れいわ新選組のウクライナ侵略非難国会決議への反対理由について思うこと

(すみません。コメント欄というものがあるとは知らず、コメントをいただき驚きました。もうしわけないのですが対応する余裕がありませんので、コメント欄がない設定にします。「プレミアム」になる必要があって、またクレジットカードの登録がうまくいかず一苦労しましたけど。)

はじめてノートというものを使ってみます。
個人ホームページで四半世紀ぐらいエッセーを書いてきましたが、このところ滅多に更新しなくなっています。毎日忙しすぎるということもあるのですが、個人ホームページを書くのに使っていたネットスケープがいつの間にか使えなくなってしまったせいもあります。後継のシーモンキーというのもうまくいかないし、ワードを使うと変になるので、仕方ないので、直接平テキストでhtml文で書いているので、めんどくさくてなかなか書く気にならないのです。
いまさら新しいホームページ作成ソフトを買っても使いこなせる自信はないし、そもそも買うこと自体苦労しそうだし、そんなくらいなら四半世紀前から変わらないhtml文で書いたほうが早いと思ったわけですが、そうは言ってもめんどくさいもんはめんどくさい。

しかし今度、れいわ新選組(以下しばしば「れい新」)が国会のウクライナ侵略決議に反対したことで、支持者・非支持者を横断して同党に批判、反批判の議論が起こり、混乱を深めている感じがします。私はれい新の声明の中に、混乱のもとになる重大な問題点があると感じました。ここは、早くこの混乱を整理する意見表明を書かないといけないと思いつつ、目の前の別の原稿がなかなか進まなかったし、しかもホームページのエッセーとして書こうとすると、めんどくささが先に立ってしまって書き進めそうにないやと思っていました。
そこで、何かいい方法がないかと人に聞いたら、「ノート」というものがいいらしいとわかったので、こうやって書いてみているわけです。

これがまた、登録するだけで一苦労で、この書き込み作業をする画面に到達するまでにたいがい時間を食ってしまった。
どういうわけかツイッターの登録画面が出てきたし。なぜだ。ツイッターは登録してないし、する気もないのですが、まあ、最近急に、ツイッターを読み進めるとすぐ、登録しろという画面が出てきて読めなくなるようになった。情報収集に支障を感じるようになったから、そろそろ年貢の納め時かなと思って登録作業をしていたのですが、電話認証のコードが何回やっても送られてこず、とうとう「もうダメ」と言われて受け付けてもらえなくなったので途方にくれていたら、なぜかノートの登録はできていた。あのツイッター登録画面なんだったのか。
まあ、こうやって作業できてるんだからいいけど。
(結局四日もかかったから、あまり新しいものに手を出した意味なかった。)

薔薇マークキャンペーンでの私のウクライナ戦争反対声明の立場

れい新の2月28日の声明に先立つ2月26日(ロシア軍侵攻開始二日後)に、私は、薔薇マークキャンペーン代表としての名前で、「戦争反対! ウクライナ侵略と大国間の勢力圏争いを弾劾する」と題した声明を発表していました。
まだご覧になっていないかたは、ぜひ目をお通しください。(3月2日には、英訳も発表されています。)

ここでは、いろんな意味で戦争の犠牲になった人たちへのお悔やみ、お見舞いと、ロシアで反戦に立ち上がった人たちへの連帯の言葉に続き、

戦争は、ごく一部の政治的経済的支配者の利益のために、本来全く争う必要のない民衆同士に殺し合いを強いるものです。私は戦争に反対する世界中のすべての民衆と連帯する立場で、プーチン政権による侵略と、それにつながった米露の勢力圏争いを弾劾し、即時の停戦と撤兵を訴えます。

と訴えています。そして、ひとびとに向けて次のようなアイデアを提案しています。その後、すでにいくつか取り組んでおられる人たちがいるものもあって、心強く思います。お知恵や人脈、手がかりなどがある人は、ご検討いただけたらうれしく思います。

・侵略戦争反対の声を上げるロシア、ウクライナの人たちに支持表明をしましょう。
・ウクライナの民衆への人道支援、避難民への人道支援に可能なかぎり協力しましょう。これを公的にも要求し、必要ならば体制を整えて日本に受け入れるよう求めましょう。
・在日ウクライナ人のビザを延長し、今後の情勢によっては永住資格の便宜をはかるよう求めましょう。
・在日ロシア人へのヘイトが起こったならば、それを許さない姿勢をとりましょう。政府にもそれを求め、プーチン政権批判を表明した勇気あるロシア人の身の安全を確実に守り、必要ならば政治難民として庇護するよう求めましょう。
・プーチン政権とその取り巻き財閥を利する取引をしている企業への不買運動などを進めましょう。
・戦争の影響で燃料や小麦の値上がりに拍車がかかることが予想されます。消費税の減税やガソリン税の停止で対処するべきです。
・この戦争を利用して国際石油資本が不当に石油価格を吊り上げることを許さないための国際的な取り組みに努め、権威主義体制の経済基盤を崩すためにも自然エネルギー転換を求めましょう。

