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「筒美京平 心のベストテン」 10位から1位をカウントダウン!

どうも。

では、昨日からの「筒美京平 心のベストテン」カウントダウン、いよいよベストテン、行きましょう。

第10位は、誰もが知ってる、この曲から!

10.サザエさん/宇野ゆう子(1969)

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10位は「サザエさん」。

おそらく筒美先生の曲の中で、最も知名度があるの、結果的にこの曲なんだと思います。その意味でトップ10、外せないだろうと思って入れました。

この曲、何がすごいって、1969年に作られたヴァージョンが更新されることなく、同じアレンジのものが50年以上も使われていることですね。それをやっても一切古びれることがないのは、やはりこの曲の持つモータウンのビートの普遍性によるものなのではないのかなと僕は思ってます。

 また、一概に「モータウン」と呼ばれるこの曲ですけど、モータウンの中でも

レーベルの看板だった、ダイアナ・ロスのスプリームスを手がけたソングライティング・チーム、ホランド・ドジャー・ホランドのリズムですよね。「ズン、チャ、ズズン、チャ!」ってやつですね。「チャ」の部分がエレキギターのカッティングで。モータウン・クラシックが愛される限りは、サザエさんも安泰なのではないかなと思ってます。

9.魅せられて/ジュディ・オング(1979)

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9位はジュディ・オングの「魅せられて」。

これは、1979年度の日本レコード大賞受賞曲ですね。これと1971年の「また逢う日まで」がこの栄誉に輝いてます。

この曲は、この当時の筒美サウンドのヴァリエーションのひとつだった「中東オリエンタル路線」の代表曲ですね。この前の年にも庄野真代の「飛んでイスタンブール」をヒットさせてましたけど、それを発展させたというか。何を下敷きにこういう曲を作ったのかがいまひとつ謎ではあるんですが、独特すぎて圧倒的なオリジナリティがあります。とりわけ、ストリングスのドラマティックなイントロですよね。これに関して言えば、筒美ナンバーの中でも果てしなくトップの歴代ベストに近いんじゃないかと思っています。

ちなみにこの曲といえば、ジュディの純白のケープ・ドレスによる舞がトレードマークでしたけど

志村けんによる、このパロディも非常に有名でした(笑)。

8.グッドラック/野口五郎(1978)

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8位は野口五郎の「グッドラック」。

野口五郎は、筒美さんがブレイク当初からずっと曲提供してたアイドルだったわけですけど、70s前半のマイナー調の湿った曲よりは、もともとがフュージョン・ギタリストでもあった五郎本来のテイストにあった、70s後半のシティ・ポップ路線がやはり一番似合ってるし、五郎・筒美両氏のこの系統の曲の中でも最高傑作だと思いますね。この次の「真夏の夜の夢」って曲で五郎は遂にフェンダーのギター持って歌い始めるんですけど、この曲でやるべきだったと思います。

ちなみにこの曲

こないだ紹介した「みんなが選ぶ邦楽オールタイム・アルバム」で見事1位に輝いた、ゆらゆら帝国の坂本慎太郎がソロになって間もない頃に、この曲をカバーしてるんですよね。この時に、「すごい、絶妙なとこ、突いてくるなあ」と、そのセンスの良さに改めて脱帽したのも覚えています。

7.17才/南沙織(1971)

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7位は南沙織の「17才」。

南沙織という存在は、清楚なイメージがありながらも、同時に、当時まだアメリカ領だった沖縄の出身ということで「洋風に垢抜けたイメージ」を日本のアイドルに付与する役割も果たしているのですが、そのイメージを手助けしたのが筒美京平でもありました。追悼の時にも書きましたが、これは1971年にアメリカで、そして日本の洋楽でも大ヒットしたリン・アンダーソンの「ローズ・ガーデン」を元にした曲です。

 彼女が所属したCBSソニーはこの後、キャンディーズ→太田裕美→山口百恵→松田聖子と、時代を代表する女性アイドルを生み出していくわけですが、そこに必ず良質ポップスを伴う伝統を作った意味でも、南沙織と筒美先生のコラボは大きなものだったと思います。

また、これは

1989年に森高千里が、彼女が20歳の時、僕と学年が一緒なので特に印象的だったのですが、ちょうど僕が大学入った頃に、この曲をカバー・ヒットさせて存在がまた大きくなったものです。


6.まっ赤な女の子/小泉今日子(1983)

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6位は小泉今日子で「まっ赤な女の子」。

キョンキョンで筒美楽曲といえば「迷宮のアンドローラ」「ヤマトナデシコ七変化」「なんてったってアイドル」とあるのに、なぜこれなのかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。ただ、この曲は「キョンキョン史」にとって非常に大事な曲です。

