後藤護

暗黒綺想家。blueprintより新刊『悪魔のいる漫画史』が刊行(表紙画:丸尾末広)。…

後藤護

暗黒綺想家。blueprintより新刊『悪魔のいる漫画史』が刊行(表紙画:丸尾末広)。『黒人音楽史 奇想の宇宙』(中央公論新社、2022年)で第一回音楽本大賞「個人賞」を受賞。その他の著書に『ゴシック・カルチャー入門』(Pヴァイン、2019年)。

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暗黒綺想家の軌跡(GOTH-Oの仕事一覧)

プロフィール暗黒綺想家。1988年山形県生れ。『黒人音楽史 奇想の宇宙』(中央公論新社、2022年)で音楽本大賞2023年「個人賞」を受賞(渡邊未帆選)。その他の著書に『悪魔のいる漫画史』(blueprint、2023年)、『ゴシック・カルチャー入門』(P-VINE、2019年)。魔誌『機関精神史』編集主幹。2023年6月より出版人・広告人にて「博覧狂気の怪物誌」連載中(晶文社より書籍化予定)。2024年4月よりNeWORLDで「綺想とエロスの漫画史」連載中(ケンエレブック

    • 美少女アニメキャラTシャツ着用によるオタクカルチャー搾取のための試論

      自分の好きなバンドTシャツをこれ見よがしに着る人間は「昭和」である、何なら「Tハラ(バンドT・ハラスメント)」であるということを我々はアイアンメイデンを知らずにアイアンメイデンTシャツを着る令和の若者の出現で感じつつある。その辺のおばあちゃんが訳も分からずにラディカルなハードコアパンク系Tシャツを着ていたという報告例もあり、その是非をめぐって議論は喧々諤々の様相を呈している。 しかし、好きなバンドへの思い入れをTシャツで自己顕示する精神は昭和(良くて平成)の遺物なのである。

      • 『黒人音楽史 奇想の宇宙』(中央公論新社) に學魔・高山宏大人よりコメント届く!!!!!

        2022年10月19日発売の第二著作『黒人音楽史 奇想の宇宙』(中央公論新社) に、學魔・高山宏先生から最速コメント届きました。以下手紙の一部を掲載します。 「ゴチャゴチャギラギラ本」という最大級の賛辞(⁉︎)をたまわった他、第二章「鳥獣戯画ブルース」に目を付けてくれた恩師はやはり慧眼でした。アフロフューチャリズムとは詰まるところBLM以降、「ポストソウル」の思想であり、ピッカピカに輝く「意識の高い」SFガジェット世界に土臭いブルースマンたちの居場所はありません。しかし「ア

        • 〈クリスタル・ミュージック〉試論——音楽の結晶的/鉱物的想像力を考えるためのディスクガイド

          「何にしても人間よりは樹木の方が偉い。樹木よりも鉱物、それも水晶のようなものがいっそう偉いのだ。人間も早く鉱物のようになってしまったらよかろう。」  稲垣足穂「水晶物語」より 序 水晶の目覚め批評集『進撃の巨人という神話』(Blueprint、2022年)への寄稿依頼があったので、この国民的人気マンガをちょっと斜交いに「結晶・鉱物的想像力」という視点で論じようと思い立ち、「水晶の官能、貝殻の記憶」と題した10000字の論攷を寄せた。このテクストを書きあげるなかで、バシュラー

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          髙山宏暗黑美学大师の怪物的書庫で狩猟した36冊🐅新人文学三十六計のために

          2021年9月7日(火)に高山宏先生の書庫を訪問した一大イヴェントについて、機関精神史ホームページに「學魔書庫訪問記——本棚天界篇➊」としてまとめましたが、ここでは番外編的に僕個人で選んだ36冊を公開してみようかと思います。(『兵法三十六計』にハマってるのでこの「36」の偶然は嬉しい。ウータンクランのRZAなど音楽ビジネスの世界に愛読者多数) まずはでーんと、ブックタワーを屹立させてみました。 「洋書中心」と聞いていたけど、行ってみると日本語のレア本がいっぱいあって、結果

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          【WEB補習】「ゴシック表象文化論——After Bauhaus」講義ノオト

          本業ロックンローラー、副業ジャン=リュック・ナンシー研究者(※逆という説もある)柿並良佑先生の招聘により、わが母校・山形大学(中退ですが♨)で特別講義「ゴシック表象文化論」(2020年12月3日)を開催しました。東京から遠いというのもあって「行けなかった悔しい」という声多数だった(と勝手に思う)ゆえ、実際に授業で使用したスライドをお見せしながらいっちょ「WEB補習」をやろうかと思い立ちました。時間不足で扱いきれないスライドも多かったので、当日受講した学生諸君にも新しい発見が沢

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          シャナイア・トゥエインのMVから考える「印象批評」

          Shania Twain - That don't Impress me Much  カントリー娘がLAヘアメタル系のチャラ男と付き合って触発されてしまったようなカントリーメタルな楽曲(?)で、ミュージック・ヴィデオではそれを反映するように全身ヒョウ柄のシャナイア・トウェインがクールできまってる。砂漠でヒッチハイクする映像の崇高さと俗悪さの妙な混交ぶり、そしてリリックに出てくる「ブラッド・ピット」の名前もあってシャナイア、きっと『テルマ&ルイーズ』【下図】意識してるでしょ

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          検察庁法改正案と「ノンセンスの領域」