さらに、安倍首相がプーチン政権と(クリミア併合後も)友好に努めていたことを取り上げて、自公政権はプーチン政権の姿勢に加担してきたと批判しています。そして、これは、"日本企業がとりわけ安倍政権期に入って東南アジアに怒涛の進出をしていて、東南アジアが日本の経済的勢力圏になってきている。すると同様に東南アジアへの進出を狙う中国などとショバ争いになりかねない。だから、そのときに備えて北方の安全を確保するためにやったことなのだ" との私見を述べています。
つまり、プーチン政権との友好は、安倍晋三元首相一人の錯誤の失策ではなく、日本の支配層がとっている根本的な大方針が必要としたことだったということです。

日本の政府、財界はこのかん、普通の人が暮らすために必要なものの生産は、国内でつくるのをやめて海外に進出して作り、国内業者は淘汰してしまおうという路線をとってきました。そのために、国内では雇用が空洞化しています。企業がろくに国内で設備投資しなくなったので、機械も建設も需要がなくなり、それが全産業に波及して経済が停滞してしまっています。そのうえに、中小個人事業の淘汰が進められています。この国に生きる普通の庶民にとっては、まったくろくなことのない路線です。私たちが反緊縮政策を追求しなければならなくなった根本的な原因は、まさにここにあったと言えます。

しかし日本政府は、この路線にあくまでこだわり、海外進出した企業が安心してお金儲けできるための体制づくりに邁進してきました。アメリカが入らないと言ってもなおTPPを作り、ISDS条項で、進出企業に不利な政策変更を訴訟でやめさせる仕組みにしています。RCEPでは、進出先政府が進出企業に、技術移転を要求したり、本国への利潤送金を規制したりすることが禁止になりました。

そのうえ、低賃金の労働力を、安全基準などが低いところでこき使ってやろうとの下心で企業進出していたら、どこかで激しい労働運動が起こって、日本人の駐在員が監禁されて吊し上げられるというようなことも起こるかもしれません。武装勢力に占拠されるかもしれません。革命が起こって国有化されるかもしれません。
そのときに、「日本人の生命財産を守る」ということで、自衛隊を派兵して進出日本企業を守ろうということが、このかんの日本政府のやっていることの流れではなかったと思います。たとえ意図してではなくても、実際にこうした事件が起こって、日本人が殺されるというようなことになったら、「自衛隊は何をしているんだ」「九条が彼らを殺した」といった世論が沸き起こって、自衛隊を行使する流れに自然になるでしょう。

とりわけ、革命が起こって企業が接収されるというような場合、どんな革命でも外国からの支援や工作はあるものです。しかし世論を圧倒的に動かすだけの国内的な要因がなければ、いくら外国が動かそうとしても動くものではありません。外国からの支援や工作があったからといって、革命が全部外国にあやつられて起こったというような評価をすることは間違っています。
しかし、東南アジアの企業進出先の国で革命が起こって日本企業が標的になったとき、そこに中国の工作の痕跡を嗅ぎ取り、これは中国の陰謀である、新政権は中国の傀儡で、人権無視のテロリストであるといったことをネトウヨたちが騒ぎ立て、世論が真に受けていきりたったならば、日本政府が「日本人の生命財産を守る」ことを口実に革命政権転覆のための武力介入に乗り出すという事態は、十分に予想されます。親中政権が存在するのは安全保障上の脅威だとも言うでしょう。
もしこんなことが起こったら、これは、プーチン政権がウクライナの2014年の政変を全面的に欧米の意を受けたネオナチの仕業として描き出し、軍事侵略の口実にしたことと全く同じ図式になります。

岸田政権は現在、改憲をはじめ、こうしたことが可能な体制をつくるために都合のいい仕組みづくりに前のめりになっています。岸田さん本人が意図してそれをやっているかどうかは問題ではなく、東南アジアへの企業進出を推進する路線が続く限り、それに適合した軍事政策レジームができることは、つじつまのあった自然な成り行きなのだということに注意してください。
それゆえ上記私の名前の声明では、日本を重ね合わせるべきはウクライナではなくてロシアである、日本をプーチン・ロシアのような国にしないために立ち上がることが、プーチン政権と闘うロシア、ウクライナの民衆に真に連帯することなのだと言って締めているわけです。
私の声明のタイトルが、「ウクライナ侵略と大国間の勢力圏争いを弾劾する」と、「大国間の勢力圏争い」となっているのは、本文中に直接書いてある「米露の勢力圏争い」を指していることは間違いないのですが、それだけでなく、実はここに、潜在的には日本や中国も込めて読むことができる表現にしているつもりなのです。

