「重篤肺炎じゃないと検査は受けられない」とタライ回しにされたコロナ疑惑者の2週間の記録

※この話は東京都でのものになります。各都道府県で対応は変わると思います※

「全身が、自分で制御できないくらいブルブルと震えるようなことはありませんか?」
 
「え、それってコロナの特徴なんですか?」
  
「そういうこともあります」
  
「それはないですけど・・・・・・あ、でもそういえば、3、4週間前に電車に乗ったときにそんな人いました。満員電車だったんですけど、すごい体調が悪そうで・・・・・・まるで痙攣のように震えてて、これはまずいと気付いてから僕は違う車両に移ったんですけど。もしかしたらそこで感染したんですかね・・・・・・?」
 
「・・・・・・」
 
「でも、僕がその車両から出たとき、さらに大勢の方がその車両になだれ込むように乗っていきましたけど・・・・・・その方々は大丈夫なんですかね?」
 
 
 
ーーーそんなわけで、僕が肺に痛みを感じ始めてから2週間ほどの日が流れました。
 
この症状には波があり、良くなってきたと思いきや、突然また熱が出て息苦しさと咳が襲ってきます。何度も症状をぶり返すうちに「この病は、本当に“治る”ということがあるのか?」と恐ろしく思うほどです。
 
 
ただ僕はコロナのPCR検査を受けられてないから、これが本当にコロナかは分かりません。(受けても100%の結果ではないでしょうが)
 
保健所に何度も連絡し、3件ほどの病院で診察を受けましたが、決まって「重篤な肺炎ではないようなので・・・・・・」で検査もなく帰されるの繰り返しでした。
 
 
この文章は、ここ2週間、保健所と病院3件をたらい回しにされた僕の記録になります。
 
 
こんなことが起こったという経験そのものなので、間違っていると思う方はどうぞ構わずご自身のストーリーを歩んでください。見える世界も経験も人それぞれでしょうから。
 
 
ーーー
 
 
3週間ほど前。
 
目に違和感を覚えたのが最初でした。痛がゆさと何かが動くようなチックに似た症状がまず出て、その後、肺に違和感を感じ始めました。
 
まもなく寒気と倦怠感を感じ、これはまずいと病床に伏せましたが、4、5日過ぎても症状が改善しないので、保健所の新型コロナ相談窓口に連絡をしました。
 
何回もかけて、ようやく電話がつながったと思うと、まずその電話口から聞こえたのは
 
「ごほっ、ごほっ・・・・・・」
 
という僕なんかより、よほど酷い咳込みの声でした。
 
えっ、大丈夫ですか・・・・・・? 保健所という場所も場所だし、そちらのほうがまず検査を受けられた方が・・・・・・と言いたいのを飲み込みながら、その女性の普通に喋れないほどの咳をしながらの質問に答えていきました。

「37.5℃以上の熱が4日以上続いてないか」
「海外渡航歴はないか」
 
僕がどちらも当てはまらないというと、
  
 
「ではお近くの診療所で受診をされてください」
 
「大きな病院ではないんですか?」
 
「お近くの診療所で受診してください」
 
「そこでコロナの検査は出来るんですか?」
 
「そちらの診療所の医師の判断になります」
 
 
と、なぜか診療所をごり押しされたので、近くの診療所にコロナかもしれないと電話をかけ、そちらで診ていただけることになりました。
 
「11:30に来てください」
 
その言われた時間に行くと、その時間は診察時間外で、僕ひとり個室に通されるという、ほかの患者と接触しないようにとのインフルエンザと同じ感染症の配慮を受けました。
 
しばらくその個室で待ってるとお医者さんが来て、保健所で受けたような問診を受けました。そこで肺が痛く息苦しいというと、では血液検査してレントゲンで肺の様子をみてみましょうとなり、吸気と排気で2枚のレントゲンを撮りました。
 
 
「血液検査とレントゲンの結果では、肺炎とまではなってませんね」
 
「よかった、そうなんですね」
 
「なので今回は風邪ということで、お薬を・・・・・・」
 
「え? いやコロナの検査はしてくれないんですか?」
 
「こちらではコロナの検査は出来ません」
 
「いや、保健所に診療所に行けと言われて来たんですけど」
 
「そう言われましても、こちらでは出来ません」
 
「もしコロナだったらどうするんですか? コロナだったら、それで会社とか行ったら人にうつしちゃうかもしれないですけど」
 
 
「こちらから言えるとしたら『コロナとは積極的に否定できない』という所見です。なので自宅待機をするのか仕事に行かれるかは、ご自身で判断されてください」
 
 
「ええ? そんなんでいいんですか?」
 
「また症状が悪化するようでしたら、再度受診してください」
 
 
 
・・・・・・衝撃的な回答でした。
 
なにが衝撃的って『コロナとは積極的に否定は出来ない』って、そんな責任の所在のない回答があるのかという。それを人の命を預かる医師がするのかという。

「もしコロナだったら?」
 
の回答もまるでない。「こちらは分からないので、なのであなたもお好きにしてください」って、それでコロナに感染してる人が大量に出たらどうするのでしょうか。というか、そんなん出るに決まってるじゃないですか。
 
そもそも個人のなんの根拠もない勘に責任を委ねるって、それ先進国がすること・・・・・・?
 
