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ついに大量解雇を決定した、Airbnb社ブライアン・チェスキーCEOの社員へのメッセージ(2020/5/5)を翻訳してみた

本記事の目的

Airbnb社の英語サイトに、2020年5月5日にAirbnb社のCEOが社員に送ったメッセージが公開されました。特に、経営者がどのように戦略を見直し、どのように社員との関係を大事にしていくかを考える人にとって、学びの深いメッセージだと思いました。この公開された記事を、読んで感動を覚えた人は少なくないようです。そこで、自らの学習のため友人と共に翻訳したものです。

この翻訳に携わった私たちはAirbnb社の関係者でも、まして従業員でもありません。ですから、これはAirbnb社の公式の翻訳ではないですし、少なくともこの翻訳記事のリリース時点では、同社に内容に齟齬がないかなどの確認も一切とっていません。誤解、誤訳がないことも保証できません。

コメントなどで修正提案をくださることは歓迎しますが、この記事を決して一次情報として使わないでください。一次情報は以下に示す原文をお使いください。

翻訳者

川崎稔(株式会社フォーキックス)
岡田良太郎(株式会社アスタリスク・リサーチ)

一次情報は以下のリンクの全文です。

共同創業者、CEO ブライアンチェスキーよりのメッセージ By Airbnb · May 5, 2020 · Company

本日、Airbnbの共同創業者でCEOのブライアン・チェスキー氏は、Airbnbの従業員に次のようなメッセージを届けました。

自宅から皆さんと話すのはこれで7回目です。毎回、良いニュースも悪いニュースも話し合ってきましたが、今日はとても悲しいニュースをお伝えしなければなりません。

みなさんから従業員解雇 - レイオフの可能性を尋ねられたとき、私はどんな可能性も否定しないとお伝えしました。しかし今日、私はAirbnbの従業員数を縮小していくことを発表せざるを得ません。

わたしたちのように帰属意識の高い会社にとって、こうした問題と向き合うのは本当に耐えがたいことです。Airbnbを去らなければならない人たちにとっては、なおのことでしょう。私はこのような決断に至った経緯について、離職者のための支援策、そしてその後に起こることについて、できるだけ詳細にお伝えしたいと思います。

まず、私たちがこの決断に至った経緯からお話します。今、私たちは誰もが、人生で最も悲惨な危機的状況の中で暮らすことを余儀なくされています。この危機が広がったことで、世界中の旅行は停止してしまいました。Airbnbのビジネスは大打撃を被り、今年の収益は2019年の半分以下になるだろうと予測しています。そのため20億ドルの資金調達を行い、同時にAirbnbのあらゆる面において劇的なコスト削減を行いました。

こうした施策が不可欠だったにもかかわらず、さらなる大きな変化が必要なことも明らかになりました。2つの厳しい真実が目の前に立ちはだかっているからです。

1. また旅行できる日が、いつになるかわからない。
2. 旅行するようになっても、今までとは違ったスタイルになるだろう。

Airbnbの事業は完全に回復するだろうとわかっているとしても、これから起こる変化は一時的なものでも、短期的なものでもありません。そのため、より集中的な事業戦略のもとで人員を削減し、Airbnbを根本から変革していく必要があります。

7,500人の従業員のうち 約1,900人のチームメイトが Airbnbを離れることになります。これは当社の約25%にあたります。以前のようになんでもかんでもやってみる余裕はなくなりますから、今回の削減で、焦点を絞ったビジネスを推進していかなければなりません。

これから集中する事業

新たな世界での旅行は違ったものになるでしょうから、私たちAirbnbもそれに合わせた進化が求められます。人々は自宅に近い場所で、より安全で、お手頃な選択肢を求めるでしょう。しかしまた、そのために損なわれてしまったと感じるもの──人と人の絆──を切望することでしょう。私たちがAirbnbを始めたときに、私たちがやろうとしていたことは人と関わり、人とつながることでした。今回の危機は、私たちが原点に立ち返るためにフォーカスすべきものを明らかにしました。Airbnbの真に特別なもの──自分の家を提供し体験を提供する普通の人々──へと回帰するのです。