「上と下」に分ける階級的視点からの反戦声明の数々

私がこの声明を作るときに心掛けたことは、この侵略戦争に責任を負う者として批判する相手は、あくまでプーチン大統領とそのとりまきのごく一部の支配者たちであって、ロシアの民衆は関係ない、むしろ被害者だということです。
そして、プーチン政権の侵略戦争に反対して立ち上がった、ロシアとウクライナの民衆の側に立ち、その犠牲によりそい、闘いに連帯する姿勢で書いているつもりです。これらの人たちこそ、問題の真の解決をもたらす主体だと言えます。
さらに、この戦争につながった「米露の勢力圏争い」という表現で、勢力圏争いの餌食にされる民衆の目線から、アメリカ政府の勢力拡大政策をも批判しています。
すなわち、支配する階級の者も支配される階級の者もいっしょくたにして国ごとに一つの単位にまとめて、「ロシアvsウクライナ」「ロシアvs欧米」といった図式にしないよう、世界を「上と下」に分けて、「下」側の民衆の国際連帯で、理不尽な苦難を押し付けてくる「上」と闘うという視点を貫くよう心掛けて作ったわけです。
この目線から語るかぎり、どれだけアメリカ政府を批判しようとも、餌食に食いついたプーチン政権を擁護するニュアンスは一切入らないことはおわかりになると思います。

今回のプーチン政権のウクライナ侵略に対しては、世界中でたくさんの反対声明文が出されていますが、私が目にしたかぎり、同様の立場から出されたものには次のようなものがあります。

一番クリアなのがこれ。アレクサンドリア・オカシオコルテス議員らサンダース派の人たちが属している「アメリカ民主社会主義者」(DSA)の声明。
ロシアのウクライナ侵略について(On Russia’s Invasion of Ukraine)

短いので訳しておきます。大急ぎの拙訳なので間違いはあると思います。ご指摘ください。

アメリカ民主社会主義者はロシアのウクライナ侵略を非難し、ただちにこの危機を解決するための外交交渉と緊張緩和を要求する。我々は、ウクライナとロシアの労働者階級との連帯の立場に立つ。彼らは疑いなく戦争の惨禍を引き受けるからだ。そして我々は、両国と世界中の、反戦の声を上げ、外交的解決を訴えている人たちとの連帯の立場に立つ。
この極端で非対称なエスカレーションは、国連憲章に照らして非合法な行動であり、ウクライナ、ロシアそしてこの地域一帯の労働者階級の人々の生命と厚生を深刻に脅かすものである。我々は、すぐさまの停戦とウクライナからのロシア軍の全面的撤退を促すものである。

戦争や更なる干渉には解決はない。この危機は、緊張緩和と国際協力そして一方的な強制手段や軍事化や軍事的な瀬戸際政策への反対を要求する、すぐさまの国際的反戦の対応を必要とする。これらのものはこの紛争の人的犠牲を悪化させるからだ。

DSAは我々の主張であるNATOからの米国の脱退を改めて言っておく。これによってこの紛争のステージを作った帝国主義的拡張政策に終止符を打つ。我々は暴力のエスカレーションに反対することを米国と世界中の反戦活動家に呼びかけ、この危機から生じたすべてのいかなる難民をも受け入れる決定的な必要があることを強調する。今回の攻撃を通じて次の10年の多くのことが目に入ってくる。新自由主義的秩序の失敗が誰の目にもクリアである一方で、支配階級は新しい世界を、軍国主義と帝国主義と戦争に基づくディストピア的な移行過程を通じてもたらそうとしている。社会主義者はこれへの対案を作らなければならない。

戦争ではなく、階級戦を。

プーチン政権による弾圧の中で、反戦のために闘う「ロシア反戦社会主義者連合」が結成され、侵略戦争を弾劾する宣言文をだしています。プログレッシブ・インターナショナルが英文を伝えたものを、関西学院大学の朴勝俊さんがDeepL翻訳を修正する形で和訳してツイートしています。

東欧からロシアにかけての左翼の発信メディアであるLeftEastも、「プーチンのウクライナに対する帝国主義的戦争を非難する」とする声明を出しています。小倉利丸さんが訳を発表しています。

これらはいずれも、(1) 侵略戦争の責任を負う者をプーチン大統領とそのまわりの政治的経済的な少数支配者と規定し、(2) 侵略戦争に反対するロシア、ウクライナの民衆と世界の民衆が連帯することに事態の本質的打開の鍵を見て、(3) その立場からアメリカ政府の拡張政策を批判し、(4) ウクライナ難民の完全で人道的な受け入れを主張している点で、私の名前の薔薇マーク声明と全く共通しています。

ちなみに、こうした立場からは、ロシアに対する経済制裁はどのように考えられるでしょうか。
アメリカのサンダース上院議員は、プーチン政権による侵略戦争に対する下記の非難声明の中で次のように言及しています。

プーチンと彼のオリガルヒ(少数の取り巻き財閥)に対する強力な制裁を課す。その中には、彼らがヨーロッパやアメリカの銀行の中に隠し持っている何十億ドルもの資産にアクセスできなくするものが含まれる。

この制裁は、すでにプーチン大統領ほか、何人かについてはなされているようですが、それでは足りません。
『クーリエ・ジャポン』のウェブ雑誌で、トマ・ピケティさんが『ルモンド』に書いている連載が読めます。2月23日の記事「欧米諸国の考える「ロシアへの制裁措置」は“標的”を大きく見誤っている」では、スウィフトからの切り離しといった現在とられている制裁では、ロシアや西側の企業に被害がでて、民衆が損する一方で、富裕層は打撃を受けないと言います。
プーチン大統領やその側近だけでなく、プーチン政権で恩恵を受けてきた、2万人の富裕層をターゲットにして資産凍結しろと言っています。

