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日本から小説が消える日

皆さん、小説って好きですか?僕はめっちゃ好きです。

小説や漫画、アニメ、映画、ドラマなどなど、見てない人はいないといえる巨大コンテンツ群となっているわけですが、これが消えて無くなる日がくるかもしれないという話を今日はしようと思います。

創作大国日本

まずは色々とデータを見ていこうと思います。はい、こちら。

全国出版協会が公表している出版に関するデータですね。

見た瞬間わかりますね。ひどい落下具合…‼

ここ20年ほどで書籍全体がざっくり35%減、月刊誌と週刊誌は半分以下になっています。このデータは出版ルート上の取次ってところを通ってる本しか数えていないので、例えば出版社が直販している本やAmazonと直接契約して出してる本はこの中にはありません。が、それでも酷い衰退の一途をたどっていることは明確なわけです。

ガベージニュースさんから出版社自体のデータも拝借しました。

でん。

2001年には4424社あった出版社が17年で1300社くらい減ってます。売上の下降具合はかなりやばいのがわかりますね。これらのデータで予想以上に出版業界がヤバいことになっているのは理解してもらえるかなと思います。それでも「それで小説が消えるとか大げさワロタwww」みたいな方がいるかもしれませんので、さらにここから重要な話をしていきます。

本が訪ねて三千里

そもそも本がどのように我々の手元に届いているかご存知でしょうか。実は結構大変なんですよ。

テッテレー。こちら自作の図になります。本が出版されるまでの最低限の流れになっています。解説します。

①作家
著者様ですね。すでにプロとして活動している人もいますし、アマチュアの方で出版社に持ち込んだり、コンテストに出たりして書籍化される人たちもいます。

②出版社
全体では3000社を超える数があります。作家から持ち込まれたり、すでに書籍化されている作家の続編や、新企画とかいろんな方法で売れる本を企画して文章構成や編集をしている会社ですね。本の単価はこの出版社が決めるそうです。

③デザイナー
本の表紙やタイトルロゴを創る人のことです。出版社が外注で頼むこともあれば、自社でやっちゃうこともあるみたいです。

④印刷所
本の中身と外見ができれば、次は印刷ですね。印刷代は未だにかなり高いみたいです。

⑤取次(流通)
ここが僕ら読者からすれば一番馴染みの無い人達でしょう。製本まで終わった本を全国の書店へと卸す問屋さんです。この取次ですが、ほとんど2社のみでシェアを占めているらしく、その売上は出版社より全然高いみたいです。この取次の巨大資本によって、今の出版業界が守られているんだとか。

⑥書店
ここまで来ればわかりますね。
販売に関して、書店は意外とリスクが少ないようです。売れなかった本は返本されるんで不良在庫は抱えなくていいんだとか。

こうして僕らの手元まで届くっていう流れです。

崩壊を続ける出版業界

出版業界はこれまで、再販価格維持制度や返本制度などで強固なシステムを維持してきたわけですが、このシステムが崩れつつあります。

最初は書店から始まった崩壊が取次、そして出版社にも波及しています。取次の巨大資本を背景に作られていたシステムだけに、取次がダメになると業界全体が雪崩のように崩れる可能性があります。


そもそもなぜ出版業界は衰退しているのでしょうか?
出版不況だからーっと片付けるのは簡単ですが、せっかくなのでもうちょっと穿った目線で話をしてみましょう。

出版不況を語る記事や論説では、出版不況の背景は「可処分時間の奪い合い」にあると書いています。スマホ等がポピュラーになり、娯楽の選択肢が増えたことでユーザーの時間が分散してしまったのだ、と。あとは「若者の読書離れ」も言われています。しかし、これらに関して僕は懐疑的です。

小説を読むことに抵抗が無い人間にとって、動画でも小説でも、単純に面白いものなら時間を費やします。

「小説家になろう」という小説無料投稿サイトの最大手でのデータですが、2018年段階で月間14億PVまで伸びています。これは、日本の全Webサイトの中でも21番目に入る人気です。

たしかに小説の閲覧方法は変わったかもしれませんが、小説自体の魅力が無くなったというには早計でしょう。

では、なぜ出版不況となっているかという話ですが、本質的な原因は「作家に払わせていたツケが業界全体に回ってきた」ということではないかと考えています。

問題の本質を話そう

ひとつ疑問に思うことがあります。

出版業界が崩壊して、データで見ても書店や出版社、取次はどんどん衰退しているのに最も源流に位置する作家はなんとも無いのか?ということです。専業作家が日本に何人いるのかはデータが見つからなかったので正しい数は不明ですし、最近では兼業作家も増えているので不透明ですが、執筆だけに専業できるのは相当な売れっ子でないと無理です。

