見出し画像

自己流から一流プロダクトマネージャーになるために学ぶべきこと #pmconf2020

こんにちは、Tablyの小城(@ozyozyo) です。
先日のプロダクトマネージャーカンファレンス2020にご参加頂いたみなさま、大変お疲れさまでした。私のセッションには530名を超える多くの方にお集まりいただき、大変感謝しております。

本記事では登壇内容のふりかえりをいたします。参加された方も参加されなかった方もぜひ、ご活用ください。

<登壇資料>
[#pmconf2020] 自己流から一流プロダクトマネージャーになるために学ぶべきこと / 小城久美子
https://www.slideshare.net/kumikokoshiro/pmconf2020-238980509

■ 自己流と一流の違い

まず、私が定義している「自己流」と「一流」の違いからお伝えします。私は、目の前に見えている仕事から派生して手探りで手の届く範囲の仕事をやっている状態を「自己流」だと呼んでいます。一方、「一流」とは、プロダクトマネジメントの全体像を理解した上で、自分がやるべき仕事を担い、自分の手が届かない仕事をチームに委任することができる状態です。

スクリーンショット 2020-10-29 23.28.57

ビジネスも、UXも、Techも、何でもできる人が一流なのではなく、プロダクトマネジメントの全体像を理解して、自分の強みとなるところを活かし、弱みとなるところをしっかり人に任せることができる人を一流と呼んでいます。

つまり、一流のプロダクトマネージャーになるためには、プロダクトの全体像を理解することが第一歩となります。ここからは、端的にプロダクトマネジメントの全体像、そしてその各項目で何を気をつけるべきであるのかのエッセンスをチェックリストの形式で紹介します。

■ プロダクトの基本

まずは、プロダクトの基本ができているか、改めてチェックしてみましょう。

プロダクトの成功は3要素のバランス

スクリーンショット 2020-10-29 23.46.40

プロダクトマネージャーは組織を横断した役割ですので、とても広い視野を持たなければいけません。例えば、プロダクトチームの中でビジネスの人が目指している成功は事業価値を上げることでしょう。一方、UXデザイナーが目指す成功はユーザーに提供できる価値を大きくすることかもしれません。しかし、プロダクトマネージャーが目指すべき成功は、そのどちらかに傾倒するのではなく、事業価値と顧客価値の両方をバランス良く最大化することです。

また、事業価値と顧客価値が安定しているとしても、そこにビジョンがなければ、次にどこに成長すればよいか分からなくなる日が来てしまいます。顧客価値と事業価値のバランスを取りながらビジョンを達成することがプロダクトの成功への近道です。

チェックリスト①
✔ 顧客と事業のどちらかに目線が偏っていないか?
✔ きちんとビジョンの実現に向かっているか?

プロダクトライフサイクルを意識した戦略づくり

スクリーンショット 2020-10-29 23.48.19

知識としてプロダクトライフサイクルを知っている方は多いでしょう。しかし、自分たちのプロダクトがそのどこにいるのか意識できていますか?また、自分たちがどこにいるのか分かったら、その次のステージに進むために越えなければいけない壁を意識した戦略構築も必要です。

チェックリスト②
✔ 今、プロダクトがどこのステージにいるか意識しているか?
✔ 次のステージに進むための戦略はあるか?

仮説検証の重要性を理解してMVPを作れているか?

スクリーンショット 2020-10-29 23.51.25

引用元: https://blog.crisp.se/2016/01/25/henrikkniberg/making-sense-of-mvp

「プロダクトを作ることは仮説検証だ」と言っても過言ではありません。1つ機能を作るときには、それは「どんなユーザー」の「どんな課題」を解決するのかという仮説や、「課題」を「その解決策」で解決できるに違いないという仮説がなければいけません。つまり、当たり前のことですが、なんとなく競合で人気になった機能を取り入れることは避けなければなりません。

チェックリスト③
✔ 自分の仮説を持っているか?
✔ 今検証しようとしている仮説は何か、全員が言えるか?
✔ 検証できている仮説・できていない仮説が管理されているか?

