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プレイドの”非常識”なIPOまでの道のり、連載開始

はじめまして。プレイドでCFOをしている武藤健太郎と申します。

2020年12月17日、プレイドは東京証券取引所マザーズに上場しました。

IPO準備は6名の経理・財務・法務からなるワーキングメンバーが中心となりプロジェクトを推進していました。彼らワーキングメンバーに加えて上場を意識しながらプロダクトの開発や業績を達成してくれたプレイドのビジネス&開発メンバー、そしてサポートしていただいた証券会社・監査法人・弁護士事務所他の皆様に、ここで改めて感謝の気持ちを表したいと思います。

僕自身は2018年10月の入社直後から、会社としては同年4月からIPO準備を始めているので、準備期間は結果的に2年半以上になります。ただ当初は2019年6月の上場を目指していたので、ここまで長引くとは思っていませんでした。入社直後の全社昼会で、CEOの倉橋が全社に向けて”SIX PROJECT”という上場プロジェクトコードを発表していたとき、

「あと8ヶ月ぐらいで上場できちゃうのか?短くて残念だな」

と大きな思い違いをしていたことが今思うと恥ずかしいです。

ありがたいことに、プレイドのIPOはスマートに成功したという印象をお持ちいただいている方も多いかと思います。しかし内実はそんなことはなく、紆余曲折の多い過程でした。2度の推薦証券会社の変更があったり、上場タイミングを4回延期したり、東証審査入り直前にグローバルオファリングをやるかどうかについて証券会社と意見が合わなかったりと、多くの問題に直面し失敗もしてきました。この紆余曲折はプレイドがある意味"非常識”なIPOを追求したためだと思っています。

当時の気持ちを振り返るべく、一昨年末のSlackのスレッドを改めて見てみました。危機感に溢れてます。クリスマスも終わり年末年始のおやすみ直前という、ホリデーシーズン感の全くないメッセージです。発信時間も深夜23時25分です。

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ただ今思えば、2020年12月の上場はプレイドにとってベストタイミングだったと思っています。それは相場が良いタイミングだったからというわけではありません。上場前に様々な問題に直面して失敗できたおかげで、そこから学び改善する機会をえられました。もしも何事もなく最短で2019年6月に上場していたら、ここまで良い形で会社が変化できていたかわかりませんし、そのタイミングで株主となった投資家の方々にもご迷惑をおかけすることになっていたかもしれません。

上場準備プロセスは会社を変化させメンバーを進化させます。少なくともプレイドはそうでした。スタートアップとしてのカルチャーに重きをおく企業からすると、”上場会社にもとめられる管理的なこと”は相入れないように思われがちです。しかし、そんなことはありません。形式的にそれらに合わせるという発想ではなく、”上場会社にもとめられる管理的なこと”という異物をどうダイジェスト(消化)して栄養に変えていくかと考えていくと、良い形に会社の仕組みを進化させ、事業の成長を加速するものになると思っています。

せっかくこれだけ長い間、多くの問題・課題に直面してチームで学びを得てきたので、それを忘れぬうちに書き残して公開することにしました。常識を超えていく 〜プレイド IPOの軌跡〜と題し、実務を担当した各メンバーが執筆する連載形式で、2月16日から毎週公開していきます。

常識を超えていく 〜プレイド IPOの軌跡〜連載目次

各タイトルは仮になります。公開次第、以下の目次に記事リンクを貼っていきます。

第1回 プレイドの上場準備・審査プロセスについて 2/16公開
かなりタイトな上場準備・審査プロセスでした。2018年5月から証券会社とアドバイザリー契約を締結し2019年6月の上場を目指していました。上場まで約1年しかない状況で社内規程・ガバナンスの設計を進めながら、証券・東証審査を進めるというタイトなスケジュールでした。証券・東証審査で注意すべきことは何か?、短期間でこれらを整備していくことの難しさは何か?などについてこの2年の間に証券会社3社もの公開引受・審査部門と働いた経験を有する小島が書きます。

第2回 「共創」を目指した証券会社との付き合い方 2/24公開
上場直前に驚きの価格提示を受けました。2019年6月のグローバル・オファリングの実施に向けて主幹事3社で進める中、上場直前の2019年4月5日に3社それぞれから公開価格提案を受けました。2社はこれまで提示された水準通りだった一方で、1社からは圧倒的に低い公開価格を提示されました。この公開価格水準はそもそもグローバルオファリングに必要な流動性を作れるものではありませんでした。なぜこのようなことになってしまったのか?、どうしたら避けることができるのか?、証券会社の選定と付き合い方はどうするのか?などについて私武藤が書きたいと思います。

第3回 IPOプロセスにおける計画策定と予実について 3/2公開
予実を合わせることは上場を目指す全ての企業にとっての課題だと思います。上場時期を当初想定の2019年6月から2020年3月に延期しました。そして20年9月期から5ヶ年の事業計画を2019年9月に策定しました。しかし、その後の予実の結果、推薦証券からは目指していた2020年3月の上場は難しいとの判断を伝えられました。なぜこのようなことになってしまったのか?、予実は事業の問題なのかそれとも予算策定の問題なのか?、コストコントロールの面の課題は何か?、予算策定において社内のいろいろな意見をどう取りまとめるのか?など事業計画策定&予実の難しい調整を一手に引き受けた向江が書きます。