彼女は「82年組」と言って、アイドルのデビュー・ラッシュの時に中森明菜などと一緒に出てきた人だったんですけど、筆頭格に期待されながら、最初の4曲くらい、うまくイメージが出せずに苦戦してたんですね。そんな時に、本人も事務所の作るイメージに反抗して、事務所に内緒で髪をバッサリ、耳出しショートにしてしまったのですが、ちょうどそのタイミングで出した曲がこの曲でした。ここで初めて筒美楽曲が彼女のシングルになったわけですけど、ここで急に垢抜けて、のちに多くの人が知ることになる「弾けたキョンキョン」をここで初めて聞くことになるわけです。

 曲調としては、昨日の「もうすぐベストテン」でも触れた、榊原郁恵の「ロボット」の延長線上にあるテクノ歌謡を応用した感じなんですけど、それプラス、サビのワンポイントですね。「♩まあっかなー、まっかな、おんなの、こー!」の「こー」の部分が、ここだけファルセットになる。このキュートな演出がすごく効いたわけです。

 ここで新しいキョンキョンのイメージが出来上がって、彼女自身も、曲調もここからさらに大胆になっていくわけですけど、それが可能になったのも、この曲のヒットの存在があったからこそ。その意味で重要だと思い、この順位となったわけです。


5.誘われてフラメンコ/郷ひろみ(1975)

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5位は郷ひろみで「誘われてフラメンコ」。

「筒美京平で男性ソロ」といえば、もう、それはヒロミ・ゴー以上の存在はいません。筒美さんの場合、ジュリー、秀樹、百恵ちゃん、聖子ちゃん、明菜と言った昭和のビッグネームはあまり手がけてなかったりするんですけど、新御三家なら五郎とひろみを、デビュー間もない頃からしばらくずっと手がけていたわけです。

 昨日の平山みきのところでも言いましたけど、先生、声に癖のあるシンガーがかなりお好みのようで、この郷ひろみは、もう、とりわけまだ20歳いくか行かないかの頃は、ハイトーンの鼻声が余計にきつく、かつ、男っぽさもあんまりなく、本当に当時の少女漫画の世界に出てくる「中性的な美少年」を具現化した感じですよね。

 先生は、そんな彼の活かし方がうまかった。「♩真夏のーおっ!臭いはーあっ!」と、歌い出しで思い切り鼻にかかったところを語尾で裏返らせてね。こういう歌い方って、そのあともアイドルでは出てないし、あってもせいぜい、Tレックスとかプリンスとか、ちょっとグラムがかったとこくらいでしょ?その意味で、かなりセクシャリティ、意識した感じですよね。

そこに畳み掛けるように「僕から乱れてしまったみたいなんて悩殺的な表現も出てきたりして。これ、当時の女の子のファン、たまんなかったんじゃないかなと思います。筒美ナンバー上、最もセクシーな曲だと思います。


4.人魚/Nokko(1994)

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4位はNokkoの「人魚」。

この懐かしの8センチ・シングルCDでもお分かりのように、この曲、平成になってからの筒美ナンバーで「平成最高傑作」にあげる人も実際に多いです。比較的若い人ならこれか、オザケンの「強い気持ち 強い愛」をフェイヴァリット・ナンバーにあげる人、目立ちますね。

この曲はNokkoがレベッカを解散して、アメリカ進出を狙ったもののあまり成果がなく終わった後に作った1曲です。これ、不思議な曲でして、彼女の内省的心情を歌ったバラードなんですが、テイトウワの施したちょっとサイケデリックなエレクトロ・アレンジも功を奏してか、曲そのものが全体的にゆらゆら揺らいだ感じがするんですよね。筒美メロディそのものも、音数抑えてどこかストイックでね。

 そこに加えて、この映像見てもらえるとわかると思うんですけど、Nokkoが虚空を見つめてるでしょ?トロンとした目つきで。で、アメリカ進出したあとだから声はすごくでてるんだけど、音程そのものはかなり荒くて不安定で。実は、こういう状態が彼女、結構長く続くんですよね。今考えると、ここがパニック障害の始まりだったのかなと思うんですけど、ただ、不思議なことに、彼女のこの危うい感じがこの曲に逆説的にケミストリーを与えてもいて。その意味でも不思議な曲です。さらにいうと、最近復活しているNokkoには、この目の表情が消え、しっかり復活しているので、それはすごく嬉しかったりします。

またこの曲は女性シンガーに人気の曲でして、安室ちゃんやBonnie Pinkがカバーしたことでも知られてもいます。

3.シンデレラ・ハネムーン/岩崎宏美(1978)

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3位は岩崎宏美の「シンデレラ・ハネムーン」。

 バート・バカラックにとってのミューズがディオンヌ・ワーウィックなら、筒美京平のそれは岩崎宏美。そう断言してもいい気がしています。それくらい、筒美ナンバーを歌わせたら、彼女よりうまいシンガーはいなかった。そんな風に僕は思ってます。

