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羅小黒戦記という作品に人生を狂わされた私とこれからについて

どうせ長くなるので、この際はじめに言わせていただきたい。
全人類よ、羅小黒戦記を見てくれ。

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よしきた川崎チネチッタで席押さえたぜイエイ、という人は速やかにブラウザバックしていただいて構わない。

羅小黒戦記?はて?といった調子の多くの読者様方には、どうか私のこの駄文に付き合ってはいただけないだろうか。

まず羅小黒戦記とは如何なる物かについて紹介していこうと思う・・・と、普通なら言うところなのだろうが、Wikipedia見てくれ。そう、正直今更私が下手くそなあらすじ紹介やネタバレ考察を垂れ流しても仕方がない。そんなもの、映画のレビューに手練れた猛者の方々が、もう散々仕事をしてくれている。私が手垢まみれの感想や、「羅小黒戦記をもっと楽しむ10のポイント」なんかを羅列するのは今ではない。

そもそも、それを私が書こうとすれば、書きたい内容のあまりの膨大さ故、この記事を公開する前に羅小黒戦記そのものが公開終了しかねないのである。

しかし、何の説明も無しに私がお気持ち表明を始めたとて、少ない読者がただ無意味な置いてけぼりを食らうだけなので、本当に触りだけ説明させてもらうとしよう。

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羅小黒戦記(ろしゃおへいせんき)とは、2020年11月7日に日本語吹き替え版の上映がスタートした中国のアニメーション(正確にはその劇場版)である。黒い子猫の妖精で主人公の小黒(シャオヘイ・日本で言うところの妖怪のような存在)が、人間の開発によって住む森を奪われ、新しい居場所を探す旅の途中で様々な人間や妖精と出会う。人間界と妖精界(自然界)の間で起こる軋轢に揉まれ、多くの人間と妖精を巻き込む戦いの中で、自分の未来を選択していくというアクションファンタジーである。


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一見ありがちな舞台設定なのだが(私も初見の印象は、現代中国版平成たぬき合戦ぽんぽこだった)、絵柄のポップさからは想像のつかない変態的とも言える激しいアクションシーンや、映画としての構造の秀逸さ、細やかに描かれた各キャラクターが見せる表情や内面の複雑さなど、とにかく褒められない部分がない作品なのだ。

まず、今までの人生の中で、中国アニメというものに一度でも触れたことがある人間がどれほどいるだろうか。現代日本では相当少数派と言えるだろう。かく言う私もご多分に漏れず、中国アニメには全く触れたことがなかった。

映画視聴前に予備知識をこさえるかこさえないかは完全に個人の好みによるものだと思うが、どちらにせよ楽しめる事に変わりはないので安心して劇場に足を運んで欲しい。

そもそも私が羅小黒戦記と出会ったのは、浦和パルコのユナイテッド・シネマで劇場版鬼滅の刃無限列車編と、劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデンをはしご見した際の上映前予告だった。作画がきれい。キャラデザが良い。声優陣がかなり豪華。ストーリーはどんなかしら、気が向いたら見に行ってみよう、のノリで上映開始4日目に予備知識ゼロで見に行って、今日までの間に劇場に40回以上も足を運んでいる異常事態なのである。

そして、初めて羅小黒戦記を見た日の2週間後にアニメーター専門学校の説明会に赴き、その4日後には願書を提出する異常事態ぶりだった。晴れて私は、春から5年ぶりに学生になる。

高校卒業時は、NYにある美術大学に進学して映像美術を勉強し、ゆくゆくは映像関係の仕事がしたいと本気で思っていた。しかしこの数年間で数々の挫折を繰り返しているうちに、将来の展望や方向性を完全に見失っていた私だったが、軽い興味本位で見に行った羅小黒戦記が、これからの人生の指針になろうとは、誰が予想できただろう。

私は元来、仕事が無い時期3ヶ月で1000話以上のアニメを視聴する程度のアニメヲタクではあったものの、アニメ業界に従事してみたいと思ったことは一度として無かった。

絵を描くこと自体も、好きか嫌いかで言えば好きだし、絵心の方も有るか無いかで言えばある方だと言わせてもらいたいが、特別絵を勉強していた訳でも、日常的に絵を描いてきた訳でも、別段上手い訳でもない。

そんな私が、半ば強迫観念的にアニメーターになるしかないと思うほどに、羅小黒戦記が私に与えた衝撃は絶大だった。

とにかく私は物語が好きで、アニメも映画も小説も、たまには漫画にもたくさん触れてきた。そして私はガチの良作ファンタジーに出会ったとき、自分の人生のあまりの退屈さに絶望し、上の空になり、あらゆる事が手に付かなくなる症状を極たまに発症する。

それを代表する作品が、みんな大好きNARUTOなのだが。NARUTOが日本を代表する名作なのはもちろんのこと、15年も連載した超大作ファンタジーであり、ナルトとサクラとサスケと一緒に大人になったと言っても過言ではない世代ど真ん中の私が、1ヶ月でアニメ全720話を一気見し直したとき、忍者もチャクラも暁も存在しないこの退屈な現実世界に絶望するのも予定調和と言ったところだろうか。

それが羅小黒戦記ときたら、たった2時間にも満たない映像で、NARUTOと同じか、あるいはそれ以上ひどい絶望に私を叩き落とすトンデモクソデカ沼作品(あまりにもチープすぎる表現で失敬)だったのである。

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初めて見た日から1週間ほど、血反吐を吐きながら視聴を重ね、その深すぎる沼に足を取られ続け、あまりの苦しさに発狂しかけた私は、まだまだ続いていくであろうこの作品(次回作が決定している)の作り手側になるしか、この苦しみから解放されることはないと確信してしまったのだ。