第4回 IPOにおけるCEOの役割とは? 3/11公開
グローバル・オファリングを諦めざるをえない状況に直面しました。コロナ下での修正計画の予実モニタリング期間を十分にとるために上場時期を2020年6月に延期し、そこから2020年9月になり、最終的に2020年12月まで延期しました。その延期の末に準備してきていたグローバル・オファリングはある理由からできないということに。しかし、それにもかかわらずグローバルオファリングを実施することができました。IPO準備におけるCEOの役割は何か?、IPO準備で辛かったことは何か?、そして厳しい局面でCEOとして下した決断は何か?などについて倉橋に聞いてみました。

第5回 なぜグローバルオファリングにしたのか?そこから何を学んだか? 3/18公開
グローバルオファリングは大規模なIPO含むオファリングの手法であり、公開価格ベースの時価総額が1,000億円にも満たないIPOでグローバルオファリングが選択されることは多くありません。過去、マザーズ市場においてグローバル・オファリングでIPOを実施したのはメルカリさんとFreeeさんだけでした。なぜプレイドは、臨報方式ではなく、グローバルオファリングを志向したのか、そもそも国内/旧臨報方式/グローバルオファリングの違いはなにかについて私武藤が書きます。

第6回 IPOにおけるマーケティングプロセスの実務 4/23公開
2020年11月に上場承認を受けたのちに投資家に会社・事業内容を説明するいわゆる”ロードショー”を行い、IPOで販売される株式に対する投資家の需要を積み上げます。ただ実はそれに先立ち2回の”インフォーメーション・ミーティング”を実施していました。この”インフォメーション・ミーティング”の方が”ロードショー”よりも大切だと考えています。我々が海外投資家に対するマーケティングをどのように実施したのか?、どのようにストーリーを伝えるべきか?、ロードショーマテリアル・成長可能性資料を作る時の注意事項は何か?について担当した元日本株アナリストの大薮が書きます

第7回 資本政策と株主の関係 3/29公開
上場に際して当社の一部株主が360日ロックアップを締結していることが個人投資家・機関投資家から好意的な”驚き”の反応を受けました。2年半の上場準備中に様々な資本政策を検討し、実際にGoogleからの出資を受け、また上場直前には株主間の譲渡によりロングオンリー投資家であるT-ROWEさんが株主となりました。IPOに際してはグローバルオファリングに必要な流動性を作るという観点から既存株主の皆様に売却にご協力頂きました。そして8割近くを海外機関投資家に配分しました。どのような考えで資本政策を行ってきたのか?、どう株主に接してきたのか?、なぜここまで海外機関投資家比率が高いのか?について、法務でガバナンス全般を担当する澤井が書きます。

第8回 オファリングの設計と実務 4/5公開
グローバルオファリングでは特有のドキュメンテーションや準備のプロセスが必要になります。大きな違いは英文目論見書を作成し、米国を含む海外機関投資家にマーケティングできるようにしないといけません。また国内と海外で販売する株式をそれぞれ国内トランシェ・海外トランシェに分けます。実際にグローバルオファリングをやる手間やコストはどうなのか?、法務の専門家からみたグローバル・オファリングの面白さは何か?などについて法務の小島よしおこと村井が書きます。

第9回 上場直後に何が起こる?IRについて 4/9公開
上場日になると様々な投資家や株主からインタビュー依頼や質問が投げかけられます。事前にいろいろと想定していたものの、かなり想定外のことも起きました。実際に上場前からIR・投資家対応として準備をしていたことや上場直後に起きたことについて今まさに対応に追われている向江が書きます。

第10回 SaaS KPIと開示について 4/16公開
SaaS KPIと開示の考え方。「なぜチャーン・レートを開示しないのか?」こうした開示に関するお問い合わせは上場後によく頂きました。どの数字を、どのような定義で計算し、どれくらいの周期でアナウンスするのか?という上場後の開示については、上場準備段階から検討が必要です。特にSaaSビジネスには特有のKPIがあり、何を開示方針とするかは自社の特徴や戦略と一致させていくべきだと考えております。この我々の開示に対する考えや思いを上場直前に参画した期待のルーキー新井が書きます。


最後に:チームで発信できることの楽しさ

上場後にCFOがIPOの経験や学びを語る、noteや記事に書くというのは多いので、僕もこれを期にnoteを初めて何か書こうと思っていました。しかし、倉橋や広報チームからの提案で、チームメンバー全員で発信していくことになりました。このような形で発信できることが本当に嬉しいですし、それぞれのメンバーが何を語るのか僕自身も楽しみです。

まだ入り口で全体が見えていない段階なので恐縮ですが、この一連のnoteを読まれた皆様が、我々と一緒に問題に直面し、失敗し、そこから学んだように思える記事にしていきたいとチーム全員で思っております。ぜひご一読いただけると幸いです。

それでは来週の小島の第1回 「プレイドの上場準備・審査プロセスについて」をお楽しみに!

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(書き手プロフィール)
武藤健太郎。プレイドではCFOとして経理・財務・法務・管理部門全般を担当。それ以前はドイツ証券・BDA Partners・みずほ証券・Standard CharteredにてM&AアドバイザリーやIPO含む資本調達支援などの投資銀行業務、ドイチェ・アセット・マネジメントで資産運用業務、日本長期信用銀行(現 新生銀行)にて金融商品開発業務に従事。またヘルスケアスタートアップのFiNCにも過去在籍。また現在、グロービス経営大学院准教授としてファイナンス・アカウンティングを担当。

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