「オープンレター 女性差別的な文化を脱するために」の問題点

オープンレターそのものの問題点

オープンレター 女性差別的な文化を脱するために」が公開されているが、これは問題のある文書である。理由は次の通り。
広く女性差別的な文化をなくしていこうという運動のための文書なのに、なぜか呉座氏という特定の個人の言動を非難する内容が最初に書かれている。

  • きっかけが呉座氏であったとしても、一般性のある文書に特定の個人の情報を載せる意味はない。この文書は、呉座氏にことさら悪い印象を与える内容になっており、社会運動のために広く用いるには不適切である。これで署名者の数を頼んで何かをしようというのなら、魔女狩りか陶片追放もどきのシロモノにしかならない。

  • そもそも賛同した覚えのない人の名前が賛同者リストに出ていることがわかってきた。署名を集める時のチェックがザルで、なりすましのイタズラが混じった可能性もある。あるいは、発起人が勝手に名前を入れた可能性も否定はできない。

  • 賛同した覚えがない人が混じっていることが分かった後も、発起人の側に、きちんとチェックし直そうという姿勢が全くない。悪いのはなりすましをやった誰かだと非難し、身に覚えがないのに名前が載っている人は連絡するように呼びかけた。しかし、オープンレターの存在を知らなければ、そもそも自分の名前が入っていることを知りようがなく、連絡のしようもない。こういう場合にオプトアウトで対応するというのはあり得ないだろう。

  • 発起人のうち誰が代表として責任を負うのかをわざとに曖昧にし、五十音順で記載している。問題があっても誰が窓口なのかわからなくなっている。

  • 北村氏に至っては、内容証明でオープンレターへの言及をしないように圧力をかけるのを常套手段にしている様子である。挙げ句に弁護士の高橋先生を踏んでしまい晒し挙げられた(追記:高橋先生のところに届いたのは内容証明であるという話はなく,書面であった)。

 女性に対する差別的な文化をなくしていこうという趣旨には賛同できても、呉座氏への非難が抱き合わせ販売されている上、運営がグダグダなのでとても賛同できるシロモノではない。オープンレターの発起人と署名した人達は、呉座氏が解雇されてもなお非難を続けることを是とする人物だと見做すしかない。そうすることが女性に対する差別的な文化を無くすのに一体どう役立つのかさっぱりわからない。
 ツイッターの方では、オープンレターは呉座氏の解雇を目的としていない、と擁護する人が出て来た。これは、何の弁解にも弁護にもならない。なぜなら、この場合、解雇させてやろうという故意なり悪意なりがあった方が、状況をコントロールできた可能性が高い分だけまだマシだからだ。悪意がなくて結果がこれだということは、周囲の状況もその先どうなるかも何一つ想像せず、成り行き任せで騒ぐだけ騒いだということを意味する。自分達が始めた社会運動だかアジテーションだかが制御不能になっていたということだ。このレターの発起人達は、声を上げた後の状況をコントロールする能力が皆無で、こういった運動を行う適性を欠いていると判断せざるを得ない。そんな人達が、他人や組織を巻き込む形で社会運動をするのは、発生する弊害の方が大きい。
 一般論だが、悪意や営利目的は行動の予測がつきやすい。悪意であっても一定の意志と戦略目標があるなら、行為する側が状況をコントロールすることもそれなりに可能だ。しかし、天然と善意は当人たちに歯止めがない分どうにもならない。
 もし、本当に、オープンレターが呉座氏の解雇を目的としていなかったのなら、解雇されそうになった時点で、意図もしておらず望んでもいないことが起きようとしていたわけだから、発起人達は「日文研は行きすぎた処分をするな」という新たなオープンレターを即座に出すべきだった。しかし今に至るまでこの内容のオープンレターは出されておらず、その一方で、元のオープンレターで呉座氏への非難がずっと継続している。こういう行動を積み重ねておいて、解雇になったのは日文研のせいだ、と言われても、口先だけの無責任さが際立つばかりである。この意味でも、この発起人達には今後こういった運動に関わってもらっては困る。適性も能力も全く欠いていることが今回の展開ではっきりしたからである。
 仮に、呉座氏の解雇と社会的抹殺が目標でした、というのであった場合は、解雇が目的ではなかったという主張は真っ赤な嘘ということになるし、本来の目標を表に出すだけの腹も括れていないのに他人の職は奪ったということになる。この場合は、適性と能力が無いのに加えて「卑怯」「私的制裁を好む人々」という属性が追加されることになる。

