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食べチョク怒涛の5ヶ月間と、生産者さんとの約束

生産者さんから“チョク”で食材を取り寄せられるオンライン直売所「食べチョク」を運営している秋元です。


今年3月、全社員を集めてこんな話をしました。

「コロナの影響で、これから多くの生産者さんが販路を失う。“生産者ファースト”を掲げる私たちが率先して動かないといけない。人手が足りないとかスタートアップだからとかは理由にせず、やれることを全部やろう。」


そこから10名程度の社員が一丸となって走り、気付くと5ヶ月間で生産者数は750軒から2200軒に。月間流通額も35倍に急成長しました。7月末からは初のテレビCMも実施しています。

事業が成長し、先日6億円の資金調達を発表。ようやく食べチョクはスタートラインに立てました。これから、より生産者にとって使いやすいサービスを目指し、食べチョク物流構想に着手します。

高齢の生産者さんでも利用でき、地域で消費されている素晴らしい食材が全国の人に届けられる、そんな状態を作りたいと考えています。「生産者のこだわりが正当に評価される世界」に向けて本当の意味でのスタートを切ります。


食べチョクの怒涛の5ヶ月間の軌跡と、向き合い続けた「食べチョクが大切にしている価値」について書き残しておきたいなと思い、noteを書くことにしました。


食べチョク5ヶ月間の軌跡

2月末、突然複数の生産者さんから「急に販売先がなくなってしまった」と連絡がありました。新型コロナウィルスの影響によるイベントの中止、学校の休校による給食への出荷停止などが主な理由でした。

これまでも、台風などの悪天候によるSOSがくることはしばしばありましたが、全国からここまで多くのSOSが寄せられたのは初めての経験でした。

「一次産業に想像以上に大きな影響が出るかもしれない」

という危機感が一気につのり、すぐにチームで対策の検討を開始。3月2日より「コロナでお困りの生産者さん」の特集をオープンし、全商品の送料500円分を食べチョクが負担する支援プログラムを開始しました。

全商品を対象にしたのは、影響が出てしまっている全員がSOS連絡をしてくるとは限らないと考えたため。全国的に大きな影響が出ると予想されたので、声をあげない生産者にも貢献できる仕組みを検討した結果でした。

支援プログラムがどの程度影響したかは分かりませんが、販路を失ってしまった食材が完売する事例がどんどん出てきました。イベント中止で余っていた牡蠣が8000個売れたり、飲食店の出荷停止の影響を受けていた玉ねぎ3トンが1ヶ月で売れたり。


4月末。完売事例が出ている一方で生産者さんからのSOSも止まることがなく、生産者さんから月に数百軒の新規登録申請がくる状態になりました。もっと販売数を増やさねばと、送料負担の延長を決め、また他にもシェフのレシピ付き商品など様々な企画を実施します。

しかし送料負担は続ければ続けるほど赤字になってしまうため、延長できても5月が限界。そんな中、農水省さんが送料を代わりに負担してくれるという話をいただきました。

今は広瀬すずさんが推進役を務める「#元気いただきますプロジェクト」の初期事業者として、食べチョクの参画が決定。至急サービスの改修を行い、5月26日からは農水省さんが送料負担をしてくれる状況になりました

こちらの支援事業の開始にあたって、農水省さんの動くスピードが凄まじくて驚きました。「一刻を争う事態なのでとにかくスピードが大事」と1000億円超の予算を確保したあとは、確か1ヶ月程度で開始まで漕ぎ着けたはず。現場は相当大変だったと思いますが、心から感謝しています。もっとこういう動きを報道してくれればいいのにな。


テレビCMに向けた露出ラッシュ

緊急事態宣言が発令され、生産者さんからの問い合わせが月500軒を突破。さらにスピードを上げて販売力を強化しないといけない状況になり、4月末のタイミングでテレビCMの実施を決定しました。

施策や意思決定の裏側についてはマーケティング責任者の松浦がnoteにまとめてますので、ぜひご覧ください。

とにかくがむしゃらに走り続けたという事実はプレスリリースの本数にも現れています。プレスリリースはあくまで「施策にメディアバリューがあるときに出す」という方針なので、リリースの本数はKPIとして追っていないのですが、なんと6月は月に8件も打っていました(あとから知ってびっくりした)。社員数は1月時点で11名、7月時点で14名なので人員リソースは決して多くはないのですが、「やれること全部やる」という気合で走り抜けた結果だと思っています。

