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異常な超過死亡とその原因 ~人口動態統計の分析~

※この記事は7月29日に初公開しましたが,その後いただいたコメント等も踏まえて改訂・加筆し,8月17日に再公開しました.改訂部分については,本記事の末尾に記載の【改訂箇所】をご覧ください.

【本記事の概要】

厚労省が発表している人口動態統計に基づいて,2021年4, 5月の超過死亡をそれぞれ3,169人,5,628人と算出し,国立感染研の分析と比較します.続いて,これらの超過死亡の原因を探るため,「コロナ死」,「医療崩壊による死」,「自殺」,「ワクチン死」の順に検討します.

【超過死亡の算出】

厚労省は7月27日に,今年5月分の人口動態統計速報を公表しました.

下図はその中から引用したもので,今年(赤)の全死者数の推移を,昨年(青)と比べています.

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特に5月は,昨年に比べて1万人以上死者数が多く,118,634人という数字です.ただし,このデータだけでは,単に確率的変動の範囲である可能性は否めません.そこで,もう少し詳しく分析してみましょう.2012年(東日本大震災の翌年)から2020年における各月の死亡者数データを,厚労省の「人口動態統計月報(概数)」から入手し,

https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html

2021年のデータと合わせてプロットしました(速報値とうるう年の扱いについては,記事後半の【補足①】,【補足②】をそれぞれご覧ください).

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図1

注目してほしいのは,2021年4, 5月の死亡数だけ,過去の傾向から予測されるよりも異常に大きい点です.高齢化社会に伴い,日本の死者数は長期的に緩やかな増加傾向にあります.実際,2012-2020年のデータから求めた近似直線(図中の青破線)は,全て右肩上がりです.白丸(〇)は,この近似直線から計算される,「2021年の各月の予測死亡数」を表しています.ただし,予測には,「95%信頼区間」と呼ばれる「幅」を持たせています(白丸を通る縦棒).2020年以前のデータにバラつきが大きい1, 2月の場合には,予測の幅が大きく,逆にバラつきが小さい4, 5月の場合には,予測の幅が小さくなります.

そして,2021年の実際の死亡者数(赤丸)を見ると,1, 2, 3月は信頼区間内であるのに対し,4, 5月は信頼区間を大きく超えていることが分かります.これが,「2021年の4, 5月は異常」と述べた精確な意味です.信頼区間の上限値をどれだけ上回ったかを表す「超過死亡」の値は,

4月:3,169人

5月:5,628人

です(予測死亡数,信頼区間,超過死亡については,記事後半の【補足③】をご覧ください).4, 5月に超過死亡が大きくなることの異常性については,国立感染症研究所に取材した朝日新聞の記事でも指摘されています.

超過死亡は冬場に季節性インフルエンザの影響などで多くなることはあるが、4~5月に多くなることはほとんどないという。

https://news.yahoo.co.jp/articles/5a62426088d5bf411ffc1e018c48713809b51317

また,同記事に次のように書かれています.

分析結果によると、今年1~5月の超過死亡は全国で5076~2万4300人。5月がとくに多く、東京(61~451人)、大阪(865~1300人)、兵庫(514~834人)など30都道府県が直近5年間で最多規模となった。

国立感染研は,2021年1-5月の超過死亡を5,076人~24,300人の範囲と推定しています.上述の分析によれば,2021年の超過死亡は合計8,797人(= 3169 + 5628)であり,国立感染研が示す範囲内にあります(範囲の内,下から19%のところに位置します).

では,この異常に高い超過死亡の原因について,考えていきましょう.


【超過死亡の原因の検討】

(1)コロナ死

世界各国のコロナ関連データを扱っているサイト

https://ourworldindata.org/covid-cases?country

から,日本の累計コロナ死者数(100万人当たり)の推移が入手できます.

累計死者数

この図を用いると,速報値としてのコロナ死者数が求まります(A).また,1-3月については人口動態統計月報が発表されており,「特殊目的用コード22000」に分類されている死者数が,より正確なコロナ死者数を表します(B).これらを表にまとめました.

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そもそも,4, 5月のコロナ死者数は,超過死亡(4月: 3,169人,5月: 5,628人)より少ないことが分かります.また,1, 2月はコロナ死が多いにも関わらず,超過死亡がありません(※超過死亡の値は算出方法によって異なるため,あくまで本記事で求めた値に基づいて話を進めます).特に,1月のコロナ死者数は5月と同程度です.このことから,4, 5月の超過死亡への「コロナ死」の寄与は,あったとしても極めて限定的と言えます.ただし,医療崩壊が起きた場合は例外的なので,これについては次の項目で考えます.

コロナ死が超過死亡に寄与しにくい理由については,下の動画(6:00~)の分析が参考になります.

https://www.youtube.com/watch?v=YcbRUHjwWMk

端的に言えば,「肺炎に分類される死者数が減少しており,これがコロナ死に分類される死者数の増加を打ち消す」ということです.実際,2020年を2019年と比較すると,「肺炎死者数の減少分(=17,703人)」が「コロナ死者数の増加分(=3,466人)」を大きく上回っています.