たしかに、2万人をターゲットにすれば、ロシアの支配階級を網羅するでしょう。その中には、シロビキと呼ばれる暴力装置を握る人たちも含まれるでしょうから、これらの人たちがこぞって進退極まれば、トップを取り除こうという機運も出てくると思います。
ところが、ピケティさんによれば、これができないと言います。というのはこういうことです。

この種の制裁措置を実施するためには西洋諸国が国際的な金融資産の台帳(「グローバル・ファイナンス・レジストリー」とも呼ばれる)を作ればいい。これができれば、誰が各国で何を保有しているのかを追跡できる。

『世界不平等レポート2018』でも示されたが、これは技術的に可能なことだ。いま有価証券とその保有者を登録しているのは民間の証券集中保管機関(クリアストリーム、ユーロクリア、デポジトリー・トラスト・カンパニーなど)なので、公的当局がこれらの機関を掌握すればいい話だ。これによって公的な台帳ができれば、非合法な資金の流れ、薬物取引の資金の流れ、国際的な汚職と闘うのにも不可欠なものになるだろう。

それではなぜ、そのようなものがいままで作られてこなかったのか。理由は単純だ。西洋諸国の富豪たちが、この種の透明性によって不利益を被るのを嫌がってきたからだ。

つまり、ロシアの支配階級と西側の支配階級の利益が一致しているために、戦争を終わらせるために最も効果的な措置がとれないということです。
ということは、私たちは民衆を殺戮する戦争を終わらせるために、ロシアの支配階級の資産凍結を要求することによって、西側の支配階級とも同時に闘わなければならないということです。
世の中が国ごとにまとまって対立しているのではなく、国を超えて上下に別れて対立しているのだということが、こんなにクリアにわかるイシューはありません。
だからこれは、政治スローガンとして掲げるに値することなのです。

れいわ新選組の国会決議反対理由の何にひっかかるか

さて、薔薇マークの私の名前での声明が出た翌日27日には、れいわ新選組の大石あきこ議員が、「マニアック配信」の動画で冒頭この声明のことを詳しく取り上げて、賛同してくれました。

そして翌日28日、れいわ新選組から、「ロシアによるウクライナ侵略を非難する決議について」という声明が発表されました。

・ウクライナ国民への人道支援のさらなる拡大と継続、及び戦火を逃れ避難する人々を難民として受け入れ

・国内においては、この戦争によって原油高などの物価上昇により
生活や事業が圧迫される状況に対して、
消費税減税、ガソリン税0%、一律給付金などで
日本国内に生きる人々を守る

この二項目は、薔薇マークの私の声明にあったもので、大石議員が推してくれたのだろうと思いますが、うれしく思います。人道支援と難民受け入れは、その後ホットイシューになりましたが、この時点では日本ではまだほとんど聞かれてなかった話なので、議論が興ることに少しは寄与できたと思います。
また、プーチン大統領の核恫喝に対して、被爆国として強く抗議することを求めている項目は、私の声明ではなかったことですが、全くそのとおりで、よく言ってくれたと思います。

さてこの声明では、

れいわ新選組は、
ロシア軍による侵略を最も強い言葉で非難し、
即時に攻撃を停止し、部隊をロシア国内に撤収するよう強く求める立場である。

としながら、3月1日から予定されている国会のウクライナ侵略非難決議に反対することを表明しています。そして実際に、れい新は衆議院でも参議院でも同決議に反対し、物議をかもすことになりました。

この件について私は事前には、私の手におえない「兵法」のマターだから、賛否にはこだわらないと言っていました。
実際には、決議に入れ込むべき重要なことと考えていることがあるにもかかわらず、話し合いの場に呼ばれもせず、あとから「イエスかノーか」だけ聞かれたわけですから、反対するというのは納得できることだと思います。
そもそも決議が全会一致かどうかなど、外国に伝わるかどうか疑問ですし、伝わったとして、こっちで言われているほどの意義があるものと認識されているかも疑問です。
れい新がウクライナ侵略を非難していることが伝わらず世間から誤解を受けることを心配した批判に関しては、それこそ「兵法」の問題なので、本部が適宜ちゃんと手をうってくれることを期待します。例えば、英語で声明を発表するとか、ロシア大使館に抗議文を送るとかいうこともあっていいのではないかと思います。

ちなみにちょっと釘を刺しておくと、

一刻も早く異常な事態を終わらせようという具体性を伴った決議でなければ、
また、言葉だけのやってる感を演出する決議になってしまう。

というのがれい新の反対理由ですが、実効性のある具体的行動が示されている決議でなければダメだというのは、そのとおりだしよくわかりますが、だからといって、決議のすべてが実効性のある具体的な話だけでできていなければならないということはないので、その点れい新のみなさんには、あとで自縄自縛に陥らないように注意してほしいと思います。
法律のような拘束力がない国会決議というものをあげる意義がどこにあるのかというと、ひとつは、当面は実現困難かもしれないけど、そういう方向に向けて努力することに意義があるという意味で、「北極星」のような理念を示す意味があると思いますから。