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松浦の記事にも書いていますが、テレビCMにあわせて6月〜7月のメディア露出を厚めに狙った結果、多くのメディアさんに興味を持っていただきました。

例えば6月は「がっちりマンデー!!」「ノンストップ」などテレビが13本、ラジオ5本、新聞3本に掲載。Googleトレンドで4位を獲得しました。​

5〜7月の3ヶ月間で合計露出数は1000掲載以上となり、結果的に多くの方に食べチョクを知っていただくことができました。(広報担当は1人、かつ採用業務も兼務しているので、とんでもないタスク量だったはず…)

▼プレスリリース一覧


そして迎えた7月18日。食べチョクとして初のテレビCMがスタート。

テレビCMは15秒ととにかく尺が短いため、私たちが大切にしている価値観や思いは伝え切れません。そこで別で生産者さんへのインタビュー動画を撮影し、同時に公開することにしました。インタビュー動画を「初めての方へ」のページに掲載することで、CMで食べチョクを知っていただいた方に食べチョクの世界観を正しく理解いただこうとしています。

テレビCMの反響は大きく、食べチョクの認知拡大に大きく貢献しました。


6億円の資金調達を実施

先日6億円の資金調達が完了しました。新規株主としてジャフコさんに参加いただき、既存株主のマネックスベンチャーズさん、VOYAGE VENTURESさん、デライト・ベンチャーズさん、NOWさんもフォローしてくださいました。

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私たちビビッドガーデンは「生産者の抱える課題を解決する」というビジョンを掲げています。資本主義社会のなかでこのビジョンを貫き続けるためには、私が経営権をしっかり握り、これでもかというくらい「生産者ファースト」を掲げ続ける必要があると考えています。

それでもあえて株式での資金調達をしているのは、経営の方向性をブラさないことと同じくらい「スピード」が大切だと痛感しているからです。

食べチョクを開始して間も無く3年が経ちますが、私が知る限り10軒ほどの生産者さんが「廃業」を理由に食べチョクを退会しました。連絡が来ていない方もいるはずなので、数十軒はいらっしゃるかもしれません。

生産者の数が減っていることは統計グラフでよく見ますが、「全体で◎◎万人減っている」という事実よりも「目の前の1人が廃業してしまう」ことの方が圧倒的にショックでした。

ゆっくりやっていては、本当は貢献できたはずの人がやめていってしまう。

一刻も早く、前例のないスピードで事業を大きくする必要があると強く感じるようになり、株式での資金調達を決めました。

株主の皆さんはもちろん事業性を評価しているから投資いただいているわけですが、同じくらい食べチョクのビジョンに共感してくれています。株主さんからのコメントもぜひ生産者さんに読んでもらいたいです。


ようやくスタートラインに立てた

食べチョクのようなスタートアップでは人もお金もリソースが限られています。やりたいことはたくさんあっても、全部やっているとスピードが落ちて資金が尽きてしまう。多くのことを我慢しながら進んできました。

直近だとiOSアプリをリリースしましたが、これも立ち上げ時から我慢し続けてきたことの一つです。まずはWEBだけで細かくABテストを繰り返し、成功モデルを確立してからアプリのリリースをすると決めていました。

肉や魚、花への展開もそうです。まず野菜が売れる場所を作ることができれば他の商品も紐付いて売ることができると考え、とにかく狂ったように野菜ばかり売っていました(私の実家が野菜農家だったことも実はちょっと影響していたりするかも…)。

少しずつ認知が広がり、今ようやくスタートラインに立てた感覚でいます。

これからは「生産者さんにとって圧倒的に使いやすいサービスにする」ことに注力します。生産者さん用ページの利便性向上、また物流の効率化による送料やオペレーションコストの削減です。

まずは食べチョク物流構想の第一弾として、ヤマト運輸さんとの連携を発表しました。注文が入るとヤマトさんが印字済みの伝票を持ってきてくれる or プリンターがある方は食べチョク管理画面から直でヤマトさんの伝票をプリント出力できるようになります。また、食べチョク特別送料を設定。通常配送料金から最大47%OFFの送料で配送することができます。

ヤマト運輸さんとの連携を皮切りに、今後より使いやすい物流システムを提供していきます。


98歳のおじいちゃんでも参加でき、かつ高値で売れる場所にする

「ネットで販売しよう!」と思ったら、すでにメルカリやBASE、STORESなどのECプラットフォームはすでに存在している中で、あえて食べチョクが存在する意義ってなんでしょうか?

