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DXの流れから考えるSaaSの次のスタートアップの切り口はなにか

年始に今年の注目テーマを書いてたけど、たまにはテーマごとの深堀りの記事を書いてみようかと。こういったシリーズはもうちょいやっていきたいけど、書くのは体力いりますねい。。
VCの仕事の一つであり、それが全てかもっておもっているのは"問いを立てること"だと思っていて、自分は情報の最先端には立てないし実際に実行していくのは起業家だとは思うけど、問いをたてることでその思考の補助線や起爆剤になれればと思って書いたり発信しております。
これ読んで、話してみたい方などはTwitter やFBからご連絡をば。このような起業テーマを話す勉強会も随時メンバー募集しております

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・Summary

DXの動きは流れがあって、1.0(SIer)=>2.0=>3.0のように変化してきているのではいかと考えており、SaaSの流れは2.0の変化で、”基幹システムによってIT化されていなかった・もしくはされていても高くてSMBが手を出せなかったシステム”を導入してきたことがベースにあるのではないかと思う。そして、今後DXが進む上で、CXの重要性が増してきておりそこに新しく入れるスタートアップや課題の解き方について考えてみた

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・DX2.0は普及は浸透期に入ってきたのではないか

早速だけれども現状のHorizontal SaaSなどはDX2.0なんじゃないかと思っている。もっと言語の粒度を高くすると、”DX1.0である基幹システムに現状組み込まれていない、売上・コスト改善が見込めるシステム=SaaSが導入が進んでいるのではないか” と思っている。 C向けのスマートフォンなどが普及しDegitized Consumerが進んで、いまスタートアップの投資としても Degitized Enterprise みたいな流れは周知の事実ではあるが、この流れはさらに加速していくのではないかと思う。ただこれからはDX1.0である根幹の基幹システムと密にやり取りする部分に入っていくので今後は入り方を選ばないといけないのではないかということがこのnoteの記事について提唱してみたい問いである。そしてその基幹システムを構築してきたのはSIerについて次に触れてみようと思う。

・日本におけるSIerの功績と今後に残した課題とは

そのSIerによって構築されているのが今の日本の基幹システムであり、その思想は後述のようなものとされている "もともと日本企業は、自社の基幹業務をIT化する際に、多くの企業が「業務にITを合わせる」発想でスクラッチ開発することで基幹業務=基幹システム化してきたの。対して海外はERPに代表される業務パッケージ製品を導入することで「ITに業務を合わせる」発想で基幹業務=基幹システム化しました。(出典:https://www.idearu.info/article/data/ds1399)” とあるように、自分自身が大企業の経験がほぼないのでなんともいえないけれども、お客様市場主義であるし、日本の景気が上り調子だったことを考えるとこのような思想で最初の日本のDXが進んでいったことは推測できる。またクラウドなどもなく、各会社に最適なものをつくろうという思想に至るのは非常に納得できる結果である。その次にERPシステム(ワークスアプリケーションなど)がでてきて、より大手でなくても基幹システムを入れやすくなった、DX1.5くらいの波があったのではないかと認識している。そしていまDX2.0のSaaSの波がいまきていると自分の中では解釈している。

ただ経産省がだしている下記資料のように、このレガシーシステムに2025年の壁がきつつある。資料にもあるように、その基幹システムで利用していた様々なIT資産のエンドオブサポートの期限が続々ときており、当時つくった基幹システムのブラックボックス化・更新必要性が差し迫ってきている。実際に少し古いがSHIFTが調査したレポートによると、"今後3年以内にマイグレーションを検討している企業は全体の約40%に達した。マイグレーションの主な動機として、「システムの保守期限」を挙げた回答が最も多く、次いで「コストを抑えてシステムを見直すため」「ベンダーによる販売やサポートの終了(EOSL:End Of Service Life)」などが続いた:出典 https://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/1810/04/news041.html” とある。そのためこの基幹・根幹の部分が次なるDXの対象となってくるのは間違いはない

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・ DX2.0がもたらしたものは基幹以外の業務への効率化・経費率の改善なのではないか

一旦DXという言葉に振り返ったときに、個人的にはNRIが提唱しているもの下記のものが結構好きな定義である。

"DXの効果について、当社の共同研究パートナーであるマサチューセッツ工科大学(MIT)スローンスクールでは2つの評価軸を用いて分析している。一つ目の評価軸は「経費率の改善」である。AI(人工知能)やアナリティクス、RPA(Robotic Process Automation:ロボットを活用したプロセス自動化)を使った業務の効率化、あるいはインターネットでのダイレクト販売による中間流通マージンの抜本的削減など、デジタル化によって主にコスト削減を狙うもので、現在のDXの主流はこの類の案件である。二つ目の評価軸は「カスタマー・エクスペリエンス(CX)」の向上である。CXは直訳すれば顧客体験だが、サービスや製品の認知から購入、さらには評価の一連のプロセスの中で顧客とそのブランドとの間に作られる強い信頼関係を意味している。そう考えるとCXはブランドへの顧客ロイヤリティと言い換えてもいいかもしれない。
出典:https://www.nri.com/jp/journal/2018/0404”

DX2.0(SaaS)が主にもたらしているものは①経費率の改善 なのではないかと思う。いままで基幹システムによってIT化されていなかった・もしくはされていても高くてSMBが手を出せなかったシステムをクラウドという技術革新によって、安価にスケーラブルにシステムを提供することができる企業が増えた。それが現状のSaaSの浸透を支えている流れなのではないかと思う。当たり前のこというと、高価なERP・基盤システムをクラウドを利用して、リプレイスをしやすい場所からしていった。それがいまのSaaSの文脈ではないのだろうか。ただそのHorizontal SaaSはまだあるとはおもうが、大分スペースは埋まってきつつあるのではないだろうかと思うので、今後DXを攻めるスタートアップにとっても大企業にとっても重要なのはCXになってくるのではないか?と思っている