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話を脱線させる。私はそこそこ好きな作品や、単純に面白いと思った作品は軽率に人に勧めるのだが、心の底から愛している作品を他人と共有するのが非常に苦手である。おそらく、所謂同担拒否といった感情に近いのかもしれない。

そして、それはファンタジーに限定される。単純に私がファンタジー好きなのはあるが、一度深くその作品を愛してしまうと、本気でその非科学的な世界を自分も生きていると思い込んでしまう、相当イタい脳ミソの持ち主であるからだ。

そこに、私以外にその作品が好きだという第三者が介入すると、急に現実が見えてしまう。故に、他人の感想や考察・二次創作の類をネットで漁ることは激しい自殺行為であるため、ほとんどしない。

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そんな私が何故、こうして羅小黒戦記を見ろと声高に文章を認めるに至ったか。私による宣伝効果が本当に微力であったとしても、やはりこの歴史的名作を私のつまらない独占欲(?)で、これをきっかけに羅小黒戦記を見てくれるかもしれないあなたの機会を奪うのは、間違っていると思い直したためだ。あとは、私自身のこれからをちょっとだけ周知したいと思ったからである。

私の意識として、この文章は、私という存在をなんとなくでも認知している人に向けて書いているつもりではあるのだが、全人類に見て欲しい(否、見るべき)と思っている気持ちは本当なので、何度だって言おう。全人類よ、羅小黒戦記を見てくれ。

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そんなこんなで、上映終了間際の、上映館もかなり少なくなったタイミングでの宣伝になってしまったことは、深くお詫びしたい。

東京またその近郊では、新宿バルト9、池袋HUMAXシネマズ、川崎チネチッタ、その他埼玉でもいくつかの劇場でまだ上映しているので、是が非でも劇場に足を運んで欲しい。交通費は後悔させないと声を大にして言おう。

上映館はこちらで確認できるので、お近くの劇場を探して欲しい。

私がこんなにも劇場での視聴を勧める理由は、単に音楽が良いとかアクションシーンがかっこいいとかは言わずもがなである。そして、劇場での上映が終了した後、また見られる機会が簡単に訪れるかどうかが不確実だから、というのが大きい。

日本人には馴染みが無く広告も大して打っていない無名の中国アニメが、口コミで広まって、3カ月を超えるロングラン上映と、5億円を超える興行収入を叩き出している時点で大変なことではあるのだが、地上波での放映は確実ではない。

そしてこれは本当に目を背けたい現実なのだが、まだ日本での円盤化が決定していないのである。(追記:満を辞して2021年4月20日、日本での円盤化が決定しました!!!!!おめでとう!!!!!!そしてありがとう!!!!!)中国の映画作品は、本国でもあまり円盤化することがないらしい。なのでぜひ、地上波でいいや、レンタルでいいやではなくて、今劇場で見て欲しい。実際劇場で見るのが一番良いことに間違いはないのだから。

円盤化してくれないと私が困るという打算も込みで、もう1度言う。全人類よ、羅小黒戦記を見てくれ(そして興行収入に貢献してくれ)

そしてANIPLEX様、お願いします。私に円盤をください。初回限定版、通常盤、特装版の3種類出してください。漏れなく買います。足向けて寝ません。一生。(追記:ANIPLEX様ありがとうございます!!!!!コアなろしゃおたくを唸らせる特装版の完璧な収録内容にそれはもう脱帽してしまい4枚予約しました!!!!!あと6枚欲しい!!!!!)

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そして私は現在、今までの私の人生の中で一番真面目に語学学習に取り組んでいる。年が明けてからは1日も欠かさず、日々仕事をしながら中国語の文法や単語を頭に叩き込んでいるのである。

隣の国とは言え、海外経験ゼロの私からしたら遠い国だった中国が、今ではとても近くに感じられる。

私はゆるふわ世界平和主義者なので、人種を超えて全人類が仲良くできれば良いのに、とぼんやり思っているが、そこに確固たる信念やそれに伴う行動がある訳ではなく、自分の心の深い部分に確かに息づいている偏見に気付く事はなかった。これまで私が持っていた中国へのプラスなイメージと言えば、中華料理美味しいよね、チャイナ服かわいいよね、くらいのもので、中国という国そのものに対して抱くマイナスなイメージの方が枚挙できたくらいかもしれない。

私が中国と聞いて思い浮かべるのは、なんとなくグロテスクさを感じる日本やディズニーのキャラクターのコピー品。子供の頃にニュースを騒がせた毒入り冷凍餃子。北京オリンピックの口パク事件。天安門事件という歴史的大事件を、当事者たる多くの中国国民が知らないという、中国共産党による厳しい情報統制がなされた社会。中国に対してマイナスなイメージを持ってしまうような情報にしか、目を向けてこなかったのである。

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私は己の無知と差別意識を恥じた。羅小黒戦記という作品では、様々なシーンで日本アニメ作品へのリスペクトや、現代中国の美しい風景、『子供は社会全体で育むもの』という、中国人が共通して持っている意識による人間同士の強いつながりや、心の温かさを垣間見ることができる。

そして今では、中国語とアニメーション技術を猛勉強して近い将来中国へ渡り、北京寒木春花動画技術有限会社という羅小黒戦記の制作会社に就職したいとすら考えている。

私という一人の人間の人生をここまで狂わせた羅小黒戦記という作品に、絶大なる賛辞と言葉にならないほどの感謝、溢れんばかりの愛を叫びたい。否、叫ぼう。

全人類よ、羅小黒戦記を見てくれ。

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