つまりこれは、私たちの中心的な役割を果たすホストコミュニティの直接的なサポートにつながらない活動への投資を削減しなければならないということです。移動手段やAirbnbスタジオへの投資をいったん見合わせたり、ホテルやAirbnb Luxへの投資を縮小したりしなければなりません。

こうした決断は、当該事業を担当していたチームが失敗したせいではありませんし、そのチームメンバー全員が会社を離れることになるわけでもありません。付け加えると、Airbnbの全事業に関わるメンバーが影響を受けることになります。それぞれのチームはAirbnbがめざす方向への地図をうまく描き、それに基づいて人員を削減することになるでしょう。

どのような経緯によって人員削減を決めたのか

私たちの本質的な価値に基づき、人員削減をいかに進めるかという明確な原則を決めることが重要でした。私たちの原則は以下の通りです。

・私たちの将来のビジネス戦略とそのために必要になる能力を明確にした上で、削減できるすべてのものを洗い出す
・影響を受ける人に対してできるだけのことをする
・人種差別は絶対に行わない
・退職する人との一対一の面談は最大限に便宜を図る
・詳細が決まるまでどのような決定も伝えない ── 一部だけの情報開示は事態を悪化させる

私はこの原則を守り抜くために最大限の努力をしました。

人員削減までのプロセス

まず事業を継続できるコストモデルの上に焦点を絞った事業戦略を創ることから始めました。私たちは各事業チームを新しい戦略にどう当てはめるかを検討し、各チームの今後の規模と形態を決定しました。それから、すべてのチームメンバーについて包括的なレビューを行い、各人の強みとなる能力とその能力が将来の私たちのビジネスに活かせるかどうかを考慮して決断しました。

そして、私たちが愛し、高く評価してきたチームメイトと別れなければならないという結論に達しました。素晴らしい人々がAirbnbを去ることになりますが、彼らを雇うことになる会社はとてもラッキーです。
会社を去る人々への心づくしとして、私たちは退職金、従業員株式、健康管理手当、就業支援のすべての面において考慮を重ね、心を込めて全員に最大限の優遇措置をとりました。

退職金

米国内で勤務している従業員には14週分の基本給とAirbnbでの勤続年数分の週給をプラスして支払います。在職期間は切り上げて計算します。例えば、Airbnbで3年7カ月在籍していれば、4週分が加算され合計18週分の週給を支払います。米国外の従業員には14週分の基本給の他に、それぞれの国の規定に基づいた勤続給を加算します。

従業員株式

入社一年後から株式を得られるようになるというこれまでのルールを廃止し、退社する人は在社年数にかかわらず株主になります。そして5月25日にその権限を行使できます。

健康管理手当

世界的な広がりを見せる健康の危機がいつまで続くのかわからない中で、私たちは健康管理にかかるコストを抑えようと思います。米国では、コブラ(COBRA)を通じて退職後も12カ月間健康保険を継続します。その他の国では、2020年いっぱい健康保険料を支払います。この決定は、法律上継続できないためか、あるいは私たちには延長するだけのゆとりがないことがその理由です。また4ヵ月間はKonTerraグループがメンタル・ヘルス・サポートを行います。

