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Web3スタートアップ、資金調達の舞台裏

こんにちは、Astar Networkの渡辺創太です。最近、Web3スタートアップを中心に資金調達の方法についてよく聞かれるのでこの記事にてまとめます。

僕らは、過去にエクイティでの調達を3回、トークンでの調達を3回この2年でやり累計50億円相当の資金調達をしました。正直、エクイティの方は素人なのですが、トークンの資金調達に関しては、最近アーリースタートアップのピッチデックを多く見る立場にもいるので、比較的詳しい方だと思います。これからトークンで資金調達をするスタートアップが増えていくと思いますが、投資家にカモられないように起業家側もしっかり知識を持つべきだと思います。資金調達をするべきですが、出回っている情報が日本語だと皆無なので、このような記事を書くのにいたりました。

事前準備

まず大前提として、資金調達の一連の活動はお金が必要になった時に始めるのではなく、いざ資金調達をした時に一瞬で終えることができるように常に投資家とのコミュニケーションはしておくべきです。資金調達は精神的にも時間的にもかなり消耗します。優秀な起業家ほど常に投資家との関係性構築をしていると思います。僕らの場合で言えば、Polychainから十数億円の調達をした際に、Polychain側にかかった時間は2日間でした。Polychainとは1年以上前からピッチを何回かしていて(2回断られてる)その後の開発スピードや成長速度を見ててくれたのが今回の意思決定の速さにつながっていると思います。また先日、セコイアのFTXへの投資の担当者の人とランチしていたのですが、100億円の投資意思決定にかけた時間は3日だったみたいです。投資家に認知されているようなプロダクトを最初から作るのがベストですが、資金調達してないけどフィードバック欲しいから見て欲しいみたいなコミュニケーションを取るのがおすすめです。そこで、投資家の意思決定フロー、誰が決裁権を握っているのか、投資するとしたらそのチケットサイズ、過去の事例などをさらっと聞いておくと実際に投資をお願いするときに、戦術が立てやすくなると思います。

加えて、何で資金調達をするのかもこのタイミングで明確にしておく必要があります。プロダクトが綺麗に見えていて、トークンを発行するのであればSAFT(Simple Agreement for Future Token)、まだプロダクトがない、もしくはトークンを発行しないのであればSAFEで調達してトークンに将来的に移換するのがいいのではないかと思います。トークンの場合であれば、TGE(Token Generated Event)の後にベスティングをしっかりつけた方がいいです。安いラウンドで入った方が長いベスティングをつけた方がいいです。また、重要なのは、投資家は100%全員、「私はバリューアドする。長期で投資する」と間違いなく言います。しかし、実際にバリューアドをする、長期でもつ投資家は一握りです。クリプトの領域においてはお金を出資する人はほぼ無限にいるので、いい投資家をしっかり選ぶことが重要です。最初にへんな投資家が入ると、その後のラウンドでよりティアが高い投資家が入りにくくなると思います。ここはその投資家から実際に調達をしている起業家に意見を求めるのがよいと思います。実際にプロダクトを作りトークンを投資家に分配している起業家はどの投資家がどのタイミングで取引所に送ったのかをオンチェーンで見れます。エクイティの調達の場合には、SAFEを使うのがいいと思います。Web3ナラティブでトークンを発行するスタートアップはDAOを目指すのがゴールで会社精算をするはずなので、エクイティの価値が残余財産権くらいしかなくなります。なので、僕だったら極力投資家に株を配るのはやめます。株価を上昇させるインセンティブとトークンの価値を上げるインセンティブが多くの場合うまくマッチしないからです。トークンの価格と株価が紐付いてしまうと、株価を上げるためにはトークンの保有量を増やすのが戦略として正しくなるため、分散化をすることが困難になります。また、株をトークンに置換した時には残余財産件を外す契約をすると良いと思います。株に出資してトークンも貰えて、残余財産も貰えるのは投資家に有利すぎると思うので僕であれば譲歩しないと思います。

資金調達ミーティング

資金調達中は2つのスライドを持っておくのが良いと思います。1つはぎっしり説明文が入った詳細の資料。これは事前共有とミーティング後にフォローアップとして送ります。DocSendを使って送るとどの投資家がどこまで読んだのかとかをモニタリングできるので僕は使っていました。もう1つは、ミーティング中に使う文字が少ない口頭用の資料です。ここら辺は通常の資金調達を同じフローになると思います。

また、結構投資家は同じラウンドで入る投資家を気にするので、どうしても入って欲しい投資家に優先順位をつけて、最初は練習も兼ねて優先順位の低い投資家からミーティングを設定し、ある程度QAでどのような質問がくるのかのパターンを把握した後に、入って欲しい投資家にピッチするのが良いと思います。パターン化された回答があれば、同じ質問をされた時に、速攻で答えられるので考えているっぽく見えます。このタイミングでは、相手のコミットメントを承認しないほうがよく、リード投資家が決まったらチケットサイズは決定すると伝えるのがよいと思います。一方でコミットメントが得られたら次の投資家には$Mを調達していて80%は埋まってる。もう少ししか余ってないけど入る?みたいなコミュニケーションを取ると良いと思います。クリプトの領域に関しては、売り手市場なので、「あなたが入らないのであれば、他で埋められるから無理しなくていい」という「態度」が交渉上結構重要なんじゃないかと思います。実際、そういう起業家の方が投資家としても投資したくなると思います。

ミーティング後

Telegramをミーティング中に聞き、個別にTelegramで使用した資料、調達希望額とバリュエーション、回答期限(would be great if you could get it back to me within this week)みたいな感じ。を送るとよいと思います。Emailでも良いですが、Telegramの方が親密になれるのでできればTelegramを使った方がいいです。Astarの場合には、Astar Venture NetworkというTelegramがあり良いなと思った投資家の方々には追加させてもらっています。

クリプト特有なのは、ほぼ全投資家(a16zやセコイア、PolychainやPanteraも含む)が1週間以内に意思決定するくらいのスピードで物事が決まっているということです。なので、意思決定に数週間もかかる投資家はWeb3のスピードについてこれてないので今後のことも考えて入ってもらわない方がよいと思います。ミーティング中に大半が埋まっていて、1週間目処に返信がほしいと言えば基本的に1週間で投資家側も意思決定してもらえるので1週間めどにリマインドをしてみましょう。

出資のコミットメントが得られたら事前に準備しておいた契約書を投資家に送りチェックしてもらいます。契約書の内容に関して調整するのはリード投資家だけでよく、フォローの投資家にもリード投資家と同じ契約書にサインをさせる形で進めます。終始一環として重要なのは、この市場は圧倒的な売り手市場であり、どうしても入ってもらいたい投資家を除き、起業家側が投資家側に譲歩をする必要性が少ないということです。

機内でさくっと記事を書いていたのですが、そろそろサンフランシスコに着くので今回はここまでにしようと思います。


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