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本多議員意見書による深刻な告発、あるいは立憲民主党を存亡の危機から救う唯一の方法について

立憲民主党の「性犯罪刑法改正に関するワーキングチーム」で、「50歳近くの自分が14歳の子と性交したら、たとえ同意があっても捕まることになる。それはおかしい」と本多平直衆院議員が発言したとされる問題についての続報です。

ご存じの方も多いと思いますが、7月23日、本多議員から反論とも言うべき、意見書(PDF)意見書概要(PDF)経緯説明(Twitterなど)が発表されました。

本多氏の言い分が正しいのか間違っているのか、極めて重要な文書ですので、立憲民主党の調査報告書と併せて、皆様ぜひとも目を通していただければと存じます。

本多氏の意見書の骨子を(私の責任で)列挙するならば、

①弁明の機会が与えられず、調査・処分手続きが党規約及び当倫理規則違反である。
②発言根拠へのアクセスが拒否されるなど、事実認定に大きな問題がある。
③14歳との「性交」とは発言していないのに、マスコミに歪曲された形で漏洩された。
④委員会の中立性が担保されていない。
⑤党内の立法プロセスにおける議論で処分される前例を作ってはならない。

ちなみに、以上の論点は、私が過去2回の記事で、調査報告書の致命的欠陥として指摘したことと、おおむね合致しております。併せて私の記事もご参照いただければ、本多氏の主張の裏付けにもなると思います。

本多氏による事件の経緯説明

個人的により興味深く感じたのは、本多氏による今回の事件の経緯説明の方です。意見書からも補足しつつ、私の責任において時系列で整理します。

・5月10日。年齢差の離れた恋愛は絶対に存在しないと主張した島岡教授に対して、本多氏は「例えば(実在の)私が恋愛の存在を主張しても、それを認めないのか」との趣旨の質問を行う。

・6月3日朝突然、党所属全国会議員に対しWT中間報告案が一斉送信され、その中に「50代と14歳の性交の発言」が掲載されていた。この報告案はイレギュラーなことにWTでの事前確認・了承を経ておらず、したがってメンバーである本多氏の預かり知らぬところで作成されたものだった(意見書 p.8)。

・自分の発言だと感じた本多氏は、寺田座長に対して、「こうした発言をした記憶はない」「音声データを聞かせてほしい」「もし言ったとしたら本意が伝わらない表現なので撤回したい」旨寺田座長に要求したが、拒否された

・6月4日、発言が匿名報道される。福山幹事長らと対応を協議。本多氏は音声データの確認を強く求めたが、「有無が不明」「5月10日のものはない」「あるけれど聞かない方がいい」などと返答が変遷し、確認することができなかった。

・6月7日夜。翌日実名報道があるとの情報が入り、本多氏は記者会見などで真意を説明したいと言ったが、福山幹事長から強く止められ、発言をそのまま認め、お詫び、撤回するコメントを出すことを提案され、やむを得ず了承し、その場で幹事長から厳重注意を受けた

 ・その後、ハラスメント防止対策委員会で事実検証されることとなり、委員長他三名の弁護士によるオンラインのヒアリングが一回、委員長による対面の面談が一回行われた。ヒアリングの際、本多氏は金子委員長からは「処分を前提にした検証ではない」旨、聞かされていた

・7月12日、報告書が党に提出される。枝野代表は本多氏に対して、大変に厳しい内容であることを告げ、明確な理由も報告書の開示もないまま、離党を強く促した。本多氏は離党を断った。

・7月13日、1年間党員資格停止処分の提起が(福山幹事長から)なされた。

以上が本多氏による経緯説明の概要です。

これは本多議員による被害告発である

これは、「経緯説明」というよりも、もはや「被害告発」でしょう。

もちろん、これはあくまで本多氏の証言であって、事実であると確定した訳ではないことに、我々は留意が必要です。

しかしもし、本多氏の告発内容が事実だとするならば、枝野代表・福山幹事長・寺田座長の3人は最低でも離党が適当ということになってしまうはずです。前回記事でも述べましたが、立憲民主党の党規約第48条への重大な違反だからです。