これは卵が先か鶏が先かの話になってしまいますが、作家にお金が回っていないというのは業界全体にとって致命的な問題になります。

出版社や取次、書店はあくまでも仲介業です。業界の中で唯一、商品を生み出すことができるのは作家のみであり、この作家をないがしろにしてしまう場合どうなるのか。

本が売れない→作家が稼げない→作家が減る→面白い作品が減る→本が売れない→作家が稼げない(ループ)

これが最悪の悪循環です。

作家というのは基本的に個人事業主であり、業界の中でも最も不安定な仕事になっています。
出版社の場合、売れない作品が赤字を出しても売れる作品でカバーできますが、作家はそうもいきません。売れない=廃業となってしまいます。

さらに、この悪循環を加速させていくのが出版不況です。

業界のプレイヤーすべてが売れる作品を求めています。不況により、利益により敏感になった企業としては、売れるかどうかわからない本よりも確実に売れる本に力を入れるのは当然の選択になります。
確実に売ろうとした場合、市場を調査し、人気が出ているジャンルや受けの良いタイトルと中身の本を量産することになるわけです。つまり、作り手側が買い手に媚びることになります。そうなると、読者の予想を超えるような作品は生まれなくなりますし、新しいブームを仕掛けることもできなくなります。結果、新鮮味がなくなり読者が離れていってしまいます。

業界全体が勘違いしてはいけないことは、作家だけは替えが効かないということです。

今の出版業界は自分たちを守ることに懸命になっていることでしょうが、この状況でなんとしても守らないといけないのは作家なんです。

作家へのツケ

作家の立場になって少し考えてみたいと思います。

苦労を重ねてようやくできた原稿をコンテストへと応募します。何度も挑戦し、何千といるライバルたちを押しのけて、ようやく担当がつき、ダメ出しをされながら直しを重ねて、いざ夢の書籍出版へと至ります。夢の報酬としてもらえるのは60万円。

めちゃくちゃシビアですよね。

作家の収入は、ほとんどが本が売れたことによる印税です。これが高くて10%程度。文庫などの場合、単価は600円程度です。では…、

600円×10000部×0.1 = 60万円

1万部売れても60万円です。10万部でやっと600万円。
さらにここから経費を払わないといけません。

これで本当に執筆活動に専念できる環境なのか。そんなわけないでしょう。

作家というのはかなり博打な仕事です。
複雑で精緻な物語を書こうとすれば、あらゆる知識が必要になりますし、取材なども必要になります。時間も労力もかかる上に、書けたとしても売れるかはまた別の話です。

仮に自分の子どもが小説家になりたい!と言っても素直に応援はできないでしょう。作家を本業にする人は減り、投稿サイトで趣味としてやる人だけが残ることになります。そうなれば、出版業界を盛り上げるような作品は今後生まれなくなってしまうのです。

出版不況の本質的な問題はここです。
最も価値のある仕事をしてきた人たちに利益を還元せず、自分たちだけが儲けてきた結果がこれなんです。

日本から小説が消える日

日本からすべての小説が消えるなんてことは流石にないかもしれません。ですが、このまま進んでいけば間違いなく衰退していきます。そして、ある線を超えた瞬間に業界全体が一気に崩壊してしまうかもしれません。そうなれば、作家がいたとしても、僕らの手元に本が届くことはなくなります。

そうなったときに一番困るのは僕ら読者です。

比喩ではなく、そのままの意味で好きな作品があるから生きていけるという人もいます。良い作品と出会えれば生きていてよかったなと思えますし、辛いときや悲しいときに勇気をくれたりもします。しかし、小説がなくなれば、それを原作としたアニメやドラマ、映画などのコンテンツも連鎖して無くなってしまいます。

アニメや漫画、ラノベは世界でも通用することが証明されました。しかし、その土台となる小説がなくなるような事態になってしまっています。これはいくらなんでも止めないといけない。

そのための方法として、小説家や漫画家という仕事を、誰もが憧れるロマンのある仕事へと再定義する必要があります。それは、これまでの出版業界ではできなかった、最も価値を発揮した人に相応しい報酬が与えられる土台を創ることが必要だと僕は思います。


日本から空想がなくなれば、一番悲しいのは僕ら受け手です。

だからこそ、僕は一人のオタクとして新しい土台づくり、プラットフォームを作ってみようと思います。

その話についてもリンクを貼っておきますので、もし興味を持っていただければ応援お願いします。開発のためのクラウドファンディングもやってます。よければ見てください。


今回はここまでです。

読んでくださり、ありがとうございました!

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