有価証券報告書の内容を極性分析(感情分析)した結果

 有価証券報告書を読むと中々時間がかかることが多いのではないか?企業分析をする上で読む人は多いのではないだろうか?
私は、結局「経営がいい感じなのか、悪い感じなのか素早く知りたい」となってしまう。

EDINETのデータをDLしてデータを抜き出すことができても、そのまま読むだけではもったいないと感じていた中、ある方にこのような論文の情報をいただいた。

有価証券報告書のテキスト分析: 経営者による将来見通しの開示と将来業績
加藤大輔・五島圭一
https://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/20-J-16.pdf


本論文では、MD&A に記載されている非財務情報を極性分析するという内容であり、将来業績の予測力を持っているとしている。(その他にも興味深い結論がある。)
極性分析(感情分析):様々なテキスト情報をテキストマイニングや機械学習の技術を用いて、その記述内容の感情を分析する手法


これと同じように、有価証券報告書の内容がポジティブなのかネガティブなのかを判定できれば、これ(「経営がいい感じなのか、悪い感じなのか素早く知りたい」)がわかるのではないかと考えた。

注意:今回は独自で考えたコード内容はほぼないので、細かい記載はしない

実際にやってみた


下記を参考にして極性分析を行なった。


その前に、EDINETから有価証券報告書を自動でDLできるようにするために、下記を参考にして、データセットを作った。


データセットは下図のようなものである。2020年度今回は業種が「化学」のもの、対象の文章を「経営方針、経営環境及び対処法すべき課題等」に限定した。

スクリーンショット 2021-09-15 21.49.36


細かい処理は省略するとして、リンクの通りにすると下図が出力された。

スクリーンショット 2021-09-15 22.04.14

この出力された標準スコアをわかりやすくするために、標準スコアをxするとすると、1-(-x)で計算し、最終的なスコアにした。

その結果の中で、スコアの上位・下位5位を抽出し、下図に示した。

画像2


ポジティブ度ワースト一位

堺化学
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは『グループの総合力を最大限に高め、社会のニーズにタイムリーに応える事業活動を展開する。以て盤石な経営基盤を構築し社会的貢献を希求する』ことを経営理念としております。
(2)経営戦略等
電子材料事業、酸化チタン・亜鉛事業(化粧品材料)、樹脂添加剤事業、触媒事業、化学その他事業(高屈折材料)、医療事業の6つの事業領域を中心に収益向上を図り、そのための戦略投資として190億円を計画し、数値目標として掲げた営業利益80億円以上、営業利益率7%以上、ROE6%以上を達成し、新たな堺化学グループ像の創造に挑戦します。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
2024年3月期目標
営業利益
80億円以上
営業利益率
7%以上
ROE
6%以上
(4)経営環境
当社グループを取り巻く環境は、米中の貿易摩擦や各国の金融政策、為替動向等の影響による景気減退のリスクが懸念されるものの、電子材料や化粧品分野で需要は底堅く推移すると見込んでおります。
(5)事業上及び財務上の対処すべき課題
当社グループは2019年3月期を最終年度とする中期経営計画『共創2018』において、売上高900億円、営業利益54億円、ROE5.0%以上を目標数値に掲げて取り組んでまいりましたが、未達に終わりました。
前中期経営計画では、「稼ぐ力」の早期回復に向け、電子材料や化粧品材料を中心に積極的な設備投資を行い、樹脂添加剤事業ではタイ国の企業を傘下に収め、東南アジア地域を中心とした拡販体制の基礎を築くなど、一定の成果を出しました。しかし、期間中に上市予定であった新製品が計画より遅れるなど、まだ道半ばであります。これまでの基本路線を踏襲しつつ、さらなる発展を遂げるため、本年4月より新中期経営計画『SAKAINNOVATION 2023』をスタートさせました。当計画では以下の経営課題を掲げ、数値目標達成と持続的成長を目指して取り組んでまいります。
①稼ぐ力へ再挑戦し確実な増益体質を実現
②再構築投資による環境と人にやさしい工場・オフィスの実現
③10年先の社会を見据えた新事業へ取り組む
④総還元性向30%以上を目標とした安定的・継続的な配当を実施

ポジティブ度一位

大伸化学株式会社
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
(1)  会社の経営の基本方針当社は、品質の向上に努め安定供給の責を果し、お客様の満足が得られる品質の確保と納期を遵守して製品の品質向上を目指します。なお、経営の基本方針としては次のとおりであります。
①  差別化できる新製品の開発、生産性の向上、販売体制の強化を図り、強固な経営基盤を確立します。
②  リサイクルによって資源の有効活用と環境に重視して社会に貢献できる企業を目指します。
③  業容拡大と収益重視した経営によって、株主の期待に応えます。
④  お客様の満足を得るために、信頼性の高い生産管理、高度な品質管理体制の確立に総力を挙げておこないます。
⑤  一人一人がまたはグループで、課題を謙虚に学び、考え、評価し、迅速に改善します。
 
(2)  目標とする経営指標当社は、収益力の向上と財務体質の強化を経営目標の中心として重視しております。収益機会の増加とともに生産、物流面の合理化を推進して、売上高及び経常利益をさらに高めてまいりたいと考えております。経常利益の水準としては、売上高経常利益率5%程度を目指しております。 
(3)  中長期的な会社の経営戦略原油・ナフサの市況によって会社の業績が大きく影響されますが、既存分野での新規需要の獲得、新しい溶剤のマーケットの開拓など販売活動に全力を傾注するとともに、生産、物流面の合理化を押し進め業績の振れを緩和させます。また、環境と生産性を重視して越谷、兵庫工場に設備投資を計画的に実施します。 
(4)  会社の対処すべき課題今後の見通しといたしましては、景気は緩やかに回復が続くと期待されますが、地政学リスクによる原油価格の上昇、為替変動、不安定な海外経済の下振れ懸念もあり、当社を取り巻く経営環境は引き続き厳しい状況で推移するものと思われます。当社は、以下に掲げる項目を重点的な経営課題として売上拡大と収益性の向上に取り組んでまいります。
①  シェア拡大 新製品の拡販に注力するとともに、新規需要先の開拓に努めてまいります。
② 新規事業の育成新規事業につきましては、今まで培ってきたノウハウと企業財産を基盤に新たなフィールドへの進出を目指していきます。
③ 人材の育成 企業の競争力の源泉はヒトにあるとの認識の下、社員一人一人の能力を伸ばしていきます。
④ 財務体質の強化経営資源の効率的な活用、販売費及び一般管理費の抑制に努め、キャッシュ・フローの管理を徹底し、財務体質の強化を図ってまいります。   

確かにポジティブ度一位の方がいいことを書いているに対して、
ワースト一位は、「未達に終わりました」などマイナスイメージが多いように思えます。
これは割と使えるのでは、、、?


今後の活用について

・Google Datastudioと連携して、Google patentのデータと親和性のある表の作成を行う。

例えば、ポジティブ度の高い会社の有価証券のユニークな単語から特許を抽出する

といった内容など、様々なデータと連携して、変わった企業分析ができるダッシューボードを作成したい。

以上。

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