さて、今回のこの声明のどこに混乱のもとがあると私が見ているかですが、やはり次の文章です。

・今回の惨事を生み出したのはロシアの暴走、という一点張りではなく、
米欧主要国がソ連邦崩壊時の約束であるNATO東方拡大せず、を反故にしてきたことなどに目を向け、この戦争を終わらせるための真摯な外交的努力を行う

たしかに、私の名前の薔薇マーク声明でも、「米露の勢力圏争い」という表現で、戦争につながったものとして批判している中身は、かなりの部分、NATOの東方拡大をイメージしています。上で紹介したいろいろな声明も、みんなこの問題を取り上げてアメリカ政府を批判しています。
しかし、世の中を上下に分けた階級的見方で、「下」の民衆の目線からのアメリカ帝国主義批判であるかぎり、そのことがプーチン政権の擁護のようなニュアンスを持つことはありません。

もし反戦運動に立ち上がったロシア民衆への連帯の一文があれば、彼らがプーチン政権を追い詰める、究極には政権を打倒するということに、問題解決の本筋が見えるので、それほど混乱はなかったと思います。
しかし、残念ながられい新の声明にその一文はありませんでした。

世の中を上下に分けて「下」の目線で見る立場性がはっきりしない中で、上記の文章を読むと、これは、国家間パワーゲームのプレーヤーの目線の文章として読めます。アメリカの権力者とロシアの権力者が、それぞれ思惑をもちながら、相手の出方に応じてとる手を決めるやりとりに内在した話になっているわけです。
この論理に内在するかぎり、アメリカによるNATOの東方拡大を批判的に指摘することは、プーチン大統領の罪一等減じるニュアンスを持ってしまいます。

このくだりはおそらく、れい新の山本太郎代表との対談動画に出てきた伊勢崎賢治さんの影響があるような気がします。下にこれを文字起こしした『長周新聞』のサイト記事をリンクしておきます。

つまり、「NATOを1インチも東方拡大しない」とするソ連崩壊時のアメリカ側の約束を破ってNATOの東方拡大が進められてきた。そしてそれがとうとうロシアと長い国境で接するウクライナにまで及ぼうとしたので、脅威を感じたロシアが窮余の一策で軍事介入にふみきったのだ。ここはその気持ちもわかるからとなだめて、ウクライナがNATOに入らないことで矛を収めてもらおう。ウクライナはもともとそういう「緩衝国家」の位置にあるのだから。日本は紛争の当事国の片方に肩入れせず、真摯にこういう仲裁をする外交をするべきだ。——という考え方なのだと思います。

伊勢崎さんは長年世界の紛争現場で活躍した紛争解決のプロです。私のようなどしろうとが、この妥当性について口を出せる立場では毛頭ありません。だからこのこと自体への評論はしないでおきます。

ただ、これは外交技術論です。犯人を刺激せずスムーズに人質事件を解決するテクニックみたいなものです。
ともかくこれ以上人が殺されることを早急に防ぎ、とりあえず銃火を鎮めることは、戦争の渦中の当事者にとっては何よりも大事なことです。
ひとつの政党としては、これを希求することは正しいことだし、そのために専門家たちの諸説の中からどれかを政治判断で選ぶのは当然だと思います。
しかしこれはあくまで一時しのぎの話です。他の政党との妥協後の決議文なら別ですが、妥協前のこちらの立場を一方的に示す段階では、その政党の基本的な立場としてはどうなのかを別途示さないと、いくつかの混乱をもたらすことになると思います。

第一に、伊勢崎さんが従事されたような紛争解決現場のリアリズムは、軍事均衡論のリアリズムに負けず劣らず正義や弱者の犠牲を飲み込むものだという自覚が必要だということがあります。
そもそもウクライナ国家がどうあるべきかということを、当事者であるウクライナの人々の意図とかかわらず、日本の政治の場で勝手に仲裁案としてこしらえることは本来はおかしな話です。
多くの非武装の人々の命を無法に奪ったプーチン大統領の罪が裁かれずにすんでいいのかということもあります。

れいわ新選組というのは、ほかの誰もが現実に妥協して見ないふりをしてしまうような場面で理不尽さをほじくり出してきて、愚直に当事者の怒りを共有してその解消のために叫ぶところに存在意義があるのですから、たくさんの正義や弱者の犠牲を飲み込みかねない外交的解決を言いっぱなしにするだけではすまされないと思います。
れい新のまわりには、愚直に理不尽に怒り、当事者によりそう姿勢に共感して集まった支持者たちがたくさんいます。侵略戦争の犠牲者の報道に接して怒ることは大衆の健全な共感性の現れで、この共感性こそがれい新のこれまでの発展を支えてきたのだと思います。
こうした健全な感覚にとっての違和感を放置するとか、あるいはそれを飲み込むよう迫る態度をとってしまうとかすると、本来固い支援者になるべきキャラクターの人たちを多く失う危険があると思います。