■ プロダクトマネージャーの2つの仕事

プロダクトの基本についておさらいができたところで、次はプロダクトマネージャーの仕事を紐解いていきましょう。プロダクトマネージャーの仕事は大きく2つに分類することができます。プロダクトを作る仕事(プロダクトを育てる)と、プロダクトを作る"チーム"を作る仕事(ステークホルダーをまとめ、チームを率いる)です。

スクリーンショット 2020-10-29 23.59.03

■■ プロダクトを育てる、仮説のミルフィーユ

「仮説検証の重要性」でも述べたように、プロダクトを考えるには数多くの仮説が必要です。例えば、ターゲットユーザーが誰であるのかという仮説を元に、そのユーザーのペイン・ゲインを仮説立て、それを元に解決策の仮説を作ります。このとき、仮説が3段階に重なっており、一番根深いターゲットユーザーの仮説が間違っていることが分かったときにはこの3段階のすべての検討内容を見直す必要があります。

この、プロダクトを考える上での仮説の階層構造を表したものが下図の「仮説のミルフィーユ」です。ミルフィーユの各層をプロダクトのCore、Why、What、Howと呼びます。

スクリーンショット 2020-10-30 0.02.12

< ミルフィーユについては別記事がありますので詳細説明はこちらでは省略いたします。>
一気通貫したプロダクトをつくるための思考法、プロダクトの“4階層”とは?
https://codezine.jp/article/detail/13060

この4つの層に分けておくことでプロダクトを捉えるときの解像度を上げることができます。チームで議論をするときもこの階層ごとに議論をし、この階層を越えた仮説の関係性を意識することによって、プロダクトとチームの議論が一気通貫してきます。

また、プロダクトマネージャーとしてこの4階層すべてを意識できているかも確認してください。例えば、ジュニアのプロダクトマネージャーはプロダクトのWhatをメインで担当していることもあるかもしれません。徐々にプロダクトのWhyやCoreにも手を伸ばし、スキルに厚みをもたせていきましょう。

チェックリスト④
✔ プロダクトを階層に分けて解像度高く捉えて、CoreからHowまでそれぞれの仮説を持っているか?
✔ 階層を越えた仮説の関係性を明らかにできているか?
✔ PMとして4つの階層すべてを担えているか?また、視野が薄くなっていないか?

ここからは、4つの階層を1つずつ紹介していきます。

■■■ プロダクトのCore: ビジョン・ミッション、事業戦略

スクリーンショット 2020-10-30 0.15.44

プロダクトのCoreになるのはそのプロダクトのビジョン・ミッション、事業戦略です。中でもビジョンは重要です。会社のビジョンとは別にプロダクトのビジョンをしっかり据えてください。ユーザーが欲しいモノを作ることも重要ですが、自分たちがプロダクトを使って作り出したい世界を考えることでユーザーがまだ気づいていない価値を提案していきましょう。

チェックリスト⑤
✔ プロダクトにビジョンはありますか?
✔ そのビジョンは現実味があるがワクワクして、目指すべきものですか?
✔ 会社からのプロダクトへの期待や事業戦略を把握していますか?

■■■ プロダクトのWhy: 「誰」を「どんな状態にしたいか」、なぜ自社がするのか

プロダクトのWhyは大きく2つから成ります。
1. なぜ自社がするのか
2.「誰」を「どんな状態にしたいか」

1. なぜ自社がするのか

そのプロダクトをなぜ自社がするのかを整理しておきましょう。自社や競合の強みや弱みを分析して、どうして自社だからこそできるのか、なぜ今しなければならないのかを考えておくことによって、他社に簡単には真似されない独自の戦略を構築します。