北村氏 vs. 雁琳氏 @ 甲南大学

双方の主張

雁琳氏が北村氏を誹謗中傷したところ、北村氏がそれをやめるように求め、弁護士に依頼して紛争準備中らしい(2022/01/23現在)。さっさと提訴すればいいものを、北村氏は雁琳氏の非常勤先の甲南大学に、クレーム文書を送りつけた。さすが、弁護士に向かってオープンレターに言及するなと内容証明通知を送る人物だけのことはある。その結果、甲南大学が対応しようとしたのだが、北村氏のトンチキな要望の出し方と、巻き込まれた甲南大学のボケた対応のせいで、妙なことになっているように見える。
 まず、北村氏が、この要望について代理人からもらった連絡を抜粋して公開していたものによると、

  1. 北村氏は代理人を通して、甲南大学を連絡先として雁琳氏に内容証明を送った(11月10日に配達、葉書が証拠として返送された)。

  2. 甲南大学のアカデミックハラスメントの相談窓口に相談したところ、積極的に対応したいという話だった。

  3. 11月22日付けで、ツイートについて対応してほしいという書面を甲南大学に送った。このとき、処分は望まない旨書面に書いた。

一方、雁琳氏からこれがどう見えていたかは、ご本人のツイートより(https://togetter.com/li/1833906

  1. 内容証明郵便(?)を大学宛に送られた。内容はアカウントの本人確認と批判と止めるようにというお願いだった。

  2. 書面は大学宛てだった。(気付と書いてあったような気もするが記憶が曖昧になっている)

  3. 勤務先トップと幹部(人文学部長?)から呼び出された。呼び出された時の録音データがある。

  4. 11月10日頃にこの件で何も連絡がなかった。大学からクレーム文書を渡されることもなかった。

 処分を望まない旨わざわざ書いたということは、処分もあり得ることを北村氏が書面を送る段階で予見していたことを意味する。大学を巻き込まずに雁琳氏を提訴して直接責任を問えば済む話なのに、わざわざ大学を巻き込もうとするのは、北村氏の悪意を感じる。それはさておき、本筋の北村vs雁琳とは全く別の問題が発生していることに気づいたので、そのことについてまとめておく。

キャンパスハラスメントの対応手続きの問題

 どこの大学でも、キャンパスハラスメント・アカデミックハラスメントに対処するための仕組みも規則も持っている。が、ハラスメントとして大学が対応できるのはトラブルの関係者が全て自組織内の人間である場合に限られる(直前まで学生や教職員だった人が、卒業・退職後に申し出たものを扱う場合はある)。学内の教員・学生間や、教員間、教員・職員間で起きたことは、ハラスメント対応手続きを適用できる。が、一方の当事者が学外の人である場合は、ハラスメント対応の規則を適用して大学が解決に手出しをすることはない。大学の規則は学外にまで適用できないからである。
 ところが、北村氏は故意でか過失でか、アカデミックハラスメントの相談窓口に、雁琳氏とのトラブルについてハラスメントとして話を持っていった。しかも代理人がやっている。つまり北村氏は、大学に対して、最初から、学内規則が効力を持つ範囲を逸脱した対応を求めようとしたことになる。
 甲南大学は甲南大学で、学内問題にはおさまらないので学内のハラスメント対応手続が使えないからハラスメントとして扱えない、と言うべきところ、積極的に対応したい、と回答してしまっている。これは明らかに窓口のミスだろう。報告をいただければ然るべき委員会を開いて検討します、程度に留めるべきだった。