第二に、仮に伊勢崎さんの言う通りに、ウクライナのNATO非加盟と、あとせいぜい東部独立宣言地域の高度な自治で一旦おさまったとしても、それで終わるだろうかということがあります。プーチン大統領は一貫して、ウクライナの現政権を交代させることを要求しているのですから、多くの人はそれだけでは終わらないと見ていると思います。
そういう目から見ると、れい新の声明の上記項目は、それだけでは、西側に非があることを理由に、どれだけでもプーチン政権側の要求を飲む結果になってしまうイメージを払拭できないと思います。

下のリンク先に和訳がある2月21日の演説で、プーチン大統領はつぎのように言っています。

そこでまず、現代のウクライナはすべてロシア、より正確にはボルシェビキ、共産主義ロシアによってつくられたものであるという事実から説明します。このプロセスは実質的に、1917年の革命の直後に始まり、レーニンと仲間は、歴史的にロシアの土地であるものを分離し、切断するという、ロシアにとって極めて過酷な方法でそれを行いました。そこに住む何百万人もの人々に、彼らがどう思うか尋ねた人はいませんでした。

ロシアとその国民の歴史的運命に関して言えば、レーニンの国の開発の原則は単なる間違いではありませんでした。ことわざにあるように、間違いよりもひどいものだったのです。 これは1991年にソビエト連邦が崩壊した後に明らかになりました。

あなた方(ウクライナ人たち)は非共産化を望むのですか。よろしいでしょう、これは我々にあっています。しかし、なぜ途中で停止するのですか。我々は、本当の非共産化がウクライナにとって何を意味するかを示す用意があります。

当然、プーチン大統領にとって「本当の非共産化」とは、共産主義者が無理やり分離したロシアとウクライナを、再統合して「本来の」姿にもどすことを意味するわけです。
完全な併合は、統治に責任を負わなければならないので避けたいところだと思いますが、何でも言いなりにさせる傀儡国家が目指すところでしょう。結局はそこまでいかないと、プーチン大統領は終わらないのだと思います。

ロシアからウクライナを経由してヨーロッパにガスを送るパイプラインから、これまでウクライナはしばしばガスを抜き取っていた上、ロシアは通行料を払っていました。プーチン政権は、ガスの抜き取りはやめさせて、通行料も値切りたいはずです。
また、ロシアにとって唯一まともに外貨が稼げる製造業製品は兵器だと思いますが、ウクライナ軍の兵器体系が西側のものになったら市場を失ってしまいます。プーチン大統領はウクライナの「非軍事化」を要求していますが、一旦現ウクライナ軍を解体したならば、自分達のコントロール下で新しい軍隊を作り、兵器市場にしたいはずだと思います。

以上のように考えるとやはり、誤解と混乱を避けるためには声明文の中に別途、反戦を掲げてプーチン政権と闘うロシアの民衆への連帯の表明と、党の原則的立場に立った究極に目指すところを併記する必要があったと思います。
それは例えば、もう二度とロシアやウクライナの民衆が、権力者の一存で行きたくもない戦争に行かされることもなく、武力に命や故郷や健康を奪われたり暮らしを脅かされたりすることもなく、民主的政体のもと、みんなが人権を保障されて平和のうちに共存できる国際秩序を実現するために、世界の民衆と力をあわせて尽力するといった内容のものです。

そうすると、3月1日の衆議院で決議が行われたあとになされた山本代表の記者会見で、NATOの東方拡大をしないという密約があった証拠について説明するくだりがありましたが、これは、「約束を破るアメリカ帝国主義者は汚い」という批判としては意味のあることだと思いますが、だからといって、ここで密約一般に関して「守るべきだ」とのロジックになってしまったきらいがあるのは、「ロシア寄り」といった誤解を助長するものだったと思います。
れいわ新選組の立場としては、外交に密約などがあることがおかしい。すべての外交は大衆の前に公開し、民意にしたがえというべきだと思います。そして、密約があるかどうかにかかわりなく、軍事同盟には反対だし、勢力拡張政策はケシカランものなのだと言うべきなのだと思います。
なお、この会見で「フランス10」の及川健二さんが、プーチンさんと会えるようになったら何を話すかといったような質問をしてましたが、これに対する答えは、「そんなころには彼は失脚している」と言うべきだったと思います。