 
 
ともかく・・・・・・この一件で腹が立ち、もう自宅待機して自力で治しちゃると籠城を決意。
が、ことはそんなうまく運ばず、2週間後に熱も出て症状も悪化したので、友人の薦め(心配)もあり再度、保健所に連絡をすることにしました。
 
 
「2週間たっても症状が収まらないんですが」
 
「でしたら、前回受診した診療所に再度受診してください」 
 
「あそこはレントゲンしか撮れないし、コロナ検査もしてくれないんですが」
 
「経過も把握できるので、前回受診した診療所にお願いします」
 
「ほかのCT検査してくれるところじゃだめですか?」

「前回と同じところでお願いします」
 
 
またしても診療所のごり押しされたので、前回と同じ診療所に電話をすると
 
 
「こちらでは同じ検査しか出来ないので、受診はお断りさせていただきます。保健所に違う病院を紹介してもらってください」
 
 
と診療拒否をされる。
 
それで再度、断られたと保健所に電話すると「こちらでは案内できないので、『医療機関案内サービスひまわり』に電話をしてください」と言われ電話をし、自分のコロナかもしれないという状況を説明して、「では」と近所のCT検査も出来る違う病院を紹介して貰い、さっそく電話をかけました。
 
 
「午後の受付時間は14:30からになりますので、その時間にお越しください」
 
「え、コロナかもしれないんですけど、通常の受付で大丈夫ですか?」
 
「当院は、専用の待合室などありませんので、みなさまと同じように受付をしてください」
 
「ええ、でも待合室って密室ですよね? それで他の患者さんに感染させたら大変だと思うのですが・・・・・・」
 
「なにかありましたら受付の者に申し出てください」
 
 
嫌な予感がしながら「でも早めに行けば大丈夫かな」と14:30ちょうどに病院に行くと、これが時間ジャストに来たにも関わらず、待合室はすでにたくさんのお年寄りに埋め尽くされているという状況でした。
 
 
えええ・・・・・・これ絶対感染させたらやばいやつ・・・・・・と受付するや
 
「僕コロナかもしれないので、ここで待つのは危険だと思うのですが・・・・・・」
 
とすぐに受付の方に申し出をしました。
 
 
「すみませんが、当院には別の待合室は用意してございません」
 
「いや、そういう問題じゃなくて、僕がコロナを他の患者さんにうつす可能性があるということなんですけど」
 
「同じ待合室でお待ちください」
 
「いや・・・・・・外じゃだめですかってことなんですけど」
 
「同じ待合室でお待ちください」
 
「いやいや・・・・・・徒歩5分に自宅があるので、こちらの携帯番号をお伝えするので、それで診察時間が来たら呼んでいただくとか、どうにか出来ませんか」
 
「医師に確認しますので少々お待ちください・・・・・・大丈夫です。おそらく診察は1時間後になりますので、その時間にまたお越しください」
 
 
 
そんなやりとりを経て待合室を脱出したわけですが・・・・・・なにか異様な恐怖を感じました。
 
というのも、あれだけのお年寄りがいるなかで、コロナ疑惑の患者を1時間待たせるって、待合室がないとかそういう問題なのかという。
 
もしそれで院内感染して、多数のお年寄りが重体になっても「待合室がないからそうなっても仕方ない」って・・・・・・いや、そんなわけないじゃないですか。
 
もうコロナが蔓延してしばらくたつのに、僕なんかより守られるべき人が全然守られていない。
 
それと似たような現場が、もしかしたら東京中に、いやもしかしたら日本自体が、これと同じことをしているのではないか・・・・・・
 
 
 
そして1時間がたち、病院へ再訪。
 
お医者さんにコロナかもしれないと、ここ2週間の症状を話しCTスキャンを受けさせてもらい、このような話をされました。 
 
 
「肺炎にはなってません。息苦しいとのことですが、風邪か、なにかマイコプラズマ等の感染症の可能性もあります。まあコロナも感染症ですが」
 
「もう2週間もたってて、最初のころより熱もあるし症状も悪化してるのですが、コロナの検査は出来ないのでしょうか?」
 
「悪いですが、ここではこれ以上なにも検査が出来ませんので保健所に問い合わせをしてください」
 
「でも、保健所からは医者に行けと言われたのですが・・・・・・」
 
「すみませんが、こちらでは何も出来ませんので保健所にまた連絡してみてください」
  
 
 