 甲南大学の、キャンパスハラスメント防止対応委員会規定は、次の通りである。

https://www.konan-u.ac.jp/sas/item/kitei/harassment_kitei.pdf

 甲南大学の場合は、調査委員会を開くルートと、予め任命されたコーディネーターが問題解決にあたるルートの2つを用意している。

 北村氏の公開した書面を普通に読めば、北村氏がトラブルを甲南大学のキャンパスハラスメント相談窓口に持っていき、甲南大学はキャンパスハラスメントとして対応を開始したのだろう、ということになる。
 さて、キャンパスハラスメントとして相談窓口に来たものは、規則に沿って対応しなければならない。事実確認の調査や、場合によっては分離や調停といった措置が伴うので、規則に従わず恣意的に行えば、たとえ善意でやったことでも新たなキャンパスハラスメントが発生することになりかねないからである。
 ところが、雁琳氏が公開した録音によると、甲南大学は、いきなり雁琳氏を呼び出して、書面が来ていることを伝えてツイッターアカウントの本人確認を始めている。実は、これは、キャンパスハラスメントに対する正式な対応としてはあり得ないのである。
 録音で発言している女性の声の主が仮にコーディネーターとして任命されていたとしても、こういう調査は正式なものではあり得ない。規則に沿わないで調査をすると新たなハラスメント発生になりかねないので、調査をする時は、学内規則の何条に基づくものだ、ということを必ず最初に相手に告げる。さらに、規則を印刷したものを、調査の相手に渡して、読んで確認できる状態で調査をするものである。ところが、録音ではそういった前置きは一切なく、いきなり本論に入っている。このことからわかるのは、録音された調査が手続きを踏んでいないものである上、コーディネーターでもない人が行っているということである。
 ところで、ハラスメントの相談窓口にはかなり強い守秘義務が課されている。相談窓口にきた相談内容は、防止対応委員会・調査委員会のメンバーと、コーディネーター以外に伝えてはいけないのである。録音された調査がコーディネーターでもない人によって手続きを踏まずに行われたとするなら、甲南大学のハラスメント相談窓口は、守秘義務を破って、関係者以外に相談内容を漏らしたことになる。これは、ハラスメント対応のしくみの信頼が完全に損なわれる事態なのだが、甲南大学はそのことを意識しているのだろうか。
 もし、最初に対応委員会を開いて調査するかどうか、誰に調査させるかといったことを審議していたら、委員の誰かが、この当事者の組み合わせでは学内規則では対応できない、と指摘したはずである。それが無かったらしいところを見ても、何の手続きも踏まずにハラスメント対応をやり始めたように見える。
 また、甲南大学の規則によると、ハラスメント対応は、相談員による聴き取りからスタートする。送られてきた書面でスタートする手続きではないのである。キャンパスハラスメントとして対応したというのなら、最初の手順で既に規則から逸脱していることになる。