これは帝国主義再分割戦争である

最後に、れい新の声明の書き方が混乱をまねきかねないもう一つのことが残っていますので、その説明をします。
れい新の支持者、関係者の中には、私もそうであるつもりですが、上述の世の中を「上と下」に分けて考える階級的見方の人たち、その上で「下」の側につく人たち、要するに「ガチの左翼」がそれなりの量で存在すると思います。
そのような人たちにとって、他国を勢力圏として支配下に置く政策である「帝国主義」は、当然倒すべき「悪」なのですが、その中でも特に多くの人たちに敵として認識されているのは、アメリカの支配者の帝国主義だろうと思います。
ここでれい新声明で、私の薔薇マーク声明で「米露の勢力圏争い」と表現したような、勢力圏争いの獲物にされる側からの目線を感じさせる表現もなく、プーチン政権に対して反戦を掲げて立ち上がったロシアの民衆への連帯の表現もない中で、"ロシア暴走の一点張りではなくて、NATOの東方拡大にも目を向けろ" という表現をすると、本来は伊勢崎さん由来の平和構築のための単なる外交技術論だったものに、アメリカ帝国主義反対の階級的原則論が込められて、ひとつ懸念される受け取り方をされる可能性があります。
というのは、左翼世界の中に一部、ロシアをプーチン政権を含めてまるごとアメリカ帝国主義への対抗者として描き、ウクライナをウクライナ人民衆を含めてまるごとアメリカ帝国主義の側として描く風潮が存在しています。その人たちに、れい新はその見方でOKなんだというメッセージをおくる可能性があるという懸念です。

こうした風潮は全くもって階級的見方ではありません。
階級的見方とはどうであらねばならないか。
例えば、アメリカのラストベルトの白人労働者がトランプ支持になったことをどうとらえるかです。彼らは新自由主義の犠牲になってひどい目にあい、それに対する怒りを、言語されない心の底で抱いているわけです。その怒りは全く階級的に正当なものです。トランプ支持は、その正当な怒りの歪んだ現れなのです。
左翼は、その苦しみや怒りを正当なものととらえて共感し、トランプ支持よりももっとうまくその怒りを言語化して、よりよい解決方向として胸にストンと落ちる説明を考えなければならないのです。最初から敵認定してしまったり、頭ごなしに批判したりしてはいけないのです。

ウクライナは独立以来ずっと、親露派であろうが親欧米派であろうが関係なく、政権についた者は財閥であるオリガルヒと癒着して腐敗してきたのです。そしてその腐敗した政治的経済的少数支配者が、非常に高い貧困率にさいなまれる圧倒的多数の民衆の怒りを買って拒否されるということが、繰り返されてきました。これは本質的に階級闘争なのです。
この本質的には階級闘争であるはずのものが、「親露派vs親欧米派」とか、「ウクライナ系vsロシア系」とかの図式に回収されて現象し、米露の勢力圏争いの駒として利用されてきたと言えます。

2014年の政変も、政権の腐敗に対する大衆の正当な怒りの蔓延があって、それがネオナチの扇動でウクライナ民族主義に回収され、アメリカ政府に利用されたと見るべきだと思います。
そうしてできた政権も、そもそもオリガルヒの人ですし、結局大衆の怒りを買って、選挙で現大統領に負けたわけです。現大統領はロシア系の支持が多い形で選ばれていて、一定の民主主義は機能していたと見るべきです。
しかしそんな現政権もやっぱりオリガルヒと癒着して腐敗し、大衆の階級的怒りに直面して、それを民族主義でそらそうとしました。ロシア系地域自治は守られずに内戦を悪化させ、ネオナチ集団はあいかわらず暴れています。プーチン大統領もさすがに戦争する前にはスパイ網からウクライナ情勢は情報収集はしたはずで、現政権はすぐに倒せると誤認しただけの不人気ぶりだったことは事実なのだと思います。
それゆえ、ウクライナ系住民とウクライナの支配層をいっしょくたにして、まるごとアメリカ政府の手先だとかネオナチだとかとみなすことは間違っているわけです。

ロシア、ウクライナの関係は、日中関係や日韓関係と似たところがあって、スターリン時代に工業化と軍備建設のために厳しい穀物収奪がなされた時期に、ウクライナの農民はそのために飢饉に陥り、250万人から1000万人と言われる餓死者を出しています。こんな歴史を背景にしたら、ロシアへの民族主義的な反発が生じるのは自然なことで、慎重に配慮して寄り添う必要があります。

ウクライナの人たちがウクライナ国軍に入ってロシア軍と戦うことについても、強大な暴力に何の罪もない人々が殺されることに怒りを感じて武器をとって対抗することは、理不尽な支配に人々が殺されることに怒りを感じて武器をとって革命に乗り出すことと本質的に同じ感情によるもので、まずは理解・共感する必要があります。もちろんその一方で、戦えない事情や弱さや殺人への拒否感にも共感し、戦争に参加することを強制することはよくないことだということも確認する必要があります。もちろん、ネオナチ集団が国軍の中に取り込まれていることも見ておく必要があります。
年配の左翼の人は、北ベトナム兵士に関して自分がどういう態度をとったか、パレスチナではどうか。違うとしたら何が違うのか、よく考えて、ちゃんと若い世代も納得がいく、つじつまのとれた答えを出しておくべきだと思います。
ちなみに、『トゥルスアウト』のウェブ記事の下記の小倉利丸さんの訳では、ウクライナ左翼がこの戦争に直面した時の苦渋の選択が報告されています。周囲にけなされながら非暴力を貫いて、侵略の犠牲者を助ける活動に従事する人と、国軍から民兵的にある程度自立した「領土防衛隊」に入って戦闘する人が紹介されているのですが、両者の見解の相違が、互いの敵対ではなくて補完関係になっているところに注目すべきだとしているところが、たしかに注目すべき点だと思います。