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai20/dl/h6.pdf

また,厚労省災害派遣医療チーム事務局の近藤久禎次長は,2020年11月8日~2021年1月21日の札幌市のデータを分析したところ,コロナ死者の多くは「最後の一滴死亡」に当たり,45 %は元から寝たきり状態だったと述べています.

https://toyokeizai.net/articles/-/421720?page=3

つまり、コロナ死亡患者の多くは、さっきの5類型でいえば、➃「最後の一滴死亡」に当たるということです。通常の年でいえば肺炎やインフルエンザで亡くなったケースです。
元々状態がよくなくて最後の死因がたまたまコロナだった死亡(「最後の一滴死亡」と呼ぶ)

(2)医療崩壊による死

大阪府は3月に重症病床数を大幅に減らしたため,4, 5月に医療崩壊の事態を招いており,療養・待機中に亡くなったコロナ患者は19人と報じられています.

https://mainichi.jp/articles/20210526/ddm/005/070/046000c

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210514/k10013031581000.html

同様の事態は,隣接する兵庫県でも起きています.

https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202105/0014373049.shtml

医療崩壊は,コロナ以外の患者にも大きな影響を与えます.実際,大阪府と兵庫県の超過死亡は他県に比べ突出して多く,国立感染研が算出した超過死亡の推定範囲は以下の通りです.

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https://exdeaths-japan.org/graph/weekly

https://news.yahoo.co.jp/articles/5a62426088d5bf411ffc1e018c48713809b51317

括弧内の値は,各範囲の下から19%の値を示しています.簡単のため,この値を本記事における超過死亡と見なします(【超過死亡の算出】項を参照).ここで,「大阪と兵庫の超過死亡は,全て医療崩壊が原因」という極端な仮定をおいたとしても,超過死亡への医療崩壊の寄与

4月:514人(= 335 + 179)

5月:1,523人(= 948 + 575)

に留まります.つまり,超過死亡の大部分は,医療崩壊では説明がつきません.

(3)自殺

「自殺者数が増加して超過死亡にも寄与したのでは?」という意見がありましたので,検証しておきます.自殺者数のデータは,警察庁のWebページ 

https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/jisatsu.html

にまとめられています.2021年の速報値は,ページトップのPDFにまとめられています.2016-2020年のデータはこちら(16頁)

https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/jisatsu/R03/R02_jisatuno_joukyou.pdf

から入手し,表にまとめました(2021年の速報値は,随時更新されて値が若干変わるため,最新情報は警察庁のページをご覧ください).

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例えば5月の自殺者数を見ると,2021年は2016-2020年の平均より下回っています.つまり,5月の超過死亡に自殺者数は全く寄与していません.4月は平均を41人上回ってはいますが,数千という超過死亡を分析する際には影響を与えないスケールであることが分かります.

(4)ワクチン死

厚労省資料によると,7月25日までに報告されたワクチン接種後死亡事例は,834件あります.ただ,厚労省に報告するかは医師の判断に任されているため,「報告数」と「実際の数」は乖離していることが懸念されています.厚労省の第4回医薬品等行政評価・監視委員会において,委員長代理であり薬害研究の第一人者である佐藤嗣道准教授(東京理科大学薬学部)は,「実際の数は報告数の10倍くらい高い可能性」を指摘しています.また,米国では「ワクチンによる死者は,接種後3日以内に限っても45,000人以上」と証言する内部告発者が現れ,この証言に基づく訴訟が起きています.これらについては下の記事に詳しくまとめていますので,先に目を通していただくことをお勧めします.

 日本ではワクチン接種は2月17日に開始し,1日の接種数(日本人100人あたり)は下図のように推移しています.接種数は,月を経るごとに増加していることが分かります.

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https://ourworldindata.org/covid-cases?country

超過死亡が3→4→5月の順に増加したことや佐藤嗣道氏の指摘を考慮すると,「ワクチン死者の超過死亡への寄与」が考えられます.4, 5月の超過死亡から,医療崩壊の寄与(の上限値)を差し引くと,6,760人(= 8797 − 514 − 1523)となります.仮に,これがワクチンによる死亡だったと想定してみましょう.7月25日時点の累計ワクチン接種数は,5月31日時点の4.9倍であることを考慮すると,

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7月25日時点のワクチン死者は単純計算で33,000人となります.ただし,「接種から死亡までの経過日数」や「死亡率の年齢依存性」が考慮されていないことに注意して下さい.

もう一つ,別の方法でも試算してみましょう.5月のデータを用います.厚労省が7月21日に発表したデータによると,接種後の死亡として報告された事例の内,5月に死亡した事例は188件で,事例番号は以下の通りです.