1.党員は、政治倫理に反する行為、党の名誉及び信頼を傷つける行為、ならびに本規約及び党の諸規則に違反する行為を行ってはならない。

寺田座長らが虚偽の発言を捏造してマスコミにリークしたことは、(特定の政策を推進するために)党の名誉を切り売りした行為といえましょう。また党規約に定められた手続きに違背し、必要な手続きや推定無罪など民主主義の原則を破て一政治家の政治生命を途絶させようとした行為は、立憲民主党の名誉および信頼を根本から毀損したことになります。

実際Twitter上では一般有権者、中でも立憲民主党の支持者による「立憲主義に反する」との懸念の声は決して少なくありません。

逆に、本多氏の言動が報告書に書かれたとおりであり、立民執行部に何の落ち度もなかった仮定しましょう。

そうだとすれば、本多氏は(逆恨みによって)立民執行部に対して誹謗中傷を行って、彼ら幹部の政治家としての名誉と、党としてのアイデンティティを著しく毀損したことになります。この「経緯説明」は、「14歳との恋愛」という本多氏の元の発言内容よりも、はるかに深刻な「問題発言」のはずです。

現在のところ、立憲民主党および当事者・関係者からは、本多氏の「問題発言」に対する公式の批難声明は、一切出されておりません。公式声明までに時間がかかるのかもしれませんが、本多氏の発言の深刻性・緊急性に鑑みると、やや違和感を覚える対応ではあります。

ともあれ本件に関して、寺田座長・福山幹事長・枝野代表の3人の被告発者は、自らの処分が下される前に、弁明する権利を有していることは強調しておきます。

立憲民主党の存亡の危機

先のNote記事で、私は「今はまだ引き返せる」と書きました。

しかし、本多議員の「経緯説明」によって、事態は大きく変わりました。

客観的に見て、本多議員か、枝野代表・福山幹事長・寺田座長の3人、どちらかが離党せざるを得ないところまで事態は進行している状況です。

念のために指摘しておきますが、経緯説明そのものを理由として、立憲執行部が本多氏を一方的に処分することは決して許されません

それを処分理由とするなら、それが「虚偽告発」であることを、執行部側が立証する必要があります。

本多氏に対する処分を正当化するためには、執行部が責任を持ってあらゆる記録を公開することは絶対条件です。

そうではなく、正常なプロセスを経ずに専断的に処分を行えば、立憲民主党はその結党理念そのものを自ら失い、急速に支持が失われることになってしまいます。

これまで立憲民主党は、モリカケサクラをはじめ、政権の情報隠蔽や日本国憲法への侵犯を批判し、必要な文書は開示せよ、黒塗りをやめろと追及してきました。

その政党が、自ら情報を隠蔽し、あるいは積極的に開示することなく、「手続き論はもはやどうでも良い」(北海道新聞)と報じられたように一人の議員の政治生命を絶ってしまえば、与党に対する立憲民主党の優位性はすべて失われることになってしまいます。

自民党と同じ事かそれ以上の立憲主義への侵犯を行うのであれば、積極的に立憲民主党を政権の座に着かせる意味はもはや存在しなくなります。

とはいえ、このまま本多氏の処分が行われず、執行部の責任も問われないという玉虫色の決着も、いまとなっては不可能でしょう。

これまで本多氏やその周辺を批判してきた勢力は、この決着に決して納得するとは思えません。

本多氏の(捏造された疑惑のある)言動のマスコミへのリーク、情報非公開などの執行部の不誠実な対応、そして何よりも例の致命的欠陥のある調査報告書によって、立憲民主党に対する信用は、すでにほぼ失墜しつつあります。

今や立憲民主党は存亡の危機なのです。

立憲民主党の危機を救うために行うべき唯一の方法

いま、立憲民主党が危機状態にあるということは、執行部は気づいていないかもしれません。

しかし、その原因を突き詰めると、執行部が情報開示に消極的だったことにあります。

たとえば、中間報告案において使用された「性交」という単語が報告書から抹消されたにも関わらず、執行部はマスコミに対して未だに訂正を行っていません。そのため、現在でも多くのマスメディアが「性交」発言として報道を行っており、多くの有権者が勘違いしたまま本多氏を非難しているという構図が作られています。

