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『自然好き』の私を構成するモノ。/「動物のお医者さん」

Webマガジン「ネイチャーフィールドnote」の新コーナー「『自然好き』の私を構成するモノ。」始まります!

このコーナーでは、「自然が好きな人」が一体何に影響され、育ったのか。その作品を紹介していきます。作品は本だけにとどまらず、映画、絵画、歌、テレビ・ラジオ番組などいろいろな媒体のものを紹介できればと思います。

第一回目は、漫画「動物のお医者さん」。担当はしげゆかです。

しげゆか
1987年生まれ、大分県生まれ山梨県育ち。幼い頃から野山で遊ぶのが好きで、いろいろな動物を飼育していたこともあり、高校卒業後は二年制の専門学校で野生動物について学ぶ。しかし卒業後はIT系の会社へ就職。その後、野球グッズの会社でデザイナー・イラストレーターとして働くなど、様々な職種を経て、縁あって映像制作会社つばめプロで働く。撮影やフィールドワークもするが、機材や撮影データの管理、編集、WEB関係など主にサポート面を担当。「ネイチャーフィールドnote」編集長。

漫画「動物のお医者さん」佐々木倫子/白泉社

「動物が好きなら、これ、面白いよ」
小学生5年生の時、担任教師が突然、私に漫画を貸してくれると言ってきた。

私はその教師のことを苦手、いやハッキリと嫌っていた。多分それは態度に出ていて、向こうも私は「可愛くない生徒」というカテゴリに属していた事と思う。

それなのに、なぜ?と一瞬身構えたが、動物に加えて漫画も好きだった私はその誘惑に抗えるわけもなく、二つ返事で借りることにした。

漫画のタイトルは「動物のお医者さん」。

――と言っても、獣医を目指す大学生のお話だ。

読んだことの無い方は、タイトルからしてシリアスな漫画を想像されるかと思う。可愛いペットが死んでしまう悲劇のストーリーなのでは、と読む前から敬遠する人もいるだろう。しかしこの漫画に限って、そういったものは一切ないので安心して頂きたい。コメディ漫画である。

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▲「動物のお医者さん」より

「動物」をテーマに扱っていながらも、この漫画は「生死」に関わる話に過剰な演出は無いし、ついでに言うなら男女の恋愛がどうの、といった話も無い(動物の色恋沙汰ならある)。

「大きな感動も恋愛も無いなんて、一体何が面白いんだい?」と思われる方もいるかもしれないが、当時小学生の私にはそれが何故か刺さった。

読者からの体験エピソードを元に描かれたお話は、「自分も飼ってみたい」と思わせる魅力にあふれている。(実際、当時この漫画がきっかけでシベリアンハスキーブームが起き、飼う側の問題がいろいろと起きてしまったそうだが、それはまた別のお話)

「かわいさ」だけでなく、「保護しているモモンガを室内に離したら部屋中糞尿まみれになった」とか、「飼っていたネズミのオスメス区別がつかず、気づいたら増えすぎてしまった」とか、やっかいな部分も描かれているところも、よりリアリティを感じて想像をかきたてられた。

しかしながら、この作品にハマった一番の理由は、教師からオススメされたものなのに、説教臭さが感じられなかったから、かもしれない。

苦手に思っていた先生のパーソナルな部分に触れたのが、嬉しかったのだと思う。今になって振り返ると、先生も自分のことを嫌っている生徒と多少は距離を縮めたいと思って、この本を勧めてくれたのかもしれない。

その後、教師と仲が良くなったかと言うと、まったくそんなことは無かったのだが、この漫画と自分を引き合わせてくれたことには、今でも感謝している。

影響を受けやすいたちではあったが、勉強嫌いだった私は(作品のモデルとなった)北海道大学を目指すわけでもなく、動物のお医者さんにもならなかったけれど、30歳を過ぎた今でもこの作品をたまに読み返す。

年齢を重ねるにつれ、大きく喜んだり、悲しんだり、作品を読むことによって強く感情を揺さぶられるとしんどく感じることがある。そんな時、「動物のお医者さん」はいつでも優しく寄り添ってくれた。

現実では、生き物を飼育したり、自然を観察したりしていても、悲しい出来事はたくさんおきる。でもこの作品に触れたおかげで、動物たちと一緒に過ごした日々の楽しさや、自然に対して肩ひじ張りすぎないおおらかさ、みたいなものを学んだ気がする。

『自然好き』の私を構成する、大事な作品のひとつだ。


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