No. 29, 31, 33-39, 41-43, 45, 47-55, 57, 59-112, 114-117, 119-164, 166-168, 170, 171, 178-180, 183, 184, 190-197, 205, 207, 208, 211-214, 216, 224, 225, 227, 229, 251, 253,  259, 264, 286, 290, 305, 315, 316, 321, 336, 337, 339, 345, 410, 411, 417, 421-423, 430, 432, 478, 491, 547, 551, 556, 560, 579, 704, 715

https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000809324.pdf

5月のワクチン死者数は,超過死亡から医療崩壊の寄与(の上限値)を除いた4,105人(= 5628 -1523)に等しいと仮定すると,報告数の22倍(= 4105 ÷ 188)に上ります.よって,7月25日時点では報告数は834件であるので,累計ワクチン死者数は18,000人(= 834 × 22)と概算されます.ただし,この方法では,ワクチンの接種体制によって報告率が異なるという「報告バイアス」は考慮されていません.

大規模接種のところと職域接種のところと個別接種のところでは、随分とその後の副反応疑いの拾い方が異なります。患者さん、接種者である医療者との距離感が随分違っているのです。個別接種であれば非常に細かなところまで対応でき、患者さんの言葉をしっかり聞くことができるのですが、大規模接種でありますと、距離や時間という物理的原因や心理的原因が横たわっています。 (予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会)

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_19852.html


以上2つの試算は,「コロナ死,医療崩壊による死,自殺では説明がつかない超過死亡は,ワクチンが原因である」という消去法的仮定に基づいています.もちろん,他要因の見落としがあるかもしれません.しかし,ワクチン死者数が上記試算のたとえ1/10だったとしても,史上最大の薬害事件が進行していることになります.病気を患っている人に投与する治療薬に比べて,健康な人に投与するワクチンは,はるかに安全に設計されていなければなりません.4,000万回接種された豚インフルエンザワクチンは,53人の死亡者が出て中止されたという事実に,改めて注意が必要です.

「超過死亡の大幅増」と「ワクチン接種」の因果関係を調べることは,難しいことではありません.例えば,下記ブログで提案されている方法や,「接種群と非接種群の死亡率を比較する方法」があります.

このような調査を,私達は国に要求する必要があるのではないでしょうか?


【補足①:速報値の扱い】

「速報値」は当該月の2か月後に発表されるのに対し,「概数」の発表は5か月後です.そこで,2021年の1, 2, 3月にのデータついては,現時点(8月15日)ですでに公表されている「概数」を用いました.一方,2021年の4, 5月については「速報値」を用いましたが,「概数」と「速報値」にはズレが生じるため,以下に示す2020年の死亡数データに基づいて補正しました.

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この表のように,「速報値」は「概数」より僅かに過大報告される傾向があり,平均をとると

概数  =  速報値  ×  0.991

となります.そこで,2021年4, 5月の実際の死亡者数は,速報値の0.991倍としました.

【補足②:うるう年の扱い】

2月の死者数の分析には,うるう年を考慮する必要があります.2012, 2016, 2020年2月の死亡者数については,他の年と同じ日数で比較するために

補正値  =  概数 ×  28/29

と補正して,図1にプロットしました.

厚労省が概数,速報値として公開している各月(2012-2021年の1-5月)の死者数データは,補正値と共に以下のExcelファイルにまとめてあります.

【補足③:予測死亡数,信頼区間,超過死亡】

「超過死亡」の考え方を簡単に説明します.まず,過去のデータを用いて,その年の「予測死亡数」を推定します.予測にはある程度の幅を持たせ,この幅は95 %信頼区間と呼ばれます.超過死亡は,

超過死亡 = 観測された死亡数 - 95 %信頼区間の上限値

と計算します.ただし,予測死亡数の算出には様々な方法が提案されていて,例えば米国疾病予防管理センターはFarringtonアルゴリズムを,欧州死亡率モニターはEuroMOMOアルゴリズムを用いています.国立感染研では,超過死亡の推定に幅を持たせており,

超過死亡の下限値(XX)= 観測された死亡数 - 95 %信頼区間の上限値

超過死亡の上限値(YY)= 観測された死亡数 - 予測死亡数

としています.また,「月ごとではなく週ごとに超過死亡を分析する」,「日本全国の超過死亡を直接推定せず,都道府県ごとに求めて合計する」という違いもあります.詳しくは国立感染研のサイトをご覧ください.

https://www.niid.go.jp/niid/ja/from-idsc/493-guidelines/9987-excess-mortality-qa-201130.html

信頼区間の求め方については,こちらのブログがわかりやすいと思います.

【改訂箇所】

7月29日に公開したオリジナルの記事では,「2016-2020年の各月における死亡者数の平均値」を,2021年の予測死亡数としていました.

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また,2021年のデータには「速報値」を,2020年以前のデータには「概数」を用いていました.この方法で求めた2021年5月の超過死亡は,7,112人でした.

ただ,本記事の冒頭で述べたように,日本の死亡者数は長期的な増加傾向があるため,

■ 2012年からのデータ

■ 増加傾向

を考慮した分析を行ったところ,超過死亡は6,696人と僅かに下方修正されました.さらに,

■「速報値」と「概数」のズレ

も考慮したところ,本記事で述べたように超過死亡は5,628人と求まりました.加えて,改訂記事では「医療崩壊による死」も検討しました.





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