そこで帰宅し保健所に電話をすると、
 
 
「こちらでは検査出来ませんし、案内も出来ません。検査は病院のお医者さんが必要としたときに出来ます」
 
「いや、お医者さんには『検査については、ここではなんとも言えないので保健所に聞いてくれ』と言われたんですが」
 
「もしかしたらその病院の方が、コロナ検査の流れを理解されてないのかもしれません。そもそも、いまの東京では1日に100件ほどしか検査自体が出来ないので、よほど重篤な肺炎でもない限り検査の案内も出来ないことになっています」
 
「え? たった100件ですか? それじゃ疑いだけの人は、熱があって息苦しくても自己判断で自宅待機するしかないということですか?」
 
「申し訳ないですが、そういうことになります」
 
「でもそれだと、本当は陽性な人が自己判断で外出して感染を広げたりすると思うのですけど・・・・・・」
 
「申し訳ないですが、こちらではなにも言えません。また症状に変化があったら病院で診察を受けてください」
 
 
 
そして、翌日。
 
 
前日までのたらい回しの件を友人にしたところ、ここの病院なら検査を受けられそうだということで、近くの大病院の救急外来の受診を勧められ、さっそく電話をしてみました。
 
「2週間もこんな症状が出ているのですが、コロナ検査をしてもらえませんか?」
 
「それは診察後に医師が判断することになります」
 
「昨日、CTを受けて肺炎ではないからコロナ検査は出来ないと言われてるんですが、そちらで肺炎でなくてもコロナ検査は受けられますか?」
 
「それは診察後に医師が判断することになります」
 
 
なにを言ってもそれしか言わないので、とりあえず大病院ならなにか違うかもとの期待を胸に、その病院を受診することにしました。
 
病院に着いて画期的だったのは、さすが大病院様で、患者の棲み分けが完璧になされているということ。他の病気の方と、熱、咳のある患者は別ルートの受付が用意されており、待合室も他の患者さんとは隔離というくらいの距離感が保てます。
 
こりゃいくらでも待ってられると待っていたら名前を呼ばれ診察室へ向かい、そこにいた若いお医者さんから今までにない細かな問診と、触診を受けました。
 
そして胸の痛みということで心電図、エコーをし、また胸部のレントゲンを撮影し、結果、“心臓に異常はないようです”と言われました。
 
 
「え? 心臓? まあ心臓に問題がないのは有り難いですけど、コロナの検査はしていただけないのでしょうか?」
 
「肺炎でもないようですので、検査することは出来ません」
 
「もう2週間もこの症状で、熱も最近までまた数日続いてたりするんですが、それでも検査は出来ないのでしょうか」
 
「国から、重篤な肺炎患者以外にコロナの検査をしないようにと言われてますので」
 
「え? 国からですか?」
 
「はい。それ以外の方は申し訳ないですが、検査することは出来ません」
 
「でも、この症状はコロナだと思うんですが・・・・・・」
 
「そうですか・・・・・・。では、たとえば唾を痛くて飲み込めなかったりします?」
 
「そこまではないですが、喉は痛いしリンパもずっと腫れてるような感じです」
 
「全身が、自分で制御できないくらいブルブルと震えるようなことはありませんか?」

「え、それってコロナの特徴なんですか?」
  
「そういうこともあります」
  
「それはないですけど・・・・・・あ、でもそういえば、3、4週間前に電車に乗ったときにそんな人いました。満員電車だったんですけど、すごい体調が悪そうで・・・・・・まるで痙攣のように震えてて、これはまずいと気付いてから僕は違う車両に移ったんですけど。もしかしたらそこで感染したんですかね・・・・・・?」
 
「・・・・・・とりあえず、会社に行かれる時はマスクをするようにしてください」
 
「えええ? 会社行っていいんですか?? それこそコロナだったら感染拡大しちゃうじゃないですか」
 
「いや、もちろんご自身の判断で自宅待機でもいいです。うちの病院は、咳が出たら出勤停止になりますから」
 
 
 
・・・・・・重篤な肺炎患者しか検査しないも驚きましたが、「会社に行くならマスクして」はそれ以上に衝撃でした。
 
体調悪くて病院に来ても、なんの検査もなく帰される。
そんな人たちが自分をコロナだと疑って、自ら自宅待機をする確率は一体どの程度のものなのでしょう。
 
きっと誰しもが「コロナにはなりたくない」という願望を持っています。

「コロナになって会社や人に迷惑をかけたくない」と誰しもが思う中で、この世の中では誰もそれに答えを出さない。
 
 
そんなときに、人はどんな答えを選ぶのか。
 
 
おそらくたくさんの人が、「コロナにはなりたくない」という願望を自らの答えとするのでしょう。
 
 
本当は答えを出したいけど出せないお医者さんが、一体なにを思って「会社に行くならマスクを」と言うのか、それを言うしか出来ないのか。
 
 
その言葉が、僕にはなにか諦めの言葉のように響いてきて・・・・・・とても悲しく思いました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?