郵便物の管理の問題

 北村氏(の代理人)が送った通知は2通で、1通目は住所が大学で宛名が雁琳氏(個人)の内容証明、2通目は学園宛でハラスメントとして申し出るものだった。ところが、雁琳氏は大学に呼び出された時に見せられた書面以外を知らないようである。このため、大学が雁琳氏宛の内容証明を組織として保管して渡してくれないという内容のツイートを行い、後に宛名が学園あてで内容証明ではなかったと訂正した。
 状況がこの訂正の通りなら、問題になるのは、1通目の内容証明の行方である。
 大学を送付先とする個人宛の内容証明や書留は、通常は担当の事務が押印して受け取り、記録簿にそのことを記載、宛名を書かれた人には事務が連絡してくれるので、印鑑を持って窓口に行き、記録簿に押印や署名をして郵便物を引き取る。どこの大学でもこんな感じで管理しているはずだ。押印が必要な郵便物を本人の代わりに一旦引き取る以上、この程度の管理をしておかなければ、確かに渡したという証拠が残らないからである。
 雁琳氏が内容証明を大学から一度も渡されなかったということが事実なら、それは、甲南大学の郵便物管理の失敗を意味する。一旦押印して引き取った内容証明を学内で紛失して本人に渡し損ねたということになる。担当者は始末書か処分ものだろう。過失ならそう大きな事件にはならないかもしれないが、管理方法の見直しは必要になりそうだ。
 もし、内容証明を本人に渡さず開封していた場合は、甲南大学の誰かが信書開封罪を犯したことになり、逮捕者が出ても不思議ではない。大学にとってはスキャンダルだろう。
 仮に、雁琳氏が受け取ったことを忘れているとか、故意に受け取ってないと嘘をついた場合、甲南大学の郵便物管理の信頼を損ねるか、信書開封罪が既遂だとツイッターで世間に向けて間違った告発をする結果になってしまう。甲南大学に対する名誉毀損が成立しかねない状態ではなかろうか。
 甲南大学と雁琳氏は、協力して早急に1通目の内容証明の行方を突き止めるべきである。行方が確定しない限り、甲南大学は押印が必要な郵便物を学内でまともに管理できない大学だということが広まり続ける結果になる。

 こんなわけで、敵対しているはずの北村氏と雁琳氏により、当人達が全く意図しないコラボ(?)によって、甲南大学のハラスメント対応手続きと学内郵便物の管理がグダグダだということを世間に知らしめる結果になってしまっている。
 何コマ幾らで契約している非常勤講師が学外で行った誹謗中傷発言など、そもそも甲南大学には何の監督責任もないし、責任を問いたがる物好きは北村氏ぐらいだろう。しかし、学内ハラスメントの対応手続きや郵便物の配送は大学に責任があるし、そこを失敗すると組織としての信頼も大きく損なわれることになる。甲南大学ともあろうものが、組織内部の管理がめちゃくちゃです、では困るので、早急に対応と是正をしていただきたい。
 また、内容証明の行方がはっきりして、ツイートとは異なる状況が明らかになった場合には、雁琳氏には、関連のツイートを削除することを薦める。状況が変わったことを知ったまま放置すると、甲南大学に対する名誉毀損が成立しかねないが、今この状況で甲南大学と雁琳氏が名誉毀損で争うメリットは全くないはずである。

余談:AIに読ませた方がてっとり早くね?

ELYZA DIGEST https://www.digest.elyza.ai/ という、どんな文章でもAIを使って3行に要約してくれるサービスがある。これを使って、オープンレターを要約させてみた。オープンレターのURLをテキストウィンドウに貼るだけでページごと要約してくれる。
 手っ取り早く出すためには、

https://www.digest.elyza.ai/summaries

https://www.digest.elyza.ai/summaries/2493667186159928375

を使うと良い(URLをテキストボックスに入力済み)。これがうまくいかない場合は、面倒でも、URLをコピペ入力することで、要約を出せる。
 で、要約した結果がどうなったか。

呉座勇一氏が、大河ドラマの時代考証から降板したことが報じられた。ネット上で、性差別に反対する女性の発言を戯画化して揶揄する行為。同氏は、アカデミアや言論業界、メディア業界に根強く残る男性中心主義だと筆者。

爆笑。
 文系のプロによる山ほどのオブラート()製作 vs AIによるオブラート引っぺがし、ファイッ!
 あれだけ長文の主義主張を書いておいてAIに完全スルーさせるって、もの凄い文章芸では。文系のプロの人の作文能力って一体……。
 まあとにかく、今後は、「AIに要約させたときにきれいに除去できるオブラート的長文の作文技術」や「AIの要約でスルーされない作文技術」が新たに必要となる時代がやってきたのだと実感させてもらった次第。

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