圧倒的に集客できること、生鮮食品の販売に特化していて出品者が使いやすいこと、などいくつかあると思いますが、私は特に以下2つが重要な存在意義になると考えています。

【1】そのままだと地方だけで消費されていた食材を掘り起こすこと

例えば隣のおじいちゃんが作っているみかん。とにかく美味しくて地元で評判ですが、ネット販売ができず地元でしか出回っていません。こういった「とにかく品質が高い」けれども、ネットが苦手という理由で「全国に出回っていない」というものは実はたくさんあるのではないかと思っています。

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そんな地方に溢れる生産者さんの力作を全国に届けるための施策も、これからどんどん打ち出していく予定です。

先日「ご近所出品」の機能をスタートしました。わかりやすく例を挙げると、隣のおじいちゃんのみかんを、若手農家さんが束ねて一緒に売れる、という機能です。

おじいちゃんの食べチョクアカウントを若手の方が代理発行し、生産者ページを作成。「生産者と繋がれる」という体験はそのまま残し、生産者さん側の利便性を向上しました。

この「ご近所出品」により、すでに90歳の生産者さんも登録。間も無く98歳の生産者さんも食べチョクに登場します。

▼ほいち農園さんと一緒にご近所出品している前田さん

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【2】安売り合戦を許さず、「正当な価格で売買できる」こと

地方の直売所では熾烈な価格競争が起きています。リアルの直売所も食べチョク同様に「生産者が値段を決められる」売り場ですが、安い値段でないと売れづらいので結果として高値で販売することができません。

わかりやすく例を挙げます。利益を上げる目的で農業をやっていない生産者さんが直売所に利益度外視の激安野菜を出品したとします。購入者はその激安野菜に集まってしまい、結果としてビジネスとして農業をやっている生産者さんが売れなくなってしまいます。さらに購入者はどんどん安いものを求めるようになり、安いものを求める購入者に選んでもらうためにどんどん値下げ合戦が起こるという悪循環に陥ります。

私は地方でこの課題を聞き衝撃を受けました。食べチョクは絶対に不当な価格競争を許しません。コンセプトを正しく発信して理解あるお客さんを集め、真面目に取り組んでいるプロの生産者が正当な利益を得られる場を提供し続けます

食べチョクは以下の内容を生産者さん、購入者さんへ向けて約束しています。

【食べチョク 3つの約束】
1. 生産者へ正当な利益を還元します
一次生産者に正当な利益が還元される状態を担保します。中間業者による不当な搾取、不当な圧力は許容しません。

2. こだわりを持った生産者が評価される場所にします
掲載基準やルールを設けることでこだわりがある商品のみを集め、不当な安売りや値引き合戦が起きない状態を保ちます。

3. 生産者が責任を持って販売をします
生産者自身が販売者としての責任をもち、お客様からの声を真摯に受け止めます。生産者と消費者が信頼関係を築いていける場所にします。


経営者として、生産者さんへの約束

「生産者のこだわりが正当に評価される世界」を実現することが、私たちが存在する唯一の目的であり、唯一の価値です。

テレビCMをスタートしたり、資金調達を行ったり、事業を取り巻く状況は大きく変化していますが、創業時から目指す世界は1mmも変わっていません。

そして食べチョクこれからどんなに大きくなっても、「生産者のこだわりが正当に評価される世界」の実現に向け、生産者ファーストで走り続けることをここにお約束します

私たち運営は、生産者さんからの応援が何より励みになります。皆さんにはどうか変わらず食べチョクを信じて応援していただけたら嬉しいです。

改めてこれからもよろしくお願いいたします。


各種リンク

▼農水省の「#元気いただきますプロジェクト」に参加中。コロナ影響のある対象品目が送料無料です。

▼7月の豪雨で被災された生産者さんの支援にも力を入れてます。良ければぜひのぞいてみてください。

▼夏の福袋、期間限定で販売中です。

▼出品希望の生産者さんはこちらから。

▼食べチョクを一緒に作り上げる仲間も絶賛募集中です。

▼事業開始の背景はこちらの記事がわかりやすいです。

▼直近の動きについてはこちら。


いただいたサポートは、サービスを支えてくれているメンバーに野菜やお酒にして還元します。(*^-^)ノ■☆■ヾ(^-^*)