          安倍晋三が辞任とのことで、いまさら蒸し返すのもなんだが検察庁法改正案をめぐるツイッターでのハッシュタグ・カーニヴァル(?)の盛り上がりと個人的に感じたモヤモヤについて思い出した。集団陶酔も収まったこのタイミングで言うべき内容だろう。 安倍・黒川の政治的ノンセンスに反対するのは道理というかセンスであろうが、それは当然ながら「強制」されるべきものではない。ある時点から「ひとまず理由はいいから兎角ハッシュタグつけて反対して」と言わんばかりの(実際言ってるのもいた)TLの趨勢に後押

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          「切株映画」の詩学――四肢切断はメッセージ

           「切株映画」のファンとして、原因と結果のみを示す四肢切断シーンに不満を感じる。いわば「チェーンソーを振り下ろす」(原因)→「手足がぶった切られる」(結果)という二つの〈カット〉を繋ぐというもので、肝心のシーンが省略されているケース。チェーンソーが手足を切断する瞬間の――いわば切株が〈生成〉する過程の――映像の「テクスチャー」を味わいたい身としては、これは悲しい。  切株が生成する「プロセス」こそ眺めたいのだ。いわば四肢切断(mutilation)の変容(mutation)

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          黒人女性による「アフロゴス」試論――Leila Taylor『Darkly』と「黒の衝撃」

          ゴスはメインストリームへの反抗、はぐれ者との自己同一化、盲目的な楽観主義への懐疑を、メメント・モリ的手法で表象する。それは前向きで退屈な覇権的文化にとってはメロドラマ的生命(エラン)となる。ゴスは単なるファッションではなく、それは感受性であり、いわばゴシック・パースペクティヴなのである。……では〈アフロゴス〉のようなものはあるだろうか? リーラ・テイラー『ダークリー』(20ページ) ぼくが2019年末に『ゴシック・カルチャー入門』(Pヴァイン)を出したのとほぼ同タイミングで

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          〈綺想異風派〉――80年代/90年代の音楽批評を分かつもの

          ようするに〈マニエリスム〉のあるやなしや、である。 以下の引用が80年代地下音楽宣言の精華といっていい。 阿木譲「雑種と綺想異風派音楽」  境界領域が曖昧な80年代音楽は、歪曲的、超現実的、抽象的で、霊感と感情だけをたよりにマニエリスム世界を表現する。それらの誰とも、どっちともつかぬハイブリッドな《歪曲された遠近法》の中の迷宮世界は、拡大された微粒子間の隙間(空白)のように、ただ無感覚なものだ。 死という鏡と隣り合わせにあるヨーロッパは、再びゴチック・ロマンスやニュー・ロ

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          『プリーズ・キル・ミー』(P-VINE)の〈ナラティヴ・オーラル・ヒストリー〉

          レッグス・マクニール+ジリアン・マッケイ著、島田陽子訳『プリーズ・キル・ミー アメリカン・パンク・ヒストリー無修正証言集』(Pヴァイン)が届いた。拙著『ゴシック・カルチャー入門』の担当編集者・大久保潤さんのニュープロダクト(というか復刊企画)である。 帯文の「ヴェルヴェット・アンダーグラウンドからセックス・ピストルズまで」とか「当事者たちの赤裸々すぎる証言」などからも、本書がアメリカン・パンクの地下水脈を関係者のコメントだけで構成しようとする試みだと分かる。これが届いたとき

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          佐野亨編『映画の巨人たち スタンリー・キューブリック』(辰巳出版)の読みどころ

          2020年5月28日に発売されたこのキューブリック論考集に「道化・音楽・諷刺――『時計じかけのオレンジ』のキメラ的世界」と題した文章をぼくも書いてるのですが、さっそく読み終わったので寄稿者というより一読者として、感想(場合によっては補足)をまとめてみます。以下ページ順。 さっそく感想をいただきました! (というわけで拙論の解説はこれに代えさせていただきます) 吉田広明「スタンリーは初めからキューブリックだった」煽情的なフォトジャーナリストのウィージー(Weegee)とキュ

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          メイキング・オブ・『ゴシック・カルチャー入門』①――配管工としての文学者

          発売して半年以上経ったし、拙著について自己切開(アナトミー)したくなった。自分でいうのもなんだが伝説のデビュー作だと思っている。というのも開始一行目に誤植があり、あとがきで実の母の名前を間違えている本など前代未聞であるからだ。 そうしたボケや校正へのあてこすりはさておき、この本に寄せられた感想に多かったのが「文体がヤバい」とか「文章のドライヴ感」とかそういうもの。さぞや「エクリチュール」なのでしょうねとお思いかもしれないが、全然そんなことはないのでサンプルとして第一章がどの

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          本の情夫(ヒモ)になる――ボルヘス主義者・高山宏から照射される平岡正明の逆説

          「蔵書を六畳一間に敷き詰めて高さが5cmを越えたものは革命家の資格がない」 と平岡正明が言った言葉の含蓄は深い。裏を返せば、その人の「コア」となる書物の上限が概ねその程度ということで、それ以外はテクストの味付け程度にすぎない。万巻の書を繙いた(ということになっている)ボルヘス主義者・高山宏は、むかし僕に意外な言葉を漏らした――「本棚の写真を見せることの悪趣味」。 たしかにツイッターをのぞけば本の「容姿」および「組み合わせ」ばかりを気にするブックポルノ画像が氾濫している(秋

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