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言葉の整理:ウィズコロナ、アフターコロナ、ポストコロナ

1.コロナと言葉

このnoteでは新型コロナウイルス感染症が広がった状態の社会の呼び方に関する言葉を整理してみたいと思います。

コロナ禍を表現する言葉として、①ウィズコロナ(with-corona)、②アフターコロナ(after-corona)、③ポストコロナ(post-corona)、の3つが出てきています。(これらの言葉を使っている記事をこのnoteの最後で紹介しています。)

私たちは言葉を使って現実を切り出しながら世界を理解しているので、どのような言葉を使うのかはとても重要だと思います。写真や映像で世界を切り出すときにも、それをしている私たちの脳が回想するときは言葉を使っているので、アウトプットが非言語でも、プロセスするときに言葉はやはり仲介媒体として影響していると思います。

言葉選びに時間をかけないと、はじめのうちは「このあたりの感じ」とか「〜とか〜っていう言葉で表現されるような感覚」というような言い方で伝わりますが、やがて話が先に展開していったときに、知らない間に徐々に理解に誤差が生まれてきて、いつの間にか交わらない2つの平行線を辿ることになってしまいます。

コロナ禍ではあらゆることがオンラインになり、会議や打合せだけでなく、飲み会、ゴスペルの練習、高齢者向け買物サービスなどなど、あらゆるものが画面越しになっています。対面なら相手の表情や場の雰囲気を読み取ることができますし、嗅覚でその場所の匂いを感じたり、触覚でデスクや椅子の硬さなどを感じたりすることができますが、オンラインだとこれらの情報が欠落して、視覚と聴覚に頼り切りになります。スクリーン越しに金木犀の匂いがしたとしたら、それはきっと記憶のなかの匂いをかいでいるのでしょう。

同時に、画面越しに対面する自分の表情がいつも画面の端の方に写っている状態になるので、常に相手からどう見えているのかを意識させられます。それで"オンライン疲れ"するのだと思うのですが、その状況でざっくりとつくられた新しい言葉を受け取ると、誤解が生じる可能性が必然的に高くなります。些細なことに見える、言葉のニュアンスに慎重になることが、実はけっこう肝心なことと思っています。

2.どれをどのタイミングで使うの?

ではこの3つの呼び方はどのように違って、どれをどのタイミングで使うのでしょうか。これを整理するのには「コロナ禍」を軸にすると分かりやすいと思います。

コロナ禍の「禍」の字は「(人為的)わざわい」の意味で、これは「災」の字が示す「(天災の)わざわい」とはニュアンスが少し違います。禍事(まがごと)という言葉もあり、これは人為的なことが原因で起きる凶事の意味です。コロナが世界中に拡大したのは天災というよりも、むしろ人為的な理由が大きいことですから、コロナ禍という表現は適当で、私たちが今経験している「パンデミック期間」のことと理解してよいと思います。

このコロナ禍(パンデミック期間)を中心に、先の3つの言葉の示す期間と関係性を図にしてみたものが下の画です。

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はじめに①ウィズコロナですが、これはコロナ禍からはじまってワクチンや特効薬など、ウイルスを効率的に閉じ込めるツールを私たち人間社会が獲得するまでの期間を示す言葉かと思います。この期間と連続して、②アフターコロナを示しています。"アフター(after)"という単語は、"ビフォー(before)"と対になる言葉ですから、コロナ禍前に対するコロナ禍後を示す言葉と整理するとよさそうです。ただし、ウィズコロナがコロナ感染症がまたいつでもパンデミックレベルに拡大する可能性を含んでいる状態だとすると、アフターコロナは特効薬やワクチンが開発されて、状況をある程度コントロールできる状態を示します。①ウィズコロナと②アフターコロナは、ビフォーコロナとコロナ禍(パンデミック期間)と一列に並べると分かりやすいです。

さて、③ポストコロナですが、これは”ポスト(post-): 〜後、〜以後”が付いていて、”プリ(pre-): 〜前、〜以前”と対の言葉です。ただし、先の"ビフォー(before)"と"アフター(after)"がある1点を境にその前と後という意味だったのに対し、プリとアフターはある事象を境としたそれ以前と以後のより大きな時代の転換をつかまえている言葉と言えると思います。

同じように「ポスト」が付く言葉には、ポストコロニアル理論(Postcolonialism)、ポストモダン思想(Postmodernism)、ポスト資本主義(Post-capitalism)、などがあります。いずれも植民地主義、近代主義、資本主義経済を超克していくというようなニュアンスがあります。ただし、大事なポイントは、いずれの「ポスト〜」も出発点がその動機となる思想や仕組みが定着している社会であり、その次の社会フェーズの模索であるということだと思います。

例えば「ポスト資本主義経済」と聞くとまるで資本主義経済の次の経済の形を提示しているかのように見えますが、そうではなく、資本主義経済の存在のそれをもはや意識する必要もないほどに世の中の仕組みとして一般化している状態に批判的に(クリティカルに)に論じるものとしてポスト資本主義の議論は出てきていると理解しています。なので、資本主義の内在している格差や環境の問題を超越できる仕組みであるまったく新しい経済のあり方を示しているというわけではありません。ポスト資本主義に対して、パソコンに新しいOSをインストールするようなイメージを持たれている方もいらっしゃるかもしれませんが、むしろ実際のところの議論は既存のOSが抱えている恒常的なバグに対処するために、的確な修正プログラムを作っていき、やがてその修正の連続の先に、OSのそれ自体の根本的なアップデートがあるかも、というイメージです。

3.ポストコロナ社会の輪郭が少し見えはじめた

図で示したように、ポストコロナ社会はコロナ禍以降に様変わりした社会のあり様をひとつかみにするネーミングです。三密を避ける、手洗いを頻繁にする、マスクを着用する、というようなガイドライン的対応だけでなく、人と人、人と空間、人と働き方など、様々な場面で暮らし方の質が大きく変容しました。それがポストコロナ社会の核にあるもので、私たちはようやくそのぼやけた輪郭が少し見えはじめたところにいるのではないでしょうか。

ウィズコロナ、アフターコロナ、ポストコロナと、いずれも当っている・間違っているというものではなくて、それぞれの文脈で意図を持って使うと、コロナについて膨大にあふれている情報が少し整理されるに思うのです。

ポストコロナ社会は、言葉と視点の整理がとても大事な時代になっていくよな気がしています。



参考:ウィズコロナ、アフターコロナ、ポストコロナ

①ウィズコロナ
- NHK:求められるのは“レジリエンス” ウィズコロナの世界経済は
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200605/k10012457941000.html
- News Picks: 【落合陽一】Withコロナ時代の日本再生ロードマップ
https://newspicks.com/live-movie/638/

②アフターコロナ
- サイボウズ式:「もう出社しない」って本気ですか? サイボウズ社長 青野にアフターコロナの働き方をあれこれ聞いてみた
https://cybozushiki.cybozu.co.jp/articles/m005572.html
- ガイアックス:アフターコロナのエンターテインメントは「みんのみ」で!
https://www.gaiax.co.jp/blog/after-corona-entertainment/

③ポストコロナ
- ポストコロナ「世界経済は根本的に変質する」
https://toyokeizai.net/articles/-/350391
- ポスト・コロナ時代こそ 成熟社会にかじを切れ(京都大学広井良典先生)
https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/interview/detail/opinion_07.html







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