ロシア系の人たちについても同じことが言えます。独立を宣言している地域は炭鉱地帯で、ウクライナ政府はずっと、IMFの言いなりになって炭鉱の閉鎖を続けてきました。炭鉱主は独立反対派で、ろくな安全投資もせずにほったらかしていたので、ひどい炭鉱事故が発生してたくさんの労働者が死んでいます。こういったことに対する正当きわまりない階級的怒りがベースになっているのだと思います。それをロシア政府がロシア民族主義として回収し、勢力圏争いのために利用しているのだと見ることができます。
これは私の憶測ですが、独立を宣言した国名に「人民共和国」などとついていることは、上記のようにボルシェビキを呪詛する反共プーチン大統領が喜んでつけたとは思えません。現地の住民たちのソ連「社会主義」ノスタルジーのなせるわざで、そのベースには正当な階級的願望があるのだと思います。

さて、レーニンの言葉をありがたがる必要は何もないと思いますが、誰もレーニンの『帝国主義論』に何が書いてあったかを語らなくなっているのは困ったことだと思います。同書は、第一次世界大戦を、「帝国主義再分割戦争」と規定しています。
既存の帝国主義である英仏米が地球を分割して作り上げた勢力圏秩序に対して、新興の帝国主義であるドイツが勢力圏の再分割を要求して殴り込んできたものだと言うわけです。
これは資本主義の発展が必然的にもたらすものだとされています。
現在でも世界中が資本主義経済におおわれているのですから、事態の本質は何も変わっていません。
アメリカや西欧の既存の帝国主義が作り上げようとしている勢力圏秩序のビジョンに対して、新興の帝国主義であるロシア帝国主義が勢力圏の再分割を要求して殴り込んできたものです。労働者階級にとってはどっちも敵です。

そしてこの戦争に対するレーニンの答えは、「帝国主義戦争を内乱に転化せよ」でした。
もっと現代にフィットしたものにすれば、上で紹介したアメリカ民主的社会主義者の声明の締めの言葉「戦争ではなく階級戦を」ということになります。世の中を縦に割って民衆同士を殺し合わせる戦争の図式を拒否し、世の中を横に割って「下」の連帯で「上」と闘う図式に変えようということです。
実際、世界中でプーチン政権の侵略戦争に反対するロシアとウクライナの人たちの自然発生的な共闘が見られます。戦争の現場でも、戦争を忌避するロシア兵士へのウクライナの人たちの歓待が見られます。その動きを広げて、ロシアで反戦に立ち上がった人たちへの世界の民衆の連帯でロシアの現体制をくつがえすことこそ、この戦争の最も根本的な解決になります。
そしてそれに成功した時、世界中の民衆が、自分の国について何をすべきかに気づくでしょう。

薔薇マークの私の名前の声明についての上の解説でも述べたとおり、日本から東南アジアへの怒涛の企業進出が進んでいます。レーニンの『帝国主義論』では、資本主義が発展しつくすと国内で投資してももうからなくなるので、海外に「資本輸出」するようになる。これが帝国主義をもたらす条件だと論じています。「資本輸出」の典型が企業の進出です。まさに、今の日本を言っているようです。

これについて、ひとつ気がかりなことがあります。
菅義偉首相のころを典型としたこれまでの路線では、企業の海外進出の裏で、国内は産業淘汰を進め、人々の暮らしは全く輸入に頼ることが目指されました。このビジョンが進むかぎり、いざというときにはアメリカに頼るほかはなく、大枠としての対米従属のもとでの、サブの地域帝国主義を目指すことになります。
ところが、高市早苗自民党政調会長のビジョンではここに修正がかかり、経済安保の名の下に製造業の国内回帰や農業自給を志向しています。岸田首相は財政再建では菅さんの路線に立ちながら、高市さんの経済安保についてはかなり積極的に取り入れようとしている志向を感じます。改憲や軍拡についても前向きな姿勢を感じます。
もしこの高市路線的な方向にそって東南アジアに帝国主義圏を築いていったならば、そのうちアメリカ帝国主義の利害と衝突することがあったとき、ある程度アメリカに楯突けるようになっているかもしれません。
そんなことになると、既存の帝国主義秩序に対して、再分割を求めて割り込んでくる新興帝国主義とは日本のことということになるかもしれません。

アメリカ帝国主義が憎いあまり、ロシア現体制をその対抗者として描く人たちの言説は、そのときには、当人は生物学的にこの世になく、階級的見方や社会主義志向のわずかの残り滓は漂白されてしまい、ただアメリカ帝国主義に対抗するものはすべて善というスタンスとして、下の世代に伝わっているでしょう。
そうすると、左翼とか、現体制の批判者とかの立場の側から、日本の帝国主義再分割戦争を推進する動きが現れないともかぎらないと危惧します。
だから、私の名前の薔薇マーク声明で述べた、「日本をプーチン・ロシアのような国にするな」ということを改めて確認しておきたいです。
「今日のロシア帝国主義を許す者は明日の日本帝国主義を許す」なのです。