 先生はデビュー当時の彼女に、彼が当時最も入れ込んでいたフィリー・ソウル調の曲を歌わせ、岩崎宏美自身もそれにうまく答えて、それが「ロマンス」や「センチメンタル」と言った名曲に繋がっていたと思うんですけど、この曲では、それがフィリーのモードのままにドナ・サマーのディスコ・サウンドに発展したような、そんな感じが伺えます。ベースラインなんてモロですからね。

 ただ、この曲はそうしたサウンドのこと以上に、彼女のヴォーカルの冴えと艶。これが圧倒的です。もともと、声の響きが抜群の彼女ではあったんですけど、サビの「♩肩でもいいわー!」と、ハイピッチを堂々と歌い上げるあの感じ。この部分、相当のテクニックがないと歌えないし、最近だと本人自身もファルセットにしないと歌えなくなってるほどですが、そんな難しいキーをあえて歌わせても大丈夫な安心感を先生に与えていたのは確かだし、それがメロディのダイナミズムを助けてもいたでしょうね。日本の歴代女性アイドルで最強の歌唱力を誇ったのは彼女だと思っています。

ただ、この曲、コロッケがモノマネするときの曲でもあるので、コンサートでこの曲歌うと観客席から笑いが漏れることがあって、一時期、封印せざるをえなかったという不遇もあったと、ウィキに書いてありましたね。


2.木綿のハンカチーフ/太田裕美(1975)

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2位は太田裕美の「木綿のハンカチーフ」。

彼女の場合は「筒美」のみならず「松本隆&筒美京平」ブランドのミューズとして、これも日本のポップ・ミュージック史上に残る存在ですよね。

 なんていうんでしょうね。フォークとシティ・ポップの間くらいの曲調を、優美なストリングス・アレンジでソフィスティケイトさせて昇華したあの感じ。実際に、松本氏の盟友・細野晴臣氏が当時やってたティンパン・アレーにも通じるサウンドですけど、それを元はっぴいえんど勢として別の形でシンクロしてやってたみたいなね。

 結局、松本隆がここで築き上げたパターンを、筒美以外のソングライターと築き上げていったのが聖子ちゃんであり、この「太田裕美ー松田聖子」のラインこそが、「日本の良質ポップス」の雛形となり、追悼文の時にも書きましたけど、キリンジや富田恵一のアレンジなどにも繋がっていった。その意味ではこれ、日本のポップ・ソングの雛形としても極めて重要な曲です。これが1位でも良かったような気がするし、実際、これが1位なんじゃないかと予想していた人も多かったんじゃないかなと思ってます。

では、1位ですが、結局、これでした!

1.ABC/少年隊(1987)

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1位は少年隊で「ABC」!

「木綿のハンカチーフ」でも良いといえば良いんですけど、やっぱり、「筒美京平」を語るなら、ソウル・ミュージック、ダンス・ミュージックの延長上にあるものを1位にしたい。だったら、もう、この曲しかないに決まってます!

 この曲は、この当時に世界的にすごく流行ったユーロビートの曲のどこの曲よりも上でしたね。とにかくメロディが素晴らしいのと、リフとなるリズム・ラインの絶妙なキャッチーさ。これがあの当時のものの中でもダントツでしたね。

 それから、ジャニーズでこれ以上の曲も、これまで聞いたことがない。少年隊って、かなり長い間、歌唱力とダンスでジャニーズ最強でしたからね。とりわけ錦織一清の甘く伸びる声とリズム感のキレは過去のジャニタレの中でも未だにトップクラスなんじゃないかな。筒美先生もそれがわかっているからなのか、トシやマッチに提供していた曲よりは明らかにソフィスティケイトされた、アッパーな、よりテンポの速い曲あげてましたからね。岩崎宏美のところでもそう書きましたけど、「多少、無理なお願いしても大丈夫」と言う安心感が遠慮なしに良い曲を書かせていたのかもしれません。

この曲がいかに愛されていたかというと

嵐にサンプリングされてもいる訳ですからね。これ当時聞いた時に「ジャニーズがようやく、自社のレガシー、有効活用してきたな」と思ったし、サンプルにリズム使ってイケる貴重な曲だと改めて思いましたからね。

あと、これ以降、本当に長い間、ジャニーズでこの曲や少年隊を上回る存在が出てこなかったですよね。少なくとも2000年代まではなかったと思います。それ考えると、ものすごく惜しいことしてますよね。だって、80年代までにジャニーズにはこれができてたのに。さらに言えば、韓国だと、少年隊に触発されて初めてアイドルが生まれてきたような感じだったのに。それが今やどうなってしまったかは皆さんもご存知な訳で。最近になってKポップをかなり意識し始めたのか、ジャニーズの若い衆もかなり歌そのものはうまくなってきているようですけど、そういう手遅れになる一歩手前の処方を慌ててやらずに、90年代からこの曲のレガシーを受け継ぐ楽曲と実力派アイドルを育てて行くべきだったと思うんですけどね。

・・・と言った感じでしょうか。改めて筒美京平ナンバーの数々が後世に聴き継がれることを願います。



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