2.「誰」を「どんな状態にしたいか」

スクリーンショット 2020-10-30 0.23.10

プロダクトのCoreであるビジョンを細分化すると、いくつもの「誰を」と「どんな状態にしたいか」のセットから成ります。そして、そのいくつもあるセットの中から、プロダクトが対象とするセットとして選んたものがプロダクトのWhyになります。選択するときの根拠はプロダクトのCoreや「なぜ自社がするのか」との一致によって優先度付をするとよいでしょう。

そして、Whyのセットである「誰を」「どんな状態にしたいか」を実現する解決策もたくさんあるでしょう。1つ思いついた解決策だけに執着をせず、プロダクトのWhyを最適に解決できるものを探索することが重要です。

チェックリスト⑥
✔ ターゲットユーザーと課題のセットが明確であるか
✔ 自社だからできる真似されない仕組みはあるか?
✔ 解決策にこだわって、課題を見失っていないか

■■■ プロダクトのWhat: ユーザー体験、ビジネスモデル、優先度(指標とロードマップ)

スクリーンショット 2020-10-30 0.33.22

プロダクトのWhatとなるユーザー体験やビジネスモデルを考える時に最も重要なのは、ユーザー体験とビジネスモデルを設計するときの前提条件が統一されていることです。ユーザー体験を考える部署とビジネスを担当する部署が離れていて別のペルソナを想定して仕事をしているなど、足並みが揃わないことがあります。プロダクトマネージャーは組織の壁を越えて、プロダクトチームがチームとして同じ仮説を用いてプロダクトを設計する体制を整えることが大切です。

チェックリスト⑦
✔ ユーザー体験とビジネスモデルが整合しているか?
✔ ユーザーを考えるときと、ビジネスを考えるときのターゲットやペイン・ゲインは同じか?
✔ バランスの取れた指標とロードマップであるか?

■■■ プロダクトのHow: UI、設計・実装、GoToMarket 等

スクリーンショット 2020-10-30 0.49.28

プロダクトのHowについては積極的にプロダクトマネージャーが手を動かすことはなく、UIに関してはUIデザイナーに、開発に関してはエンジニアの担当領域となります。このとき、プロダクトチームが同じ方向を向いて開発ができるようにプロダクトのCore、Why、Whatをきちんと伝えなければなりません。

また、プロダクトのHowに関して、しっかりと権限を委譲する反面、任せっきりにはせずにプロダクトマネージャー自身も細部にまでこだわる姿勢が重要です。いくら、自分がビジネスに強いプロダクトマネージャーだからといって、プロダクトがどんな画面でユーザーに届くのか知らないなどというのは言語道断です。

チェックリスト⑧
✔ Howに関わるチームメンバーがCoreからWhatを十分に理解しているか
✔ Howを任せっきりにはせず、Howにもプロダクトマネージャーが責任を持っているか?

■■ プロダクトチームを率い、ステークホルダーをまとめる仕事

プロダクトマネージャーのもう一つの仕事である、プロダクトを作る"チーム"を作る仕事について簡単に説明して終わりにしようと思います。

スクリーンショット 2020-10-30 0.53.05

Tablyでは。成功するプロダクトを作り出すチームを「プロダクト志向」なチームと呼んでいます。プロダクト志向なチームになるためには多くのTipsがありますが、1つのnoteですべてを紹介するのは難しいので、このnoteではプロダクト志向なチームの以下の4つの特徴だけの紹介に留めておきます。

チェックリスト⑨
✔ チーム全員がプロダクトを自分ごととして捉えて、プロダクトをよくすることに拘り抜く
✔ 部署の目標とプロダクトの成功がリンクしている
✔ プロダクトを良くするためのチャレンジを厭わず、失敗したとしてもそのチャレンジが称賛される
✔ プロダクトづくりが仮説検証だとチームが理解していて、小さな失敗を繰り返し次に活かす
<プロダクトチームのTipsについてはこちらにも記事があります>
プロダクトを成功させるチーム構築のためにPMがすべきこととは?
https://codezine.jp/article/detail/12578

