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メタバースとブロックチェーン | 両者をかけ合わせる意義と主要プレイヤー


先週、Fortniteやどうぶつの森などのサービス上で様々な実験をするMESON Metaverse Labを立ち上げました

おかげさまで早速複数の会社からご連絡を頂き、メタバースクリエイターとのネットワークも作れつつあるので、近いうちに実験のアウトプットを公開していければと思っています。

リリースnoteの中で、モバイル・SNS・クラウドの3本柱で成り立っている今のテクノロジー環境が、MR・メタバース・+AI+Blockchainの3本柱に切り替わっていく、という話をしました。

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このnoteでは、MR、メタバースとも密接に関わってくるブロックチェーンについて、メタバースとブロックチェーンをかけ合わせる意義ブロックチェーン志向のメタバース構築の動きなどについて書こうと思います。

【メタバース構築においてブロックチェーンを活用するメリット】

メタバースを作る上でブロックチェーン技術を活用するメリットは大きく以下の4点だと考えています。

1. ユーザーがコンテンツを作ることへのインセンティブ設計によるスケール

今までもコンテンツをつくったユーザーは一定のリターンを得てきました。
Youtubeしかり、ブロガーしかり。

しかし、ブロックチェーン技術を用いるとそのインセンティブが強化されるだけでなく、まだユーザーが集まっていないサービスの初期段階においてもコンテンツを作るインセンティブを作ることができます。

世界トップVCの一つであるa16zのパートナーであるChris Dixonは、トークンエコノミーの重要な特性の一つはネットワーク効果を超えられることだと言っています。

新しいSNSをイメージしてもらえれば分かりやすいのですが、従来のサービスには、人が少ないサービスには価値を感じづらく利用されづらい、逆に人が多く集まったサービスには価値を感じて利用するインセンティブが強くなる、というネットワーク効果が存在します。

しかし暗号通貨の場合は、ビットコインで初期のマイナーが多額の利益をあげたことからも分かる通り、早く始めた人がより多くの利益を得られるようにインセンティブ設計されています。

メタバース上でブロックチェーンを活用する場合、基本的はゲーム内通貨を暗号通貨として発行することになるので、このような初期インセンティブを発生させ、ユーザーがまだ集まっていない初期状態でも、ユーザーがワールドなどのコンテンツを作っていく状態を作り、結果そのプラットフォームをスケールさせていくことが可能になります

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2. 膨大な演算処理を分散させることで、仮想空間を実現

完全なメタバースの実現には膨大な処理リソースが必要です。

Fortniteで行われたTravis Scottの新曲プロモーション体験空間や、Steve Aoki、Deadmau5のライブにおいても、処理分散のためにユーザーは少人数のグループに分けられ、同時にアクセスしている全ての人たちと交流を持つことはできない状況です。

ブロックチェーンを用いて、エンドユーザーが端末の空きリソースを提供することにインセンティブを発生させて、膨大な演算処理を分散させることができれば、完全なメタバースも構築可能になってきます

実際に、ブロックチェーンとトークンを活用し、トークンと引き換えに余剰GPUリソースを分散的に確保・提供する「Render Token」が非常に注目されています。

公式Medium記事や、彼らのパートナー企業として後述するメタバースサービスであるDecentralandがあることからも、メタバース構築を見据えて「Render Token」を開始していることが伺えます。



3. デジタルデータがコピーできないので、データに資産性を持たせることができる

ブロックチェーンの重要な特徴として、データをコピーできないことが挙げられます。

インターネットは希少性の概念を壊したと言われています。
音楽データも映像データもいくらでも複製可能になったので、そのデータを資産として保有する価値が限りなく0に近くなりました。

ブロックチェーン上のデータはコピーできないため、唯一性を持ち、かつ他のユーザーとトレード可能なため資産性を持ちます。

もっと言うと、そのデータを所有していることはブロックチェーン上で誰でも参照できる形で記録されているので、別のプラットフォームが対応すれば、そのデータ資産をその別のプラットフォームに持っていって利用することも可能になります。


4. トラストレスな価値交換により詐欺や偽装などの問題を技術的に解決

Fortniteやどうぶつの森など通常のゲームにおいても、実際のお金を使ってアカウントやアイテム売買する行為(Real Money Trading:RMT)が行われています。

しかし、そういったRMTでは、

・掲載情報を信じてアカウントを購入したのに、アカウントに入ってるデータが異なるものだった
・不正行為によって複製されたデータが販売された

などが発生します。

また、運営側の障害によってデータが消えた・改竄されるリスクも0ではありません。

それがブロックチェーンを活用すると、どのアイテムが、どれくらい発行されていて、誰が持っているのかという情報が、全員が一つのデータベース(歴史)を参照できる形で管理されるので、上記のような問題は原理上起きなくなります。


【いまメタバース×ブロックチェーンで起きていること】

上記のように、メタバースを構築する上でブロックチェーンを活用することには多くのメリットがあります。

そして、実際にブロックチェーンのシステム上にメタバースを構築する動きはすでに始まっています。

以下では、その主要なプレイヤーたちの動きを紹介します。


【Decentraland】

VRとブロックチェーン技術を組み合わせて、オープンな仮想世界(メタバース)を作るプロジェクトです。

後に紹介するCryptovoxelsと並んで、代表的なブロックチェーン志向メタバースの1つです。

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イーサリアムブロックチェーンをベースとしており、2017年に行われたICO(Initial Coin Offering)によって、約2,500万ドル(86,260ETH、当時のレート)の資金調達に成功しています。