就業支援

私たちのゴールはAirbnbを離れるチームメイトの新たな就業機会をみつけることです。

・同窓生のタレント名簿 ─ 会社を離れるチームメイトが新しい仕事を探す手助けとなるように、誰もが閲覧できるウェブサイトを立ち上げます。退職者に履歴書やレジメ、成果などを登録してもらい、就職先候補の会社に見てもらえるようにします。
・同窓生職業斡旋チーム ─ 2020年の残りの期間はAirbnbの人材採用チームのほぼ全員を同窓生職業斡旋チームとして編成します。Airbnbに残るリクルーターは退職者が次の仕事を見つける支援を行います。
・ライズスマート(RiseSmart) ─ 転職や職業斡旋の専門会社であるライズスマートが4ヶ月間の就業支援を行います。
・従業員による同窓生サポート ─ 会社に残る従業員全員に、離職するチームメートが次の仕事を見つける支援プログラムに参加することを奨励します。
・ノートパソコン ─ コンピューターは新しい仕事を見つけるたるの重要なツールですから、会社で使っていたアップルのノートパソコンを持ち帰ってかまいません。

次はこれから起こることについてお話します

できるだけ早く、みなさんに明確なことをお伝えしたいと思います。私たちは24カ国でビジネスを展開しており、明確なことをお伝えできるタイミングはそれぞれの国の法令と慣例によって違ってきます。いくつかの国では特別な方法で皆さんに通知しなければなりません。国によってプロセスは違っていても、すべての従業員に対する思いやりのある計画を実践しています。

米国とカナダでは、すぐにも明確な情報をお伝えすることができます。今から数時間以内に、退職者にはそれぞれの部門長との個別ミーティングの日程をお知らせします。これは私たちにとってはとても重要です。法律で許される国では、こうしたことは個人的に、一対一で話されるべきです。米国とカナダの退職者は5月11日月曜日が最終出社日になります。月曜日は次の一歩を踏み出すための時間をとる日になるとともに、別れを告げる日になるでしょう。 私たちは、それがどれほど重要なものであるかを理解し敬意を払っています。

会社に残って新しい役割を任される人は、その新しい役割について知ってもらうためのミーティング日時が通知されます。米国とカナダの社員は該当しません。

太平洋標準時で、午後6時、私はアジアパシフィックチームとミーティングを行います。午前0時には、ヨーロッパと中東のチームとミーティングを行います。そのあとは各国で、その国の慣習に合わせて次のステップを進めていきます。

私はAirbnbの役員たちに、会社を離れる人への配慮を求め、今週末まではチームで集まらないように伝えました。私はあと数日、みんなに今回の決定を受け止める時間をとってもらいたいと願っています。そして、太平洋時間の今週木曜日午後4時に、私との質疑応答の時間を再びとります。

最後に

この8週間で私が学んだのは、危機的状況は本当に重要なものかを明らかにするように迫るということです。混乱の中にいるにもかかわらず、以前より明らかになるものもあります。

第一に、私はAirbnbのみなさんに感謝しています。この悲惨な経験をしている最中に、私はみなさんに元気づけられてきました。このような最悪の状況下でさえ、ひとりひとりが精一杯頑張っている姿を見てきました。世界は人間同士のつながりをかつてないほど必要としていますし、Airbnbは難局を乗り越えられると分かっています。私がそう確信しているのは、私がみなさんを信じているからです。

その次に、私はみなさんひとりひとりを深く愛しています。私たちの使命は旅行のお手伝いをすることだけではありません。私たちがAirbnbをスタートさせたときのキャッチフレーズは「人間らしい旅を」というものでした。人間に関わる部分は、旅に関する部分よりもつねに重要な要素でした。私たちがやろうとしていることは人と関わることであり、人と人が関わることの中心には愛があるのです。

Airbnbに残るみなさんへ

会社を去る人たちをリスペクトする最も大切な方法は、彼らの貢献の重要性を知ることです。そうすれば、彼らはいつまでもAirbnbの物語の一員であり続けます。彼らの仕事は残っていきます。このミッションもまた続いていきます。

Airbnbを離れるみなさんへ

本当に申し訳ありません。あなた方のせいではないことをどうかわかってください。あなた方がAirbnbに持ち込み、Airbnbを作り上げた資質と能力を世界中が求めています。その力を私たちと分かち合ってくれたことに、心の底から感謝いたします。

ブライアン

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