・DX3.0がもたらすのはCX(Customer experience)の最大化であり、EX(Employee experience)の最大化ではないのか

イメージ図だけども下記のように、DX3.0ではより業務オペレーションのコアオペレーションまで入り込んでいく必要性がある。今まで以上にValue chainの業務全体の見直しを2つの観点から行う必要がでてくる。それがCXとEXの観点から必要となってくるのではないかと思う。製造業などにおいては、工場内のデータから出荷・保守点検まで。小売でいうと仕入れ・在庫管理から、webサイトのUXや現実の店舗のオペレーションまで、と幅広い業務に関わるものまで範囲が広い。またその当時想定しなかった、スマートフォン含め顧客接点の多様化にいまのシステムが対応しきれていない部分が多いのではないのだろうか。それに加えて日本においては、人材不足・働き方改革というマクロの波も考えなければいけない。そういった中で業務改善が、上記で記述した”2025年の壁”も相まって求められる

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このときに、いま活躍しているのはアクセンチュアなどのコンサルティング×SIerの機能をもっている企業の成長が著しい。事例としても、下記の伊予銀行との事例は非常に面白い

"地方銀行では、営業エリアの人口減少や超低金利政策の長期化に伴ってビジネス環境が厳しさを増しており、さらにはデジタル化の浸透などに伴って店舗への来店客が大きく減少するなど、顧客との関係や店舗の位置付けも大きく変化している。地域のビジネスインフラとしての役割も担いつつ、業務効率化と新たなサービス/ビジネスモデルの創出をいかに進めるか。説明会では、伊予銀行が10年間のプランで進めるビジネスモデル変革やDXの取り組みなどが紹介。
Agentの特徴は、これまで紙帳票ベースで処理してきた銀行窓口業務をペーパーレス化し、同時に店舗側の後方事務作業もシステム化/自動化を図ることで、顧客に対しては「待ち時間の大幅な削減」を、また店舗にとっては「業務量の大幅な削減」を実現していることだ。同行によれば、これまで45分ほどかかっていた新規口座開設がおよそ6分に、通帳/カード発行まで含めても10分程度に短縮。
参照:チャット/AIを活用した店舗受付タブレット「Agent」を含む新たな業務プラットフォーム

このようにビジネスオペレーションまでまるっとかえて、業務オペレーションに最適なものを新しくクラウドやAI技術を利用し根幹のDXを行っていくところが増えていく。そして、CX・EXをよくしていくことが今の時代のB2Bビジネスには求められつつあるのではないかと思う。じゃあ、SIerやコンサルがまだまだ伸び続けるて、スタートアップとしての入り方はないのか?というと、この部分はまさにディスカッションしたいが、いくつか可能性あるかもって思っているところはある

・Enteprise と自社アセットの強みを活かし協業する形でDX3.0を実装するようなスタートアップが生まれてくるのではないか

一つは言語化すると難しいけれども、そのスタートアップのもつテクノロジーなのか知見(アセット)なのか・プロダクトなのかを基軸として、Enterpriseとの協業をすすめていく入り方は今後も続いていくのではないかと思う。当たり前のことをいうなよって感じだとはおもうけどもw そしてできれば共通プラットフォーム化を狙っていくってことができるのであれば、大きなスタートアップになれる可能性を秘めているとは思う
スタートアップではないし、上記のアセットがあるかはわからない(人かも)が、Ridgelinez(富士通のDX専門特化したコンサル・SIer)などはそれにあたるかもしれない。海外でいうとPlantirとかは情報はでていないものの、こういった攻め方をしているのではないかと勝手に予想している
もしくは、下記資料のようにPKSHAのように、アルゴリズム・データ・AIの強みを生かしてEntepreiseに垂直に実装を進めていくというのはあるかもしれない。もしくは場所限定(工場だけ)とかではいっていくやり方などあるのかなあ・・IOTやエッジコンピューティングなどの技術を利用して。

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・フロムスクラッチからDX3.0化されたスタートアップが今後もでてくるのではないか

これは本筋の話とずれてくる可能性はあるが、こういったいま大企業がDXをおこなって最適なCX・EXを提供しようとビジネスモデルなどを転換しようとしているところを、最初からDX思想でシステムを作り込んで、リアルなオペレーションも兼ねたもので、リプレイスしていくという道はあるのかもしれない。有名なところでいくと、Lucking Coffeeはデリバリーなどの変化などに対応したDXを内包したスタートアップだったとおもうし、同じ系列でいうと「盒馬鮮生」(Hema Fresh)も変化に対応したものだったと思う。Challenger bank系なども広義でいうとそのような思想をもっているとおもうし、”Weworkの思想 × エックス”みたいな攻め方もあるかと思う。こういった現状オフラインとオンラインのオペレーションがある大企業がドミナントしているビジネス形態に、DX化をして入っていくみたいなのはまだまだありそうだなって思います(書きながらおもったけど、ただのOMOっすね・・w)

以上いいたいこととしては、Degitize Enterpriseはまだまだ可能性はあって、今後も進んでいくけどより入り方は考えないと Nice-to-haveなスペースに飛び込んでいくかもしれないから、考えなきゃな〜という独り言でした。

次回は、Consumer側の動きで、Post-truth な世界におけるC向けサービスの発案の切り口!っていうテーマでかけたら書きます。多分。おそらく。Maybe。Perhaps..

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