中には「ロリペド野郎」「(本多氏が)14歳とセックスした」などと完全に事実誤認のまま本多氏を侮辱する発言も散見されます。

さらに言えば、5月10日のワーキングチームの録音録画・議事録が完全に公開され、問題発言が確定されていれば、処分するにしてもしないにしても、支持者のコンセンサスを得ることはもっと容易だったはずです。

また、第三者委員会のメンバーが公開されていれば、その中立性に疑問を呈する声もより少なかったはずです。

この危機を乗りこえるためには、原理原則に立ち戻り、徹底して事実やデータを公開することしかありません。そして、その事実に基づいて、および「事実を公表しない」という事実に基づいて、本多議員および福山幹事長・枝野代表・寺田座長の4人の処遇を議論するしかありません。

執行部は、少なくとも、現在すでに存在が判明している以下の情報を一般公開すべきです。それは、即座にできるはずです。

・6月3日に国会議員に一斉送信された「中間報告案」
・5月17日以降のWTの全録音録画(および議事録)データ
・第三者委員会のメンバー

さらに、調査に多少の時間はかかるかもしれませんが、以下も明らかにすべきでしょう。

・5月10日の録音・録画および議事録の有無と、存在しない場合のその理由。
・存在する場合、議事録および録音録画データ。
・手元に存在しない場合、zoom社への録画ログ開示請求とその結果。
・本件に関わる本多氏と党執行部・寺田座長のやりとりの一切。
・中間報告案で使用された「性交」という単語が、報告書からは抹消された経緯についての説明。

また、最後の点に関して、執行部としてはマスメディアに対して訂正・謝罪を行う必要があります。そうでなければ、「性交」という単語が使用された【生の証拠】を出すべきです。

本多氏側もまた、公開すべき情報があります。

・寺田座長や執行部とのやりとりの記録(録音・メール)

この情報公開の提案に対しては、どちらの立場の有権者も反対する理由は一切存在しません(もし反対するとすれば、おそらくその人物は利害関係者です)。

幹事長以下執行部も、本多氏も、自らの言動の正統性に自信があるならば、この情報公開に反対する理由は存在しないはずです。

すべての材料を議論の俎上に載せ、判断できるようにすれば、党員・支持者の間で熟議がなされ、自ずと道は開けます。

いま現在進行形で、本件について有権者のあいだで健全な形で民主主義的な熟議が醸成されつつあります。情報公開によって、それをさらに深めるのです。これがボトムアップの本来の姿ではありませんか?

その情報公開に対して抵抗する人物や組織が存在するならば、その反民主主義的・全体主義的な姿勢が可視化され、その正統性が失われ、やはり事態の解決に近づくでしょう。

公正性と公平性を守り抜く。弁明の機会は平等に与える。

これが、立憲民主党を立て直す唯一の方法です。

読者の皆様へのお願い

私のご提案に賛同いただければ、ぜひ本記事を拡散してくださると幸いです。

私以外にもnoteやtogetterなどで本件に言及している方々がいます。中には私が把握していない議論もあるかもしれません。

この件についての熟議に是非ご参加ください。

また、自分が支持する議員に、ぜひとも以下のことを働きかけてください。

立憲民主党の国会議員・地方議会議員の方々におかれましては、党派性や人間関係に引きずられることなく、第三者委員会調査報告書および本多氏の意見書・経緯説明を読み込んで事態の把握に努め、熟議にぜひ参加し、声をあげていただきたくお願い申し上げます。

議員ら関係者の一部は、自分たちは方舟に乗っており、安泰だと信じて高みの見物をしているつもりかもしれません。

しかし、あなた方が乗っているその船が沈没しかかっていることに気がついてください。そうなれば、あなた方の政治生命も危機に晒されるのです。

私たちにはそう政治家に働きかけ、要求する権利があります。

なぜなら私たちこそが主権者であり、議員たちは私たち一人ひとりの代表だからです。

もしも、皆さんの支持する政治家が、不当な処分を下されようとするなら、それはあなたの一票が不当な扱いを受けることと同義です。

私たち主権者は、日本国憲法が私たちに保障する自由をあらゆる全体主義の侵略から護り、民主主義を不断の努力によって保持する責任を負っているのです。

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