■まとめ

このnoteでは、一流のプロダクトマネージャーになるために、プロダクトマネジメントの全体像を紹介しました。全体像の中で、取り組むことができている項目、これからチャレンジする項目を洗い出すことができれば、あとはコツコツと勉強をしていきましょう。

プロダクトマネジメントの仕事をしていると、忙しさのあまり視野が狭くなってしまうこともあるかと思います。そんな時にもこのチェックリストをご活用いただき、バランス良く仕事ができているか確認してみてくださいね。

お知らせとお願い

ところで、このnoteで紹介させていただいたセルフチェックより、もっと精度が高いアセスメントツールを作りたいと考えており、来春には発売を予定しております。
このnoteのチェックリストが有用だと感じてくださった方には、おそらくこのアセスメントを受験するだけで自分と向き合う機会となるものに仕上がると思っています。また、スキルやレベルを可視化することで、次の成長方針を見直す良い機会を提供させていただけるはずです。

つきまして、開発中のアセスメントのβテストやアンケートにご協力いただける方を募集しております。
実は、pmconfでもアナウンスをさせていただいたのですが、必要な方の数の半分も集まっていない状況でして、周りのプロダクトマネージャーの方もお誘い合わせの上、ぜひご参加頂けますと幸いです。

★★ βテストへのご応募はこちらからお願いいたします ★★
https://forms.gle/bkX9ECV84XajTKcG7

謝辞

長いnoteを最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。
また、カンファレンスで私のセッションを聞いていただいた方に、改めてお礼を申し上げます。
そして、前日にいきなり依頼をしたにも関わらず、快くDiscordの盛り上げを手伝ってくださった杉原さん、本当にありがとうございます。

スクリーンショット 2020-10-30 1.24.49

こちらの、Discord上のチェックリストへセッションを聞いてくださる方からリアクションで投票していただく企画は大変ご好評いただきました。私は自分のセッションを聞きに来る人が少なかったらとってもしょんぼりしてしまうので、Webinarの参加人数を見ないようにしていたのですが、ぴえん🥺 な投稿数がどんどん伸びて176、ぱおん🐘 な投稿1という結果になったところで自信を持って話すことができるようになりました。ありがとうございます。

また、Ask the Speakerにこれまで見たことが無いくらいの多くの方がいらっしゃって、実は登壇よりも緊張してしまいました。本当はすべての方とお話させていただきたかったのですが、私はカンファレンスの運営スタッフでもあり、次の方の登壇がめちゃくちゃおもしろいことを知っていたので、早めに切り上げさせていただきました。ご理解ください🥺

Ask the Speakerにテキストで頂いた質問はこの次のnoteにてお答えしますのでもうしばらくお待ちください。

💛  おまけリンク集 💛
■ もっとプロダクトマネジメントについて学びたい
「プロダクトマネジメントの基本を学ぼう」連載一覧
https://codezine.jp/article/corner/816

■ セッションに出てきた足の生えた魚について読みたい
プロダクトの強い軸を作るプロダクトマネジメントフレームワーク #pmconfjp
https://note.com/tably/n/n61ee3bcbeea0

■ Tablyのプロダクトマネジメント研修ってどんなの?
プロダクトマネジメント研修の事例紹介 - デンソー様 2020年新卒向け
https://note.com/tably/n/nba59a3f83a81

■ Ask the Speakerで話していた「大切なものランキング」
プロダクトの強い軸を作るために「大切なものランキング」を作ろう
https://note.com/tably/n/n64eacb97f55b

■ プロダクトマネージャーの習慣について知りたい
プロダクトマネージャーに求められる6つの素養
https://note.com/tably/n/n6215514bf83d

■ アセスメントツールのβテストに参加する
https://forms.gle/bkX9ECV84XajTKcG7