させるのは短期決戦では難しいと言わざるを得ない

ただそれでも、現在Aリーグに在籍しているような実力者は同じ条件でのし上がったのだから文句は言えない。また新しい協会の規定では、何か大きいタイトル戦で優勝したり決勝に残ったりすると何段階か昇級することができるようになったそうなので、これに挑戦しない選択はない。また麻雀の実力を上げることに加えて、多くのタイトル戦に参加して優勝の可能性を上げるという「数打ちゃ当たる」戦略も実績を作るためには必要不可欠になってくる。20半荘で結果が出ないのであれば、100半荘、200半荘と数をこなすことで自分の実力を証明することだってできるのだ。ま、実力がなければ更に成績が下がる可能性も考慮する必要があるのだけれど。

競技麻雀の特徴⑧トーナメント戦でのポイント把握

私自身はまだトーナメント戦に参戦したことはないものの、新人研修で学んだ限り、トーナメント線におけるポイント状況を把握するのは非常に難しいと感じている。トップのみが勝ち抜けの場合なら比較的簡単なのだが、例えば3半荘を戦い上位2名が勝ち抜けの場合、最終半荘でのポイント状況の計算は非常に複雑なものとなる。なぜなら考えるべき項目として、相手3人それぞれのトータルポイント、その半荘での素点&ウマ、そして自分のアガリ点(ツモった場合とロンアガリの場合)やそうすることによって順位がどう入れ替わるのかなど、最終半荘前から計算していないと最終半荘のオーラスでは大混乱に陥ってしまう。ゆっくり計算する時間も与えられるとは限らないので、これは新人プロ雀士が最初に直面する大きな壁ではないだろうか。

競技麻雀の特徴⑨独特の緊張感

最初のリーグ戦の日は普段あまり緊張するタイプではない私も流石に少し緊張していた。麻雀はともかく、競技麻雀における適切な作法やマナーに関してまだ十分わかってはいなかったからだ。そして更に緊張感を高めさせた原因としてはその対局場での雰囲気である。その日まではてっきり全員が半荘終了後ワイワイガヤガヤ麻雀について話しているのかと思いきや、その対局場は水を打ったかのような静けさで、特に最初の対局が始まってから最後の対局が終わるまで牌が河に置かれる時の乾いた音とポン・チーなどの発声くらいしか聞こえなくなった。それもそのはず、対局が始まってからは私語禁止というルールがあり、結局僕はその日は対局場から外に出るまでの間、必要なこと以外は一言も言葉を発することはなかった。対局後、同卓していた同期の青年と一緒に外へ出たのだが、やはり彼も緊張していたそうで、私たちはその後一緒に行ったカフェでせきを切ったように話したのだった。

ただそんな状況で感じた緊張感は他の場では到底味わえるものではなく、私にとってはプラスに働いたと思っている。実際にフリー雀荘や天鳳では気楽な気持ちや疲れた頭で打つことも多く、完全に集中できる環境ではなかったが、リーグ戦では「ゾーンに入る」と言っていいのか、経験したことがないほど麻雀に没頭でき、いつも以上の実力を出せたように思う。それは明らかに雑音のない対局場の雰囲気に起因するもので、もしそんな「純」な空間で麻雀に没頭したい人は、プロになって1ヶ月に1回くらいの競技生活を体験してみることをお勧めしたい。

競技麻雀の特徴⑩「居場所」の確保・仲間づくり

ここまで色々な相違点を言っていたが、最も重要で最も楽しい部分として、日本プロ麻雀協会(やおそらく他のプロ麻雀団体も)は居場所を一つ提供してくれる。そこには同じ目標を持つ仲間/ライバルがいて、切磋琢磨して互いを高め合うことができる。今はコロナの影響でなかなか飲みに行ったりセットをしたりできる雰囲気ではないが、少しずつ気心がしれてきてコロナ問題も過ぎ去ってくれれば、職場や学校・家庭以外でのコミュニティの一員として一つの安心感を与えてくれるだろう。そこには年齢や性別・その他の社会的属性に関与されない包容力が働いていて、もし外の社会で嫌なことがあった場合でも、そこでは何事にも干渉されることなく麻雀に集中できる環境が整備されている(当然雀力の成績がいい方が充実感が得られると思うが、そうでなくとも同じ目標を持つ仲間の存在はかけがえの無いものになるはずだ)。


競技麻雀の特徴と半年の振り返り:まとめ

ここまで10項目にわたり競技麻雀の特徴を個人的な半年の振り返りと共に紹介してきたが、満足いただけただろうか。今回は半年が過ぎた時点での感想を綴ってみたのだが、これが1年、3年と続いていけばまた違う意見になっていたり新しく気づける部分もあると思うので、その都度noteにまとめていきたいと考えている。私個人の意見としては、まだまだ麻雀界にも色々な変化が必要だと感じている一方、今後も麻雀人気が続き新しくプロになる人がどんどん増えていってくれればいいと思っているし、私自身もなるべく早くAリーグまで上り詰めたいと思っている。また、実際の麻雀以外にもnoteをはじめ様々な形で麻雀に関する発信や活動をしていこうと思っているので、応援していただける方がいれば非常に嬉しく思う。

さて、私個人としては夏休みでまだ記事を書く時間があり、次回は「プロ入りを考えている人がしておくべきこと」についての記事を書こうと思っているので、もしよければお読みいただきたい。また、他にも自分の天鳳の反省録なども書いているので、お読みいただければ非常に励みになるし、フォローや「スキ」をしていただければ更に感謝である。それではまた次回!



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