現在はブラウザ版が公開されており、以下のURLからアクセス可能です。

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Decentralandを含めてこのあと紹介するメタバースサービスにおいても、NFT(代替不可能なトークン)である仮想の土地「LAND」を購入し、その上ではユーザーが自由にコンテンツ構築ができ、その「LAND」を他ユーザーに売却することが可能です。

Decentralandでは、すでにこの「LAND」の取引が活発に行われており、ある「LAND」は約2,300万円もの価格で取引されたことがあります(当時のレート換算)。

「LAND」以外にも服や名前などがすでに売買されています。

Decentraland内を巡る動画や画像を見つけたので、これを見ていただくとワールド内のイメージが掴みやすいかと思います。

以下を見て頂くと分かる通り、デジタルな芸術作品が展示されている美術館地区、絵画作品などが展示・販売されているショッピングモール、イベント会場やテナントなどがあるカンファレンスセンター地区、オフィスビルが建ち並ぶオフィス街など、さながら現実世界と同じような世界が構築されてきています。

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Decentraland内にはイベントスペースもあるので、実際に人を集めてイベントを開催するなども可能なようです。

Decentraland内で誕生日パーティーを開いているユーザーもいたようです。

Decentralandは開発ロードマップをTrelloで一般公開しており、これを見るとVR対応はLater(あとで)リストの中にあるので、しばらく先になりそうです。

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ちなみに、Decentraland、「Agora」という名前の非中央集権的な投票システムのDapp(分散型アプリケーション)を使って、Decentralandの方針をユーザーのの投票によって決めています。

将来的にメタバースが社会と同義になると考えると、この政治システムは非常に面白い取り組みだなと思います。

Decentralandについて、もっと詳しく知りたい方は倉田さんの以下記事が非常にオススメです。


【Cryptovoxels】

Cryptovoxelsも、ブロックチェーンを活用した仮想空間サービスです。

表現のリッチさを志向しているDecentralandと比較すると、機能は最低限ですが自由度が高いことが特徴で、アートの文脈で語られることも多いサービスです。

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ブラウザ版だけでなく、複数の3rd Partyのクライアントアプリが公開されており、VR Chatと連携するクライアントも公開されています。

▼ ブラウザ版

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▼ Unity / VRChat client

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CryptovoxelsもDecentraland同様、土地や建物、空間内の絵画やアート作品はNFT(代替不可能トークン)として売買することが可能です。

Cryptovoxels上でのVRコンサートも開催されていたようです。


ミュージアム・オブ・クリプトアート(MoCA)という、暗号通貨やブロックチェーンをテーマにしたアート作品が展示してある美術館も存在します。

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DecentralandとCryptovoxelsを比較すると、Cryptovoxels内での「LAND」売買数が先行する「Decentraland」に追いついてきているようです。

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【OpenSea】

OpenSeaは、Ethereumなどのブロックチェーン上でゲームアイテムやデジタルアートなどを売買するマーケットプレイスです。

OpenSea上には、すでに200種類を超えるカテゴリーのアイテムが掲載されて、アイテム数も400万点を超えています。

OpenSeaは複数のブロックチェーンサービスを横断したマーケットプレイスになっており、Gods UnchainedやCryptoSpellsのようなトレーディングカードゲームから、Axie InfinityやCryptoKittiesのようなコレクタブルゲーム、SuperRareやMakersplaceのようなデジタルアートプロジェクト、ENS(Ethereum Name Service)のようなネームシステムまで、200以上のサービスがOpenSea上で取引されています。

はじめに書いたように、ブロックチェーンを用いると、あるサービスAで獲得したアイテムを、別のサービスBで利用することも可能になってくるので、こういったプラットフォーム横断型のマーケットプレイスの利用は今後さらに増えていくはずです。


【ANGELIUM】

日本発のブロックチェーン志向のメタバース構想。

AV女優とメインでコラボしたり、プロモーションに漫画を使ったりと、アプローチが日本的で面白いプロジェクト。

まだサービスは本格リリースされていないのですが、公式の説明によると、

" エンジェリウムは、インターネット以来の革新技術と言われる「ブロックチェーン技術」に、世界初となる「様々な3D空間技術を組み合わせた仮想世界」の中で、アジア中で大人気の実在の著名セクシー女優達をベースにした「人工知能(AI)」を持つ魅力的なアバターと、バーチャル世界での交流を中心に、オンライン上の仮想世界と、オフラインである現実世界をリンクさせた様々な次世代コンテンツを提供することを目指したプラットフォーム。"

とあり、つまり固有の人格(AI)を持つ自分だけのAV女優アバターを保有したり、売買取引したりするプラットフォームなんですかね?笑

上述のサービスなどに比べると規模も知名度も劣りますが、アプローチが特殊過ぎるので一応ウォッチしています笑


まとめ

メタバースとブロックチェーンの組み合わせは遠い未来の話ではなく、いますでに多くの企業が取り組み始めています。

a16zが言うように、ブロックチェーン上のサービスにおいては初期参入のメリット・リターンが非常に大きいので、こういった動きを今のうちから追っておくのは非常に大事だと思っています。


さいごに

この記事を書く上で、友人でブロックチェーン事業を展開する @taqmiq に色々教えてもらいました。ありがとう。

彼はスマホで無料で簡単に始められるブロックチェーンアプリを公開しているので、ぜひ使ってみてください。


また、弊社MESONでは、Fortniteを始めとしたメタバース化していくゲームプラットフォーム上でのビジネス展開に取り組む「MESON Metaverse Lab」を立ち上げました。

本取り組みに共感し、共にメタバース上での新たなサービスや価値創出を実験していけるパートナー企業、クリエイターを募集しているので興味がある人はぜひ下記noteのフォームからご連絡頂ければ幸いです。



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